第52話 風と共にナデアと
本日は時間があるためモウ一話いっておきます。
ケージは、青空を見上げていた。
周囲を見渡すとそこは草原。
幽霊の姿はない。
ナデアも青空を見上げていた。
そんなナデアに覆い被さるようにして、ナデアを見下ろす。
「ここは元の世界かな?」
「うん。あの向うに見える山の形からして、ここはテザール草原。ボレオの街から半日ぐらいの場所よ」
「結局、何だったんだろう」
「さぁ、わからないわ」
「うん。そうだね」
「ねぇ。エッチなことしたいんでしょ?」
「そういう言い方するって事は、ナデアも?」
「まぁ……ね。街に帰ったら、また今まで通りの関係に戻っちゃうし……」
「無事帰還できたお祝いってことで?」
「うん。これで最後だからね♥」
「あーっ、それと俺の護衛もよろしく」
「本当に手の掛かる男の子なんだから……」
◆
ケージの行方に関しては、逮捕された金色狐族のフォルセルドの自供からも、ノディール達がいた”きのこの世界”以外に転移することは無いとはっきりと言われ、冒険者ギルドとしては他に何一つ情報がないため、”死亡”と認定した。
金色狐族のフォルセルドは、そんな知らない人物のことはどうでも良かった。
それよりも九尾主義の存亡を危惧して、ノディールの聖女覚醒とロジーナの異次元を突破する能力については言及しなかった。
どうにかして九尾主義の幹部にこの事を知らせねばと思案する。
ロジーナの力の覚醒までを詳しく説明する。
神言教の信徒であるアルディアは、冒険者たちの命とマナを瘴気に変換し、次元の壁にぶつけることで帰還の道を開こうとしていた。
実際に次元の壁が耐えきれず、小さなひび割れが発生し、ボレオの幽霊屋敷に瘴気が漏れていた。
しかし、アルディアは脱出用の瘴気を犠牲にして悪魔を召喚してしまった。
つまり、帰還する手段を失ってしまったのだ。
戦いに勝利したノディールも二度と帰れないと理解っており、いつものような元気はなかった。
猫耳型の結界から出たロジーナは、鑑定眼やら真実眼を使って、不思議そうに空中を眺めていた。
そして、何となく「解錠」と呟くと、”きのこの世界”は崩壊して魔法陣から脱出できたのである。
つまり結界や次元に綻びがあるのならば、ロジーナは「解錠」にて破壊する力を手に入れていたのだ。
何故そのような力が手に入ったのか?
それはノディールが本能的に行った毛づくろいである。
聖女が毛づくろいする対象など、己の子以外に存在しないため、その効果は知られていない。
聖女の子なのだから聖女の力が引き継がれていて当然と思うかも知れないが、実は毛づくろいによる力の譲渡であった。
今回、のディールたちが帰還できたのは、偶然が幾重にも重なった奇跡なのだ。
帰還したノディールとロジーナは、ケージが死んでしまったとワンワンと泣いていた。
そんな事も知らずにテザール草原には、ナデアの淫声が風と共に拡散していた。
◆
ナデアとお別れエッチ♥を満喫したケージは、魔物に襲われることもなく無事ボレオの街にたどり着く。
考えてみればケージが転生してきてボレオの街の外に出た初めての出来事だった。
「街の外ってあんな感じなんだな」
ナデアと恋人で、夜遅くまでデートをしてきたと思われたため、門番にこっ酷く怒られてしまった。
言い訳しても信じてもらえないと思って、素直に怒られることにしたのだが、興奮した門番の説教は異常なほどに長かった。
交代に来た門番が、俺のことを知っていたのか冒険者ギルドに連絡してくれて、冒険者ギルドの受付嬢アンナ・ハーリン、つまりご主人様が迎えに来てくれて、やっと解放されたのだった。
俺はご主人様に性奴隷ではなくなったこと、死にかけてしまったこと、ナデアとエッチなことをしてしまったことなど正直に全て報告した。
ご主人様は全部聞いて後、「おかえり」とだけ言った。




