第23話 死の恐怖は善悪を麻痺させる
盗賊ギルドの運営が変わったからか、他の街から悪党どもが流れ込んで来た。
他の街の悪党どもに何のメリットがあるか理解らない。
しかし、確実に増えているのだ。
なので夜遅く女性が出歩いていると危険極まりない。
流石のご主人様も他の街の悪党には顔が利かないため狙われる可能性があるということだ。
俺の隣ではノディールがシュッ、シュッとシャドウボクシングしながら歩いている。
ロジーナは弓矢を構え真剣な顔で周囲を警戒している。
勿論、俺もケイブバットで上空から監視を続けていた。
本当はソフィアさんもいてくれたら心強いのだが、家にもストリートチルドレンがいるため全員でご主人様を迎えに行くわけにもいかないのだ。
「おい」と言いながら、強面の男が近づいて来た。
如何にも誘拐犯です!な男だ。
「お前は敵か?」ロジーナが弓を構えながら尋ねる。
「あんっ!? 何だ、この野郎!?」
「ノディール姉、敵、排除」
ノディールは男の目の前で腰を落とし、スレンダーキャット族特有の全身のバネを活かし、男の顎に向けてアッパーカットを繰り出す。
あっ、某ボクシング漫画で見たことある必殺パンチだ!!
男が後ろにグラついた瞬間、飛び上がったノディールは、かかと落としで男の顔面を蹴り、男の頭部を地面にめり込ませた。
ちょっ!?
ノディールさん!?
やりすぎですよ!!
『次、左。路地ノ裏』と俺のケイブバットが報告してきた。
「ロジーナ、左、路地裏!」
「路地裏の男、敵か?」
真実眼は問いかけて初めて威力を発揮する。
対象に質問ができれば、相手の心の位置、つまり肉体の位置も把握できるのだ。
ロジーナは躊躇なく路地裏の男の脳天に矢を打ち込む。
怖いよ、この子達!?
「ケージ、動くな!!」
稲妻のようなノディールの飛び蹴りが頬をかすめる。
後ろから音もなく狙われてた事実より、その強烈な……弾丸のような蹴りが怖いっての!!
ちょっとチビったぜ。
「ぐわぁぁぁっ!!」と俺の後ろで別の男が顔を押さえながら倒れた。
「雑魚、死ね」、「人族、死ね」とロジーナは、ノディールが倒した男たちにとどめを刺していく。
おいおい、いつから、こんな凶悪な娘になった!?
人族死ねって、明らかに問題発言だぞ!?
はっ!?
ソフィアさんの覗きがバレたら……股間、マジで撃ち抜かれてたんじゃね!?
「ケージ。スレンダーキャット族は鼻も良いのにゃ。お前可愛いな、守りたくなるにゃ」
ノディールにタンタンと肩を叩かれた。
ぐっ、チビったことバレてる!?
鼻も良いって……やっぱりソフィアさんの覗きもバレてるじゃねーか!!
「う、あの件は……ロジーナに内緒で頼む」
「今度、何か奢ってもらおうかにゃ?」
「は、はい……。何でも……」
ノディールはガッツポーズで喜び、ロジーナは盗賊の耳を削いでいる。
あれ、それって討伐したゴブリンの耳を証拠に持っていくってやつだよね?
人間もやるんだ……。
おえぇぇぇぇっっ!!
またスプラッターな現場を見て聖水を吐き出した。




