第11話 誰からも賞賛されない孤独な正義の果に
「ちょっと皆さん!? 落ち着いてください。無茶苦茶ですよ。それならケージさんとノディールさんの稼ぎをロジーナへ渡せば良いじゃないですか!」
ソフィアさんの意見は正論である。
「それじゃ、駄目なんだ。
ロジーナは必要悪とは言え、ずっと犯罪に手を染める……自己犠牲でストリートチルドレンを助けてきた。
そんな傷付いたロジーナの心と同じ立場にならなきゃ、痛みを分かち合うなんて出来ないだろ!?
善人がロジーナの行いを見て見ぬ振りしていたけど、善人が知ろうとしない本当の……ロジーナが望んでいたいことは、ストリートチルドレンの生死なんかじゃない。
未来なんだ!!
だから共に生きる覚悟が必要なんだよ。
その決意の証が盗賊ギルドへの登録なんだ!!
それでもロジーナには届かないさ。
だって同じ罪を背負わずに……別の手段で金貨を稼ごうとしているから。
それでも……ロジーナと同じ歩幅で同じ道を歩みたい。
何でかわからないけど、そう思っちまった」
今になって俺に親友がいなかった理由がわかった気がした。
ここまで他人の気持ちを考えて、他人を理解するために近づいたり、他人のために何かしようとしたことなんてないからだ。
「ケージ……。ありがとう。
あの子達には笑って生きて欲しいと思った。
私が手に入らないものを……手に入れて欲しいと思った。
だけどケージを巻き込むなんて出来ない」
「ロジーナの言う通りです。
冒険者ギルドで金を稼ぐとしても、盗賊ギルドにだって緊急クエストのような強制参加のクエストがあるかも知れません。
そのとき、ケージは犯罪に手を染めるのですか?
犯罪者側になったら、救えない何かが生まれてしまうことも考えてください。
でも……ケージが間違っているとは言えません。
ケージに出会ってから、私の何かが変わり始めている気がします。
このきらめき出した世界が本物だと……証明してください」
ソフィアさんの望む世界が何か理解らないけど、期待されたら答えるしかない。
それが主人公ってもんだろと言いたいが、俺には何の力もない。
異世界に来た日本人は圧倒的なステータスとチート能力で世界を変えていくはずなのだが、この世界では現地の人達の方が圧倒的に強い。
そりゃそうだよね?
魔物のいる世界で生きているんだもん。
魔物のいない日本人の方が強いとかありえないよ。
ステータスが存在しない時点であれだし……。
だけど何もしなくても生きていられる日本では味わえないものがある。
命がかかっているから味わえる情熱と言うか本気が、この世界にあって……魂を揺さぶる何か、それに答えたいと思ってしまうのだ。
「ソフィアさん、ロジーナ。そしてご主人様。俺、盗賊ギルドに登録します」
「やっぱりケージは……退屈な毎日をぶっ飛ばしてくれる……私の英雄にゃ!!」
「でも、やっぱりケージさんには、剣の訓練とかして欲しいですね。でも、このメンバーで剣を扱える人は……いませんよね」
「それなら問題ない。ギルド最強の戦士ペチタに依頼を出しておく」
ペチタって誰?
まぁ、いいか、強くなれるなら……って、剣を習っても強くなれる保証はないけど。
俺達はロジーナに連れられて、盗賊ギルドのボレオ支店にやって来た。
そもそも自分の住む街の名前がボレオだって初めて知った。
ご主人様に甘やかされて育って……暮らしているためなのか、いろいろと一般常識が欠けている気がする。
しかし、こんな大通りのど真ん中に盗賊ギルドが堂々と店舗を構えてるとか、国とかとズブズブの関係じゃねーか!!
入る前に一応確認しておきたいことがある。
「なぁ、俺はロジーナに命を助けられたけ恩があるけど、ノディールは本当に良いのか?」
「ふふっ。私もロジーナがいなければ、どうなっていたかわからにゃいの!」
偉そうに腰に手を当ててふんぞり返るノディール。
正直、仲間がいてくれるのは心強い。
しかし、ノディールの価値観なのか、この世界の標準なのかわからないが、案外軽く重要な決断をするものだと俺は思う。
これについては日本人の俺には永遠に理解できないかも知れない。
手動式の回転ドアを抜けると、冒険者ギルドよりも金のかかった室内に驚く。
そこにいる連中は、如何にもな人物像で漏れなく柄が悪く目つきが鋭い。
「あっ? ロジーナか……。後ろの連中は何だ? 騙して奴隷の契約書にでもサインさせたのか?」
「おい、お前知らねーのかよ。ロジーナはあのお方の庇護下に入ったんだ」
「じゃ、後ろのガキって……例の性奴隷かよ!?」




