第40話 母と子
目覚めたが、ぐったりするロジーナ。
どうやら転移の際にマナを根こそぎ奪われたらしい。
ロジーナは水を欲したが、一人では飲む力もないためノディールが口移しで飲ませている。
「もっと飲みたいにゃ?」
恥ずかしそうに目を逸らしたロジーナは、ウンと小さく頷く。
そんな可愛い仕草と弱々しく命が尽きそうなロジーナに、ノディールの母性本能が爆発する!!!
ノディールは、なんとロジーナの衣服を全て脱がし、毛づくろいを始めた。
本来、体毛のない獣人には意味のない行為なのだが、まだ小さな赤子に対しては本能的に毛づくろいする親も少なくない。
ノディールは本能のままに行動を起こしているが、ノディールの聖女としての力が僅かながらに覚醒しているため、弱りきったロジーナに癒しの効果がもたらされていた。
ロジーナはイチペロ毎に体力を回復していく。
恐るべき聖女の力である。
ロジーナは小さなの思い出に浸っていた。
ロジーナの両親が殺されたのはロジーナが僅か1歳のとき。獣人ならではの成長スピードのおかげで、ロジーナは人族の悪意から逃げ延びられたのだ。
しかし、1歳。
獣人にとってもまだまだ親に甘えたい年齢である。
だが一人になったロジーナは、気がつけば、自分が誰かに甘えるどころか、孤児の世話をしながら生活していた。
誰かに甘えたいと願う気持ちと、一人で生きていくためには甘えを捨てなければならない現実に翻弄されていた。
そんな夢が突然叶った。
親の代わりと言うか続きをまさかノディールにしてもらうなんて。
しかし、恥ずかしさよりも心地よさと懐かしさが勝り、ロジーナはノディールに身の全てを委ねた。
「あん♥」
しかし、ロジーナも既に10歳、性感帯も立派に成長している。
ロジーナが女として覚醒を始めた頃、ノディールの毛づくろいは終了する。
ロジーナは全身がノディールの唾液塗れになったのだが、まったく不快ではなくノディールの優しさに包まれている気がして嬉しくなった。
そして、ノディールはロジーナを子として、ロジーナはノディールを母として、言葉に出さないがお互いに感じていた。
◆
『ノディールの記憶の街』で”ネコマンマ”に舌鼓を打つケージとナデア。
既に奴隷契約が消滅したため、ご主人様からナデアさんに降格していた。
「見た目はアレですが、美味しいですね」
「うん。ナデアさんの言う通り、何杯でもいける!」
突然『ノディールの記憶の街』が揺れた。
いや崩壊寸前、消滅しそうになった。
《ま、まさか……ソシールエイラ様が、聖女様の力に目覚め始めたにゃ!?》
「ノディールが!? あいつ、一体何してるんだ? ピンチなのか!? くそっ! どうすりゃいいんだよ!!」
そんな至福の一時を壊すのが我らがノディール、バカ猫である。
次元を跨ぐ、その嫌がらっせぷりは天晴だとケージは思った。
ドス黒い雲に覆われ崩壊しかけた『ノディールの記憶の街』は、何故か温かくポカポカの晴天となった。
「は? なんなんだよ」
《この世界はソシールエイラ様の心と直結しておりますにゃ、ソシールエイラ様はほのぼのとした気分なのでしょう。にゃにゃ》
「巫山戯んな!! 早く、俺達を出せ!! バカ猫!!」
《まぁ、まぁ、ソシールエイラ様が聖女に目覚め始めた事は確かにゃ。しかし、本来、『ノディールの記憶の街』でなければ、スレンダーキャットがあの年齢で人を思いやる気持ちにたどり着けるはずがにゃのですが……一体何があったにゃ?》
考えるだけ無駄だと、ケージは”ネコマンマ”をもう一杯店員に注文した。




