第54話 街の平和は俺のアソコの上に
寒いっすね。半袖短パンだと辛い。辛いけど、今日は暑くなるらしし、洗濯物を増やしたくないから我慢だ。一人暮らしを始める前は、PCのすぐ隣に灯油ストーブがあったのだ。懐かしいぜ。
「はぁ? 『エリス・サザーランド奪還手配書』って何でしょうか?」
ご主人様から渡された新たなる手配書に、ノディールもロジーナも首を傾げる。
「例の幽霊屋敷の事件、現在は正式に『ボレオ聖戦』と呼ばれているのよ。
その事件が原因で、『エリス・サザーランド誘拐手配書』は白紙に戻ったのだけれど、別の街の盗賊パーティーが勝手に計画を実行してしまったの。
そこで冒険者ギルドに依頼が舞い込んで来たのだけれど、今の冒険者ギルドは信頼が地の底まで失墜していて、冒険者たちが依頼をボイコットしている状況なのよ」
全12パーティ58名、それも下は6歳から上は16歳までが死亡した大事件なのだ。
ボイコットしている冒険者の中には自分の子供や姉弟もいたのだろう。
その怒りの矛先は、冒険者ギルドに向ってしまうのは仕方がない。
そもそも冒険者ギルドにも事前調査を怠ったという落ち度があるのだから。
またボイコットにより新規の依頼も既存の案件も全てストップしているのだが、依頼を遂行して欲しいと願う一般市民からの強い渇望に答えられず、街の内外でもトラブルが続出しているらしい。
「このまま大混乱が続けば、ボレオの治安も悪化して……最悪、国から騎士団が投入され厳戒態勢の元、魔女狩りみたいな悲劇が生まれてしまうわ」
そこにエリス・サザーランド誘拐事件が発生した。
お貴族様が要請を出す寸前に、たまたま冒険者ギルドが知り盗賊ギルドに仲介できたのだ。
国から騎士団が投入されるよりはマシらしい。
「盗賊には盗賊ですと、強くアピールしたのよ」
「はぁ、でも何で俺達なんですか?」
「それは……対象の盗賊団がレッドスコルピオンなのよ。当初予定していた盗賊団の50倍の規模でね。ボレオの盗賊団レベルじゃ潜入も戦いも……まったく敵わないのよ。でもレッドスコルピオンの頭は……女性でね。性技に関してはSSS級のケージに白羽の矢が立ったのよ」
「えっと……拒否権は?」
「あるけど。実質拒否すると、冒険者ギルド、商業ギルド、盗賊ギルド、サザーランド家、その他いろいろから酷い仕打ちを受けて、ボレオで生活できなくなるわね」
「はぁ……。で、そのレッドスコルピオンって何処にいるんですか?」
「バレッテェリアという大都市近郊の荒野よ。ここから馬車で二週間ってところね」
「多分、俺……たどり着く前に死ぬと思います」
「大丈夫、逃げ腰の盗賊ギルドから助っ人は出ないけど、冒険者ギルドからソロの中級冒険者シーリスくんが、バレッテェリアまで護衛するから!!」
「あの……これって、盗賊ギルドの依頼なんですよね? ポイント付きますか?」
「勿論よ!!」
黙って聞いていたノディールがソファーから勢い良く立ち上がった。
「待つにゃ!! 私達も行かないと、ポイント稼げないにゃ?」
「確かに……『エリス・サザーランド誘拐手配書』は白紙に戻っちゃったからな。でも……ノディールか……トラブルが起こりそうな予感が……」
「にゃ!? 酷いにゃ!? 顔面殴ったのまだ根に持ってるにゃ!?」
「いや、そうじゃないけど……」
「私も行く。絶対」
「あ、あのさ……。今回も……その……女の子とイチャイチャ以上するけど、殴らないでね?」
「にゃ……。し、仕事なら……仕方ニャイ!!」
「嫌悪感、全開、でも我慢」
ノディールとロジーナはグッと拳を握り必死に耐えたいた。
「ご主人様、二人を連れて行っても?」
「そうね……。確かにポイント稼げないと不味いわね。まぁ、不死身のシーリスくんが一緒なら大丈夫じゃないかしら? 詳しい説明はバレッテェリアの盗賊ギルドで聞いてね」
出発は明後日の早朝らしい。
もう俺が行くことで話しが進んでいるみたいだ。
俺の小さな肩、いや……そこそこ大きいアソコに、ボレオの未来が重くのしかかる。
ここであまり気合いを入れたりすると、勘違いしたノディールに殴られる可能性がある。
自重しておこう。
まだボレオの街の全容も把握していない俺なのに、街の外、しかも二週間にもおよぶ長旅が待っている。
大丈夫かな?




