第10話 断ち切り難い絆を作るために
「さて、ケージの傷が癒えるまで不問にしていたロジーナの件だが。ケージはどうする?」
食事が終わりソフィアさんが片付けている最中に、突然ご主人様に話を振られる。
ソフィアさんの財産を盗んだ件というより、積み重なった罪に対する問いかけなんだろう。
「う〜ん……。そもそも盗賊ギルドがある時点でおかしいと思う。
何故、国や冒険者ギルドが全力で潰しにかからないか?
それは必要悪だからかなと。
これは予想だけど、金を持つ平民や貴族、果ては王族や国も、なんだかんだで繋がりを持って利用しているんじゃない?
そもそもこの世界の善悪なんて、政治、財力、武力を持った権力者次第でしょ?
例えば殺人は駄目だけど、盗賊は殺してOK、戦争はOKみたいな。
そして、厄介なストリートチルドレンなんか早く餓死してしまえば良いと思いながらも、国の威信に傷が付くため殺すに殺せないが、国の財源や自分の私財を使いたくない。
これが善人の総意だと思う。
だからストリートチルドレンを助けるのは、ロジーナのような悪人だけなんだ。
そのためロジーナが働く悪行は大目に見られているんじゃないの?」
ご主人様の視線が怖い……。
「つまり?」
「ロジーナは……悪くないとは言わないけど、今後は違う方法で稼ぎ……」
ロジーナがテーブルをドンと叩く。
「そんなに簡単に金が稼げるなら、ストリートチルドレンなんて生まれやしない!!」
ロジーナは泣いていた。
トレードマークのナガミミも半分に折れ曲がっている。
「だって、冒険者ギルドなんかで、草むしりだって……」
「ケージ。誰もが冒険者ギルドに登録できるわけじゃないのよ。しっかりとした身元保証人が必要なの。一番簡単な就職先の冒険者ギルドでも無理なら、一般の職に付くなんて無理なことも理解るわよね?」
「そ、そんな……」
だったら国で保証すれば……。
あっ、本気でストリートチルドレンの事なんて考える奴なんていないのか……。
「話しを先に進めるわね。ロジーナ。貴方はケージと同じく、私が奴隷として買います。明日、奴隷商にて、犯罪奴隷として登録する。それでも盗賊ギルドとの契約は無効になったわけじゃないわ。一生かけて、上納金とは別に違約金……金貨3,000枚を払うしかないのよ」
「どうやって……」
「ケージと同じ冒険者としてよ。ロジーナは私の奴隷であるため身元は保証されているのよ」
「あっ……。そういうこと……」
「なら、俺も盗賊ギルドに登録する」
「な、何を言っているの?」
ソフィアさんが大きな声を上げた。純粋無垢なソフィアさんには耐え難い発言だったのだ。
「だから、俺もロジーナと同じ立場になって、一緒に金を返そうかと……」
「一人、金貨3,000枚なのよ!? 二人で6,000枚じゃないの!! 無理に決まってるわ!!」
「いいえ無理ではないわ。冒険者ギルドの中級冒険者なら、年で金貨500枚前後は珍しくない」
ご主人様が冒険者ギルドの受付嬢としての情報を教えてくれた。
「無理ですよ!! ケージさんは……。冒険者としての資質がありません……」
「ふっ、私も盗賊ギルドに登録するにゃ。戦いなら任せるのにゃ!!」
黙って聞いていたノディールも一緒に茨の道を進んでくれるらしい。




