第32話 ある日の公園でのおやつタイム
日本で暮らしていれば、多少の個性はあったが全く自分がオンリーワン的な存在ではないため、自分の未知なる力など心配する必要もなかった。
しかし、この異世界では自分は稀な異分子である。
自分の知らない秘密が解明されるのは、何だか安心するのだ。
さて、性奴隷という立場でこの世界をスタートしたが、新たな一歩を踏み出したことで、ソフィアさんをはじめとする仲間たちに出会えた。
それは嬉しいことだ。
また同じように辛い現実も知ることになったし、プチな悩みが増えた。
『俺は俺の肉体なのか』、『自由に世界を旅できるくらいに強くなりたい』、『人殺しは嫌だ』、『性奴隷じゃなくなった』、『ソフィアさん好き』、『ノディールをキプしたい』、『ロジーナに嫌われたくない』など、うん、クズな悩みばかりだ。
さて、俺の最大の特徴であるはずのミニチュア・モンスター・メーカーは、あまり役に立っていない。
ならば性技か?
性は女がいて初めて発揮される能力。
しかし、女はトラブルの元なのだ。
殺し殺されの世界で、積極的に使う能力でもない。
「俺は……どうすれば!?」
「うん? ポンコツ過ぎて狂った?」
ロジーナは心配そうに俺を見ると、ぎゅっと手を繋いできた。
あっ。そうだ。これだよ、これ!!
別に世界を救うだとか、世界中を見て回るだとか、そんなに背伸びしなくても、日本にいたときのように、日常に流されていれば幸せなんだ。
うん、それに日本よりも治安は悪いが、女の子に囲まれて幸せのはずだ。
日本では成績が悪くて、こっちでは戦闘力が無くて、どっちにしても将来の不安は変わらないけどね。
「なぁ、ロジーナ。何か食べたいものあるか? 奢ってやるぜ!!」
「本当!? ポンコツ、どうした!? うれしい!!」
「ポンコツは止めて……」
俺とロジーナは公園のベンチに座って、ソフトクリームをペロペロと食べる。
ロジーナは嬉しいのか、足をブラブラさせて笑顔いっぱいでソフトクリームを頬張る。
うん、子供だよな。
可愛い。
子供と言えば、この公園には子供が沢山いる。
貴族でも孤児でもない、平民の子どもたちだ。
その平民の中でも、家の手伝いをしなくていい、金持ちの子どもたちだ。
「なぁ、ロジーナも、あんな風に遊びたいか?」
「わからない。遊んだこと無いから」
なんとも悲しい回答だ。
俺はロジーナの頭を撫でる。
「でも今のままでいい。今、幸せ」
純粋無垢な少女の言葉って、どんな偉そうなヤツの言葉よりも刺さるよな。
このままだと泣きそうになるからと、俺は立ち上がった。
さて、明日は冒険者ギルドでクエストを受け、明後日は『エリス・サザーランド誘拐大作戦』決行日だ。
いろんな人が不幸になるけど、その分、幸せになる人もいるはずだ。
「ご、ごめんなさい……」
うん? 金髪碧眼の美しい少年がぶつかって来た。
俺の服には少年が持っていたソフトクリームがべったりと付く。
少年の名前はシーリス。
帯剣しているため尋ねたら、驚くことにソロ冒険者だった。
背格好はノディールと同じくらい、つまりホークと同じくらい。
ソロ冒険者ということは、間違いなくロジーナよりも強いはずだ。
ここは我慢して穏便に済ませておくべきだろう。
「いいよ。気にするな。でもよそ見は駄目だぞ」
「は、はい。ボクは、あれが気になってしまって……」
シーリスが指差す先には、 化粧の濃い筋肉ムキムキのグレディアに肩車せれてはしゃぐノディールの姿であった。
「あぁ……。お前も被害者だな……」
「ノディール姉……」




