第39話 バカ猫の秘密
「結局、誰の記憶なのですか?」
《それは言えませんにゃ。それを護るのが私の役目ですから》
「えっと……どうやったら出れるのですか?」
《ごめんにゃさい。わかりませんにゃ。本来は、聖女候補か血縁者しか入れないにゃいから……》
俺は言いたくないが、言わずにはいられない。
「あの、貴方もスレンダーキャット族ですよね? もしかして、ノディールって関係ありますか?」
《ノディール様!? い、い、いえ……。し、知りませんにゃ……》
あからさま過ぎだ。
またあのバカ猫が関係しているのか……。
俺はため息をつく。
「今、知らないと言いながらも、”様”を付けましたよね? さて、言わないのなら……拷問の時間ですよ。お〜い。ウィル・オー・ザ・ウィスプ……」
《にゃ!? そ、それは駄目にゃ!! あの光は痛いにゃ!!》
「ケージくん♥ 女の子をいじめちゃ駄目ですよ」
ご主人様は俺の腕に絡みつくようにべったりと密着している。
俺の望んだ羨ましい光景のはずなのだが、後々を考えると頭が痛い。
秘匿を諦めた幽霊は正座しながら、ゆっくりと語り始めた。
《ノディール様の本来のお名前は、ソシールエイラ・ディエール・ウルズ・ノディールにゃ。
ソシールエイラ様は、スレンダーキャット族の中でも王家の血を引くディエールの家系であり、王位継承権を持つ”ウルズ”なのですにゃ!!
そして、偉大なる初代女王ノディール様の力を受け継ぐ聖女でもあるのですにゃ……》
「あのバカ猫、めちゃサラブレットじゃねーか!!」
《はい、めちゃサラブレットにゃ!! 意味はわかりませんが……》
「で、貴方はここで何を守っているのですか?」
《うっ……。言わないと拷問ですかにゃ?》
「拷問です」
《拷問は駄目にゃ!!
ここは初代ノディール様の記憶に代々ノディール様の力を受け継いだ者の記憶を継ぎ足した場所。
本来はソシールエイラ様が訪れ、その力を解放する試練を受ける場所にゃのです!》
「なるほど。この場所の目的はわかった。しかし、なぜ俺達がいた屋敷とここが繋がったんだ?」
《えっと……ですね……。
私はずっと、ソシールエイラ様を追いかけていたにゃ。
何度も試練に挑戦するように言ったのですにゃ。
しかし、その度に物理攻撃の効かない私に殴り掛かってきて、挙句の果に全力で逃げるのにゃ!!
霊体の私ではソシールエイラ様に追いつけず……。
最近、ソシールエイラ様が、ボレオに滞在していることを知り、私もあのお屋敷に勝手に身を置かせてもらったにゃ……。
そこにあの忌々しい神言教が霊払いに来るという噂を耳にして困り果てていると、偶然なのか九尾主義の工作員が来て、神言教を追い返してくれると言ってきたのにゃ。
わたしの知っているのはそこまでです……にゃ》
「じゃ、あの魔法陣は、その九尾主義の工作員が仕掛けたのか?」
《はい。実を言うとその魔法陣は、私が屋敷に取り憑く前から真言教が用意していた魔法陣を九尾主義の工作員が、改良したのですにゃ》
「真言教が魔法陣を!?」
《にゃ。その魔法陣は獣人のアンデッドを作り出す魔法陣にゃ。
まったく、あいつら獣人の地位を下げることしか頭にないのにゃ。
あっ、ちなみに貴方達が亜人のアンデッドを作るための触媒役だったにゃ》
「はっ!? 俺達が!? 何だよ、その九尾主義の工作員のおかげで助かったのか……。いや、助かったと言えるのか? それで、他の連中も、ここに来ているのか? ノディールもいたはずなのだが……」
《にゃ!? し、知らにゃい……。ここへ来たのは二名だけにゃ!!》
話の流れは見えた。
しかし、俺達には何も出来ない。と言うか、出る方法がわからない。
時間だけが経過していくが、肉体を持つ俺とご主人様のお腹がぐぅ〜っと鳴る。
幽霊が言うには、街に行けば飯が食えるとのこと。
俺とご主人様は、見張りの塔を下りて、ノディールの記憶の街に繰り出す。
「ふっふ〜ん。私がいれば料金は無料にゃ。好きなものを食べるが良いにゃ!!」
スレンダーキャット族は、誰もが陽気なのか、一人にいるだけで明るくなるな。
ノディールが懐かしい。
くっそ、あのバカ猫に会いたいと思う日が来るなんて……。




