第50話 圧勝に生まれる隙きで
またまた5時に起きて、今日はお弁当を作ってしまった。
しかし、慣れていないのか、一人暮らしは疲労が溜まる一方だ。
《アレは……、この場所へソシールエイラ様を強制的に送るための手話によるキーワードにゃ。あれだけじゃ、発動しないにゃ。でも脅しとしては十分にゃ。本来は、初代ノディール様の力を受け継ぐ者として試練を受けさせるために使うのだけれど、まだまだ若いソシールエイラ様は試練を合格するのは無理にゃ。でも訓練で何度もこの場所に来ているソシールエイラ様には、ただの折檻と同じ感覚にゃ。だから素直に従ったにゃ。でも、何故あの女性が手話を知っているか、何故ソシールエイラ様だと知っているのか知らにゃいけれど》
《何か可哀想ですね……》
《まぁ……な》
ノディールの過去を知っている俺とナデアは同情してしまう。
《でも、それだけではにゃいのにゃ。何かしら運命的な何かを感じているからこそ、ソシールエイラ様は、貴方とクエストに行くことを承諾したにゃ》
なるほどね。
見知らぬ俺を簡単に信じてくれたのも、何故か人懐っこいところも、そういう理由があったからなのか。
《でも、何故、この場面なんだ? 確かに出会いは重要だけど、それ以外は、そんなに重要そうな場面じゃなさそうなのだけれど?》
「ほら、ケージ、戯れてないで行ってらっしゃい!」とご主人様。
「ケージくん、ノディールさん、がんばってね」
《ほら、クエストに出かけちゃうよ?》
記憶の中の俺とノディールは、手を振りながら冒険者ギルドを後にしようとしていた。
そして、振り返ったノディールと、俺……つまり透明人間の俺は目が合った!?
そして、ノディールが「お兄ちゃん」と呟いた気がした!?
◆
ノディールの拳が、死神の形になりかけている瘴気の一部を消滅させた。
「なっ!? なんなんだよ……。あの獣人は!!」
絶望に歪む獣人たちの表情が見たかったアルディアだが、逆に恐怖に顔を歪ませていた。
「ノディール姉のマナが……ホーリーに変わっていく……」
いつも何かにイライラして焦っていたノディールから優しさと慈しむようなオーラが発せられている。
「可哀想な……。魂にゃ。今、解放するにゃ……」
悪魔でさえ対抗できないのならどうすればと、アルディアは力なく地面に座り込む。
「いや、悪魔よ!! あの兎を殺せ!! はーはっはっは!! そうだ!! 殺せ! 殺せ!!」
死神の形を成す悪魔が分散して、ロジーナを四方八方から狙う。
流石のノディールも分散した悪魔を殲滅させる範囲攻撃は持ち合わせていない。
「ノディール姉……勝って。勝って、ケージを助けて……。さようなら、ママ……」
ロジーナは胸の前で両手を組み、ノディールが駆け寄ってくる姿を見ながら、目をゆっくりと閉じる。
「ロジーナァァァァァァ!!」
ありがとう、楽しかったよ。
ご主人様、ケージ、ソフィア、エデン、ネム、アン……。




