第24話 残酷な世界を知った今
あの後のことは、余り覚えていなかった。
ただ僅かに覚えていることと言えば……。
戦いの興奮が冷めた頃、俺より小さな可愛い獣人の二人が、人を殺めたという現実を……受け入れるかどうか、どう受け入れればいいか、何が正しいのか、もう理解らなかった。
「何故、駄目? 人族は両親殺した。両親何も悪く無い。両親が生きていれば盗賊にならなかった」
いつも言葉足らずのロジーナが、頑張って自分の思いを口にした。
これだけ聞けば、どれほど辛い過去なのか、悪いがよくあるパターン過ぎて想像も簡単に出来る。
「魔物も人族も敵は殺すにゃ。殺さないと自分たちが死ぬだけにゃ? ケージは、前に殺されそうになったはずにゃ? お前は聖女様かにゃ?」
魔物を殺すことに躊躇しなかった時点で理解すべきだった。
ここは異世界、日本とは価値観が異なること、悪の前には言葉など通じないということ、本当の意味で命は平等だということを。
そして、ベッドの縁に、ソフィアさんと一緒に座っていた。
「私も……食べるために鳥を殺し、お金を稼ぐために魔物を殺し、身を守るために人を殺したことがあります。私も大概ですが、ケージくんは、以上に潔癖なのかも知れませんね。でも今回はロジーナとノディールが正しいです。気持ちに整理を付けて、きちんと謝ってあげてください」
「は、はい……。もう少し考えさせてください」
「うん。でも、そんな顔しないで……」
ソフィアさんは、俺の手を取って自分の胸に押し当てた。
「お風呂、覗いていたんでしょ?」
「……」
ぎゅっと抱きしめられ豊満な胸に顔が埋まる。
「気付かれちゃったね。でもケージくんはアンナ・ハーリンさんの性奴隷。運命って残酷ね。辛いけど、もうしばらくは、ここにいるわ。エデン、ネム、アンの三人がもう少し成長するまではね。ケージくんが見せてくれる一つ一つの物語が、私に生きる意味と答えを与えてくれるの。だから、お礼じゃないけど、貴方のためなら何でもするわ。忘れないで……」
「ソ、ソフィアさん? 俺は……特別でも何でもないよ?」
ソフィアさんの胸に埋もれたまま、期待に答えられないと思って、保身のためにそんな事を聞いてしまった。
「ふふっ。特別かどうか、それを決めるのは誰でもないわ、私よ」
ガチャ。
「ケージ入るにゃ……」
バカ猫、入ってから聞くな!! 聞いてから入れ。そして返事を待て!!
「ノディールちゃん、後は任せたわ。ノディールちゃんも大変だと思うけど、ケージくんを励ましてあげてね。それがロジーナちゃんのためだから」
「わ、わ、わ、わかったにゃ……」
ソフィアさんの代わりに隣にノディールが座る。
ノディールはバカ猫のくせに、何かを悩むように、もじもじとしている。
「ノディール、ごめんな。俺が間違ってた」
「ふっ。当たり前にゃ、と言いたいけどにゃ……。私も殺すつもりはなかったにゃ。生きたまま冒険者ギルドに連れて行くつもりだったにゃ」
「あれでか? 地面に頭埋まってたぞ?」
「あれくらいで死なないにゃ。ケージが弱すぎるにゃ」




