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終末の鐘が鳴り響く、この空のもとで ~ゲームみたいになった世界で、僕はカードを手に無双……無双は出来てないな?~  作者: 鈴木えんぺら
第2部第1章

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第5話 カードゲームっぽくなってきたかな?

【万象の書】がレベル3に上がった際に新しい機能が追加された。その名も【デッキ構築】だ。普通のカードゲームみたいに40~60枚のカードで構築したデッキを使う能力って言えばわかっていただけるだろうか。

 デッキを使用する状態を『デッキモード』と呼ぶ。このモードで戦う場合の大きなポイントは以下のとおり。


 1.デッキのカードしか使用できない。

 2.初期の手札は6枚、ドローは1ターン(30分)に1枚。

 3.コストゲージのシステムが追加されていて、1ターンに1つずつコスト上限を 

  増やすことができる。最大でデフォルトの2倍まで。

 4.僕の手が片方フリーになる。


 着目すべきは3番のコストゲージだろう。ここに1ターンに1枚、山札からカードを送ることができる。このゲージに置かれたカードの枚数だけ、コストの上限が追加されるのだ。

 他にも色々ルールはあるのだけど、今は割愛しておくね。


『自由にカードを選べるバインダーモードか、ハイコストのカードが使いやすいデッキモードかって違い?』


 この柊さんの感想で概ね合っているんじゃないかな。

 僕の手が片方フリーになる点については『今さら桧川の手が空いてもなぁ』と微妙なお言葉を頂いてしまった。僕もそう思います。

 閑話休題。


「アンデッドを掃討しながら学園に帰る。みんな、行こう!」


「おう!」


 言って地を蹴る篁さん。ロングソードが翻り、ゾンビの首が宙を舞った。一連の動作に躊躇いがないのは、さすがだ。後続のスケルトンを相手にパンチキックで無双を始めた王さんは、ゾンビが気になっているみたいで、どうにも動きがぎこちない。柊さんは街でかっぱらった、もといゲットしたパチンコ(スリングショット)で錬金爆弾を射出し始めた。王さんが嫌がっているゾンビを優先して狙っている模様。

 僕? 僕はねぇ……


――はあぁぁぁ……これだよ、これ!


 アンデッドたちが僕のカードに収まっていく。柊さんが【鑑定】してくれていたからわかってたけど、一体一体はあんまり強くない。

 いいんだよ。強くなくても初めてのカードは大歓迎さ!



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 名 称:ゾンビ

 タイプ:ユニット

 種 族:アンデッド

 属 性:闇

 レベル:-

 ランク:4

 コスト:3

 攻撃力:3

 防御力:5

 魔法力:2

 スキル:なし 

 特殊能力:再生(対象:このユニット)

      ・対象が墓地からフィールドに配置された際、

       対象に下記の効果を付与する。

       【攻撃力:+1】

       【防御力:+1】

       

 装備品:なし


 レアリティ:C


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ゾンビにスケルトン、どちらもランク4でステータスは似たり寄ったり。墓地から蘇生した場合にステータスが向上する特殊能力を持っていた。

 いかにもアンデッドって感じだね。


――ランク4ってのは少し意外だ。


 この手の雑魚って、もっと弱いモンスターな印象があったのに。ランクだけ見るとオーク・ジェネラルやオーガとほとんど同等ってことになる。まさか4んでいるからランク4とかいうダジャレじゃないよね?

【剣術】スキルを持っている分だけスケルトン・ソードマンの方が厄介に見えるけど、実際に戦ってみると腐った肉体がグロくて臭いゾンビの方がメンドクサイ。手甲を装備しているとは言え、王さんにとっては死活問題だ。さっきから顔が引きつりっぱなしだし。

 無理もない。僕だって『素手でゾンビを殴れ』って言われたら、すごく嫌。


「……ゾンビは先輩たちに任せていい?」


「おっけー。僕と柊さんで!」


「あ~ん、ありがと!」


「タクローさま、私は?」


「プリムは偵察お願い。出来るだけ敵とぶつからずに学園に戻れる道を選んで」


「ぷぅ、承りました」


 プリムは『不本意です!』と見せつけるように頬を膨らませはしたものの、自分の役割を見失ったりはしない。僕は彼女のそういうところを信頼している。戦闘能力を持たないサクラが傍にいる以上、不要なリスクは避けたい。

 僕は2枚目のフレイム・アローで篁さんに迫るゾンビを焼いた。言葉にならない呻きを上げて崩れ落ちるゾンビはグロテスクのひと言。うわ~、夢に見そう。


「大丈夫? 歩ける?」


「……はい」


 そっと握ったサクラの手は小さくて温かくて、少し汗ばんでいた。震えているってことは緊張しているってことだと思う。眼前で繰り広げられている戦いに慄いているのか、それとも、ほとんど見ず知らずの人間についていくことに不安があるのか。たぶん両方かな。

 まぁ、僕的にはどうしようもない。最善を選んだつもりだもの。


――それにしても……デッキモード、思ったより使いにくいな?


 30分に1枚しかカードをドローできないから、バインダーモード(これまでの【万象の書】)と比べると、かなり手数が減る。みんなが頑張ってくれている中で、ひとりドローを待つのは精神的にツライ。強みはやっぱりハイコストのカードを使えることなので、現時点ではそっちが要求される局面だけにとどめておくべきかな。


「デッキモードはノーマルプリムの方がよかったか」


「ぷぅ、そんなことを言われましても」


「そうなんだよねぇ」


 ノーマルバージョンのプリムが持つ特殊能力『紅玉の王女の出陣』は、これまでまったく効果を発揮していなくて、てっきりフレーバーテキスト的なものかと思っていたけど……これ、デッキモード用の能力だったみたい。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 紅玉の王女の出陣(対象:このユニットのプレイヤー)

  ・このユニットが戦場に存在する場合、常時発動する。

   戦場に【種族:オークあるいはビースト】が配置されるたびに

   対象は山札からカードを1枚引いてもよい。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 オークかビーストが配置されるたびにカードを1枚ドローできる能力だから、デッキをこのふたつの種族で固めて、ユニットをばら撒きつつ魔法や消耗品を手元に集めるって動かし方がよさそうだ。

 逆に『紅玉の王女のヴァカンス』で全属性のマナを出せる水着プリムはコスト上限が低くなるバインダーモード向き……完全に逆です、本当にありがとうございました。

 う~ん、今回はコスト上限を重視し過ぎた。失態、失態。


――少しずつ実戦で試していくしかないか。


 実戦で試すって、みんなに命を懸けさせながら試験運用するってことだ。かなり罪悪感ある。僕は自分のスキルのことを凄く強いと思ってるし、とてもとても感謝している。

 ただ、それはそれとして……【万象の書】は、ときどきこういう嫌な選択を強いてくるんだよね。閉口。

 せっかく追加されたモードってことは何か意味はあると思う。『使いにくい、以上』ってことはないはずだ。今後必要になるかもしれないし、デッキは使い込んでなんぼ。みんなに相談して練習させてもらわなきゃ。

 問題はカードゲームをやらない人たちの理解が得られるかどうかだよ。

 はぁ……説明とか説得とか、僕が苦手なや~つ。

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