第101話 シーリスとペチタ
完璧な人間などいないし、とある事柄にも正解は幾つもある。
新人ではない年下を見ていると、あー……って事がたまにある。
しかし、本人は至って真面目だし、周囲も納得している。
それで上手く回っているし、俺がしゃしゃり出ることもしない。
まだ若いということもあり、温かい目で見てもらえているし、
いつか気が付くときが来るかも知れない。
注意されても反発するタイプなので、自分で気が付かなければ直らないだろう。
兎に角、自分は完璧だと思わないことが重要なのだ。
さて、最もケージに近いシーリスちゃんがケージに会えないのは……
ソファーで寝転がっている不満げな表情のシーリスにペチタは謝る。
「シーリス。すまないと思っている」
ケージが死んでしまったことでシーリスは物凄く落ち込んでしまい、食事も取らず衰弱していった。
悪魔が人族の死に嘆き悲しむなんてとペチタは驚く。
ペチタは戦意を失い、まるで出会った頃のアルベリットのように感じ、献身的に看病する。
そんなとき、あの自称魔王に呼び出されたのだ。
そして、ケージがこの世界に蘇ったことで、衰弱した体でシーリスは、フロント大陸に戻ろうとしたのだが……。
ペチタは事前にシーリスの自由を奪う封印術をシーリスに施していたのだ。
「謝るなら、この封印術を解いてよ」
「駄目だ。シーリスならフロント大陸へ転移可能なのだろう? シーリスにケージを襲わせるわけにはいかない」
「えーっ。魔王が言ってたでしょ? 誰が勇者の血を持っているかわからないって」
ペチタはシーリスの隣りに座る。
「そうだ。だが……。ロジーナやソフィアにもチャンスを与えてやってくれ」
「うん? ペチタはケージを狙ってないの?」
「あぁ……。弟子だからな。そういう関係になりたいと思うのはアルベリットだけだ」
「世界が滅んでも?」
「滅んで欲しくはないが。自分に勇者の血が流れているとは思えない」
「そう思わせてるだけかもね? だって悪魔のボクに勇者の血が流れていると思えないけど、もしかしたらって……」
「そうだな。それは誰にも否定できない」
「え? 本当にそう……思ってくれるの?」
シーリスが笑うと小さな悪魔の八重歯がチラリと顔を覗かせる。
「あぁ、シーリスは……悪魔だが、ココロは良い奴だ」
「へへ。嬉しいな」
シーリスはペチタに抱きつく。
まるで子供だ。
そんなシーリスの頭をペチタは撫でる。
「根本的な話だが、あの魔王の話しは本当なのか? 特に……アルベリット……」
「アルベリットの? うーん。多分本当じゃない? でも神々がいたとされる時代って……。ボクの生まれるずっと前、数千年前だよ? アルベリットって……その時代の……」
数千年前!? そんな昔から……アルベリットは絶望に押しつぶされず孤独に戦ってきたのか!?
ペチタの拳に力が入る。
そして、あの悪魔三体と戦って出来た傷跡に触れる。
今の力で……神を倒すことができるのか‥…。
あの魔王が言うには、例えアルベリットが魔王を倒したとしても……自称女神が呪いを解くことはないらしい。
ならば、この世の理として、呪いをかけた者を討ち滅ぼすことが……解呪への道になるはず。
「ペチタ……。気持は理解るけど。神を倒すことは不可能だよ? あの魔王の半身ですら……圧倒的でボクたちが踏み込めない領域の存在だって……あの時、わかったでしょ?」
「あぁ……。だが、今、神はいない……。ならば絶対に倒せない存在ではないはず」
「確かに。消滅したのか、眠っているのか……。ボク達にはわからないけどね」
「シーリス。頼みがある」
「何?」
「お前の封印を解く。だから、ソフィアやロジーナ、ノディール達が大陸へ行けるように手助けをしてやってくれないか? あの三人が大陸に渡った後、ケージを仲良く奪い合ってくれ」
「何それ? あの三人は、ボクよりケージの愛を勝ち取る可能性が高いんだよ? だからボクは先行して……」
「頼む……」
真剣なペチタの目にシーリスは、視線を逸して降参のポーズを取る。
「もう!! 酷いな……ペチタは……。わかったよ! でもケージに振られたら……責任取ってよね!?」
「良いわ。三人で仲良く暮らしましょう」と、いつの間に側にいたアルべリットが答えた。




