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終末の鐘が鳴り響く、この空のもとで ~ゲームみたいになった世界で、僕はカードを手に無双……無双は出来てないな?~  作者: 鈴木えんぺら
第1部第1章

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第7話 新メンバー!

「危なかった……」


 トイレから出てきた柊さんが深く深く嘆息した。

『何が?』と聞くほど僕は野暮でもなければ無謀でもない。

 柊さんの隣で鋭い視線を向けてくる篁さんが怖かったと言うのはある。


「間に合ってよかったよ」


 じっとりとした眼差しを向けてくる柊さん。

 眼鏡越しの視線は、ちょっと冷たい気がしなくもない。

 たぶん、僕の気のせいだろう。たぶん。大事なことなので二回言いました。


「ふたりとも、ありがとう。それで、その、桧川……私たち以外は?」


「第2校舎と第3校舎は見て回ったけど、僕らだけだね」


「……そう」


 言葉を飲み込んで視線を外に投げる柊さん。

 さっき見たときよりも立ち上る黒い煙が増えている。状況が好転する気配はない。


「ふたりはどんなスキルを持ってるの?」


「ん?」


「柊さん、自分のステータス見たの……って言うか、ゴブリン倒したの?」


「うん。硫酸ぶっかけてやった」


 化学準備室にいたのは、運がよかったね。

 柊さんは、そう嘆息した。


「そう、だね」


 いくらモンスターが出てきたからって、初手で硫酸ってなかなかできることじゃない。

 じーっと見てたら、柊さんが目を逸らした。頬が真っ赤だ。表情乏しくなんかないな。むしろ豊かな方かも。


「……私だってマンガぐらい読むし」


「あ、そっち?」


「う……」


 会話は微妙に噛み合っていないけれど、情報交換はできている。

 すごく不思議だ(すっとぼけ)。

 柊さんは『スキルは【鑑定】と【錬金術】だよ』と続けた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 名 前:柊(ひいらぎ) 真都(まと)

 種 族:人間

 性 別:女

 レベル:1

 H P:15/15

 M P:10/25

 状 態:正常

 攻撃力:2

 防御力:2

 魔法力:3

 称 号:なし

 スキル:【鑑定】レベル1

      【錬金術】レベル1

      ・【薬物生成】

      ・【錬金爆弾生成】

      ・【小型ゴーレム生成】

 エクストラスキル:なし


 装備品:なし


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「【鑑定】と【錬金術】って、異世界転生物の主人公みたいなビルドだね」


「うるさいなぁ」


 凄く嫌そうな顔をされた。自覚あるんだ。

【鑑定】はそのまんま。対象はモンスター限定ではないとのこと。

【錬金術】は、さらに【薬物生成】【錬金爆弾生成】【小型ゴーレム生成】に別れていて、MPと魔石と素材を消費してアイテムなんかを生成するスキルだ。


「錬金爆弾はMPと魔石だけで作れるけどね」


「へぇ」


 硫酸で倒したゴブリンの魔石で爆弾を生成し、爆弾でゴブリンを倒して魔石をゲットしてまた爆弾を作って……そんな感じで戦っていたらしい。

 廊下の黒い焦げ跡は、彼女の爆弾のせいだった。

 廊下で爆弾って過激だなぁ。口には出さなかったのに『他に手がなかったんだ』って口を尖らせる柊さん。顔に出てたみたい。


「じゃあ、準備室に立て籠もっていたのは……」


「投げた爆弾が当たらなかったの」


「なるほどねぇ」


 そういうこともあるか。

 柊さんのことは詳しく知らないけれど、運動神経は僕と同じレベルに見えるし。

 聞いてばかりだと何なので、僕らふたりのスキルについても説明した。【万象の書】については『カードゲームみたいなもの』と伝えたら『ある程度予想はつくけど、桧川に任せるよ』と返ってきた。


「今のでわかるのか、柊」


「まぁ、だいたいは」


「そうか、凄いな」


 篁さんがしきりに感心している。

 こちらに向けられた柊さんの瞳が『ちゃんと説明したの?』と問いかけてきていたので首を横に振ったら、盛大にため息をつかれた。

 素人にカードゲームのルールを教えるのって難しいんだ。だいたい僕だって完璧に把握できてるわけじゃないし。


「コホン、それで……ふたりはこれからどうするつもりなの?」


「僕らは生き残りがいないか探していて、次は第1校舎に行こうかなと。その後は、体育館に向かう予定」


「食料を押さえて籠城?」


「うん。籠城って言うかレベル上げだね」


「パニックになってる街に突っ込むよりは理に適ってるか」


 話が早くて助かる。

 腕を組んで顎に指を添えて、柊さんは考える素振りを見せた。


「柊さんは?」


「桧川たちについていきたい」


 即答だった。

 本当にいいの? 籠城だよ?

 しばらく学校を出るつもりはないんだよ?


「いいの? 篁さんにも聞いてなかったけど……ご家族とか、大丈夫?」


「私は寮住まいだ。実家は京都」


 新幹線ですぐだったんだがな。

 腕を組み、軽く嘆息して西の方を見やる篁さん。

 ここは関東だ。とてもじゃないけど歩いていける距離じゃない。

 新幹線、まだ動いてるかな? 動いてないだろうな……


「そんな顔をするな、桧川。父も祖父も私より剣の腕は立つ。私は心配される側だ」


「私は実家から通ってるけど、両親は海外出張中だったから、篁以上にどうしようもないね。海とか空にもモンスターがいるだろうし。桧川は? 桧川は桧川……綾香さんと一緒に住んでるんだよね?」


 肩を竦めてから、逆に僕を心配してくれる柊さん。

 綾香との関係がバレていることにちょっと驚いたけど……まぁ、アイツは目立つか。

 いずれにせよ、僕の方からふたりの事情を聴いてしまった以上、自分だけ黙ってるわけにもいかない。


「僕は両親と死別していて、叔父――綾香のお父さんに引き取られた。でも、まぁ……なんて言うか、叔父さんたちとも綾香ともうまくいってないんだ」


 軽く言ったつもりなのに、ふたりの顔が曇ってしまった。

 話題を振っておいてアレだけど、余計な気を遣わせてしまったことを申し訳なく思う。


――ふたりとも優しいなぁ。

  それに引き換え僕ときたら……


 叔父さんたちは生きていてほしいと思うけど、この状況で積極的に助けに行きたいとまでは思わない。

 学校から最寄り駅までバスで20分、そこから電車で3駅。

 モンスターパニックの真っただ中を突っ切ることを考えると現実味がないからね。


「ごめん、悪いこと聞いた」


「気にしないで。それじゃ、第1校舎を見てから体育館でいいかな?」


「「ああ」」


 当面の方針は決まった。

 あれこれ迷うよりも、今は動いている方がずっといい。

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