第58話 謎の男、敵でも味方でもなく変態なのか?
四日目の昼、昼食休憩のため下車した俺は草むらに駆け込む。
膀胱が爆発寸前だったのだ。
俺が決壊寸前のダムから放水していると、横に誰かが並ぶ気配がした。
「あ、あのさ。き、君はあの子の彼氏なの?」
グレイトタートル族から声をかけられた。
亀さんだけあって少し生臭いが、それはこの人が不潔だからではない種族の特性なのだ。
そこは言わない約束だろう。
しかし、この人がスレンダーキャット族かナガミミ兎族ならば、好意を寄せているのがノディールなのかロジーナなのか想像出来るのだが。
「えっと、あの子とは?」
「あの……プリティな尻尾を持つナガミミ兎族のロジーナちゃんだよ!」
プリティな尻尾?
ロジーナの尻尾を意識してみたことなんて無いな。
今度見てみるか。
「友達以上、彼氏未満、妹ニアリーイコールってとこかな」
「つまり……彼氏ではないということだね」
「まぁ、そうだけど。ちょっかい出されても困る」
仮にこの男を”亀X”と呼ぶことにする。
男の本名など興味もない。
さて、この亀Xがグイグイと俺のパーティー、つまりロジーナに声をかけまくると、当然ロジーナの機嫌は悪くなる。
そして、怒りの矛先は止めなかった俺に向かう。
ついでにロジーナも俺の情けなさに憤りを感じるはず。
いやいや待て、俺の戦闘力がナッシングって知っているはずだ。
怒られるのはおかしい。
ダムの貯水位も安定したし、これ以上亀Xと関わるのもごめんだと、俺は馬車に戻ることにした。
何気に亀Xの下の亀が視界に入った。
妄想して巨大化した……人族のソレとは異なる形状に旋律を覚えつつも、そーっとその場を離れた。
「ケージ、遅いにゃ。早くご飯食べたいにゃ」
律儀に待ってくれていたノディールの頭を撫でる。
「にゃ!? は、恥ずかしいから……人前では止めるにゃ」
うん?
後でこっそりとやれという意味なのか?
何故かロジーナも目を瞑って頭を差し出してきた。
全くと思いながらもロジーナの頭を撫でる。
するとシーリスくんまでも……。
「はいはい。ノリが良いね」と、シーリスくんの頭も撫でた。
四人でワイワイと昼食を食べていると、亀Xが「探しましたよ」と俺とロジーナの間に入ってきた。
ロジーナは無言で亀Xの襟を掴むと引き倒した。
「邪魔、というか誰?」
「うひょーーっ!! 憧れのナガミミ兎族のロジーナちゃんに触られた!! 話しかけられた!!」
うわっ……。
こいつ、狂ってやがる……。
しかし、その行動力はすげーな。
亀Xが立ち上がる。
するとシーリスくんも抜剣して、剣先を亀Xに向ける。
「正直、大失態です。敵意がなかったからケージさんとロジーナさんの間に入るまで気付きませんでした。しかし、今後はそうはいきません。ボクはケージさんたちの護衛ですから」
「そりゃそうさ。ロジーナちゃんへの愛は本物だからね」
「拒否、消えて」
「あぁーーーん!! 拒絶されるのも刺激的です!!」
ノディールがロジーナを背後に隠す。
ナイス判断だ!
ついでに俺も隠れる。
「ノディールさん、これは護衛のボクの仕事ですから」




