第53話 ソフィアだって女の子だもん
屋敷に帰ると、俺を見たノディールとロジーナが幽霊を見たように怯える。
おいおい、幽霊屋敷に行った時、お前らそんなに幽霊怖がってなかっただろ?
「ただいま、ノディール、ロジーナ」
「ケ、ケージ!? 生きてたにゃ!?」
「生きてた、嬉しい」
獣人の全力タックルで内蔵が潰されそうになったが、俺はしっかりと二人を受け止めた。
二人は俺を抱きしめたまま泣きながら何かを言っていたが、聞き取れないので放置する。
やがて落ち着きを取り戻したノディールが、「ケージ、女の臭がするにゃ?」と余計なことを言い出した。
ヤバイ。
ヤバイ流れになってきたぞ?
「そ、それは……ほら。俺、誰かに守ってもらわないと……。弱いし……」
「それは理解るにゃ。でも、この匂いは……」
「他の女と性行為した?」
くそっ! ロジーナめっ!!
真実眼を使いやがったな!?
「ケージの馬鹿!! 心配していたのに、死ねにゃ!!」
ノディールの強烈な右ストレートが顔面を直撃して、俺は意識を失った。
◆
目を覚ますとご主人様であるアンナ・ハーリンが隣りにいた。
俺は裸にひん剥かれている。
あぁ……”死にそうになると子孫を残すためモード”が発動して……それでご主人様は楽しんだのか。
しかし、顔面が痛い。
あのバカ猫、力加減を知らなすぎる。
顔を手で触るとパンパンに腫れていた。
「俺、よく死ななかったな……」
ご主人様をアヒアヒィヒィ言わせてやろうかと思ったが、顔の痛みを我慢しながら……興奮など出来なかった。
◆
翌朝、俺が目覚めるとご主人様の姿は無かった。
あの幽霊屋敷の一件はまだまだというか全く着地点すら見えず、国やギルドに宗教団体を巻き込む大事に発展しそうだとご主人様は言っていた。
ソフィアさんに膝枕をされながら、水魔法でパンパンに腫れた顔を治療してもらっている。
少し太ももに頬を強く押しつけたり、顔を掻くふりをして触っても、ソフィアさんは天女のように微笑んでいた。
ちなみに、ここは俺の部屋で、ドアには”バカ猫面会謝絶”という札をぶら下げておいた。
「でも、ノディールちゃんは、本当に心配していたの。わかってあげてね」
何度も言うが、ナデアとの出来事は自分の命を守るためで……まぁ、最後は……脱出できたことに感極まって……なのだが。
しかし! しかしである。
俺がいつ何処で誰とエッチな事をしようとも殴られる筋合いは……無いとは……言いたくないな。
うん、ちゃんと謝ろう。
「うん。ノディールに謝ってくる」
まだ少し腫れた顔をケージがさすりながら出ていく後ろ姿を淋しげにソフィアは見つめていた。
今は、アンナ・ハーリンの元に集まっている女の子たちだが、これから先はどうなるかわからない。
そのとき、ケージは一体誰を選ぶのだろうか?
「私だって、ケージくんと……」
体が魂が……運命がケージを求めている。
日々大きくなる欲望に抗い続ける事は難しいとソフィアは感じていた。




