第38話 にゃ?
「それでは”人族”の皆さん、出発しましょう」
神言教の信徒であるアルディアは、ノディールを睨みながら話を続けた。
「しかし、獣人の貴方方は別行動でお願いします。神言経典には人族のみを導くことが記されています。獣人撲滅が記されていない事に感謝しなさい」
合同で掃除を行ったパーティーのリーダーである剣士のアンデルが、申し訳無さそうな顔で言った。
「すまねぇ。ここで揉めたくないんだ。頼む引き下がってくれ」
「わかったにゃ。でも、お願いがあるにゃ。ケージ、ケージを見付けたら守ってあげて欲しいにゃ。あいつは性奴隷で戦闘力が殆ど無いにゃ」
「あぁ、わかった」
「それは無理な話ですね。神言経典によれば、奴隷は人ではないと記されていますから」
「にゃっ!?」
ノディールの拳に力が入る。
「何故、私が睨まれなければならないのですか? 私は慈悲深いと自負しておりますが、貴方がそのような態度ならば、真実を告げなければなりません。この何処とも知れぬ異空間に私達を転移させたのは、貴方たち九尾主義ではないですか!!」
「にゃ!? にゃんだと!?」
「知らぬでは通じませんよ。あの転移に使われた魔法陣に書かれていたのは文字は獣人語でした。全く以て悍ましい文字を見せつけてくれましたね。背筋がゾッとします」
「待ってくれよ!? 犯人は獣人かも知れないが、ノディールじゃないだろ!? 犯人なら転移に巻き込まれるはずがないだろ!!」
「アンデルさん、何も私はあの猫が犯人などとは断言しておりません。ただ犯人の同族と同じ血が流れているため危険で汚らわしいだと言っているのです。さぁ、これ以上、獣人に時間を取られている場合ではありません。早く出口を探すために出発しましょう」
冒険者たちは口々にノディールへ謝罪の言葉を言って出発していく。
そんな冒険者たちの後ろ姿を見送るノディールは、未だに意識を取り戻さないロジーナを抱えて涙を必死に堪えていた。
◆
ウィル・オー・ザ・ウィスプは、攻撃を受けていた。
敵である幽霊が、攻撃の瞬間だけ体の一部を実体化して攻撃していたのだ。
しかし、物理攻撃無効なウィル・オー・ザ・ウィスプは、ダメージを受けていない。
また擬似的な光の精霊でもあるウィル・オー・ザ・ウィスプは、その場にいるだけでも霊的な対象にダメージを与える事が出来るのだ。
《ぎゃぁぁぁっっ!! もう止めて!! 私の負けだにゃ!!》
『デハ我ガ主トノ会話ヲ、オ願イスルワ』
《わ、わかったにゃ!! 光を、光を消して!!》
ウィル・オー・ザ・ウィスプからの報告により、俺達は出入り口まで近づく。
その先はまた別の空間ではなく、薄い結界により部屋から出ることは可能だが、部屋に入ることは不可能となっていた。
そのためご主人様の魔法探知は探知できても結果が返ってこなかったらしい。
しかし、規格外のミニチュア・モンスター・メーカーは、その結界の干渉を受けないようだった。
「で? 結局、その幽霊の目の前に来ても、この結界が邪魔で会話が出来ないのだけれど?」
『出テキテモ、大丈夫デスワ』
俺はご主人様に確認した。
ご主人様は黙って頷く。
まずは俺が結界を手で触れ、害がないことを確認してから外に出た。
その場所は、強烈な風が吹き荒れる見張りの塔の最上階。
その眼下には見たことのない赤い石で造られた家や建物が立ち並んでいた。
「ここは?」
《とあるお方の記憶の残滓の中です。貴方たちは肉体を持って、そのお方の記憶の中にいます》
何が何だか、さっぱり理解らない。




