第5話 初めてのパーティ!
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名 前:篁 亜衣
種 族:人間
性 別:女
レベル:2
H P:40/40
M P:15/15
状 態:正常
攻撃力:4
防御力:4
魔法力:2
称 号:なし
スキル:【剣術】レベル1
【体術】レベル1
エクストラスキル:なし
装備品:木の棒
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僕とは少し違っている。
スキルが2つあって、エクストラスキルがない。
――戦う力を手に入れたのは、僕だけじゃないんだ。
ホッとしたような、ちょっと残念なような。
スキルはそれぞれの項目を長押ししたら、詳細な説明テキストが出てきた。
目で問いかけてくる篁さんには『普通に戦っていれば問題ない』と伝えた。
【剣術】はそのまんま。剣を扱うときに能力補正がかかる。
【体術】は身体の動き全般に補正がかかる。
前衛、特にアタッカーとしてうまく噛み合っているスキル構成だと思う。
僕だけが篁さんのことを一方的に知っているのは不公平に感じたので、【万象の書】についても一応説明した。
「……カードを集めると強くなるということか?」
「そんな感じ」
案の定、腑に落ちない顔をされた。
ステータスオープンを知らないノットオタクな篁さんが、カードゲームに詳しいとは思ってなかった。
「わかった。いや、よくわかっていないが……桧川は色々できそうだということがわかっていたらよさそうだな」
それでは、これを渡しておこう。
篁さんが差し出してきた手には、いくつもの魔石が握られていた。
ひとつやふたつじゃない。僕が今まで集めてきたのと、ほとんど同じくらいある。思わず目の前のきれいな手と顔の間で何度も視線を往復させてしまった。
「これがあればカードを買えるのだろう?」
「いいの?」
「私が持っていても使い道がない。桧川が使ってくれ」
「……ありがとう」
本当にいいのかな?
ネトゲだと報酬の分配はトラブルになりやすいんだ。
篁さんに魔石の使い道がないと言うのは、そりゃそのとおりなんだろうけど……
「構わん。桧川が強くなってくれれば私も助かる」
「それはまぁ、そうかも?」
同じパーティで戦うとなれば、そういうことになる……篁さんはこのパーティを一時的なものとして考えていないということだろうか?
今日までまったく縁もゆかりもなかった僕と一緒で大丈夫?
まぁ、いいか。
「じゃ、カード買ってみるね」
「ああ」
魔石を受け取ってバインダーに収納すると200PPを超えた。2枚買える。
「とりあえず、全種類試してみるか」
さっきはユニットを引いたので、後は魔法かアイテムか地形だ。
少し迷って……魔法とアイテムを買うことにする。
カードを買うこの瞬間は、ワクワクしてしまう。
業だね、これは。不謹慎にもほどがある。
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名 称:ハイ・ヒール
タイプ:魔法【神聖魔法】
属 性:光
ランク:3
コスト:3
効 果:ハイ・ヒール(対象:ユニット1体)
・重傷を治癒する。
レアリティ:SR
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名 称:魔法のロープ
タイプ:アイテム(消耗品)
ランク:1
コスト:1
特殊能力:魔法のロープ(対象:ユニット1体)
・対象が【ランクとレベルの合計値:5以下】の場合、
行動完了させる。
レアリティ:R
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「どうだった? いいカードだったか?」
「う~ん、悪くはないと思う」
期待に目を輝かせる篁さんには申し訳ないが、なんとも反応に困る引きだった。
治癒魔法は貴重だけど、コスト3ってのが難しい。ここに来るまでの間に僕もレベル2に上がっているので使えることは使えるのだが、【万象の書】はレベル1のまま。コスト上限は3だ。これじゃ、リュンクスを戻さないと使えない。カードは一度戻すとクールタイムが終わるまで再起動できなくなる。肩に乗っかっている白猫が持つ【気配察知】と【気配遮断】の性能を考えると、今すぐ使いたい魔法とは言い難い。
――そもそも、この『ユニット1体』ってのは、僕らも含まれるんだろうか?
わからない。
試そうにも僕も篁さんも全然ケガしてないし。
含まれているにしても、一回使うと3日使えないことを考慮すると……何か、いい検証手段がないかなぁ。
――それよりも、こっちだ。
魔法のロープの方は普通に役に立ちそうだ。『行動完了させる』は『行動不能にする』という意味だった。シンプルにロープでターゲットを縛り付けるんだろう。
何よりコストが1だから、今すぐ使えるのがいい。
レアリティが低い方がありがたいなんて、つくづくカードゲームあるあるだ。
「……」
「桧川?」
「な、何でもないです」
「そうか? ならいいが……」
今ここで篁さんに使ったらどうなるんだろうなんて、口が裂けても言えない。
「そうか。まぁ、気を落とすな。それで、これからどうする? 何か考えはあるのか?」
「僕はレベルを上げながら体育館を目指すつもりだった」
「体育館?」
そう、体育館だ。
戦っているうちに、大切なことに気が付いたんだ。
「うん。あそこには災害用の備蓄食料があるから」
人間って水と食料がないと死んでしまう。
どれだけレベルを上げても、その辺は変わらないはずだ。
この学校は、この街の災害避難施設に指定されている。かなりの備蓄があるに違いない。
「そうだったか?」
「……入学したときのオリテで先生が言ってたよ」
「記憶にないな。たぶん寝てた」
「篁さん……」
残念キャラなのか?
見た目は凛とした美少女なのに。
声には出さなかったけれど、篁さんの眉間にしわが寄った。
ヤバいヤバい。せっかくの生き残り同士、こんなしょうもないことで揉めるなんてバカバカしい。
「篁さんは?」
「私は何も考えていなかったのだが……」
「だが?」
わずかな逡巡ののち、篁さんは『ふぅ』と小さく息を吐いた。
物憂げな顔で視線を動かした。
たしか、あっちは……
「……第3校舎からここまで、ほとんど一直線に来てしまった。こうして桧川と出会うことができて思ったんだ。引き返して……生き残りがいたら助けたいとな」
遅くなったが、お互いに生き残ることができてよかったな。
篁さんはそう続けて、僕の方を見てくる。
一緒に来てくれ。その眼差しが雄弁に物語っていた。
――どうする?
ここで僕が体育館行きを主張したら、篁さんはひとりで第3校舎に戻るだろう。
ステータスを見た感じ、たぶん大丈夫とは思うけど……唐突にクソ強ネームドモンスターがエントリーとか、普通にありそう。
篁さんがモンスターにやられるところなんて、想像するだけで胸がムカムカしてくる。
――それだけじゃない。
強力な前衛は、スキルで手が塞がる僕にとって貴重な戦力だ。
単純に数値だけで比較してもゴブリンとは比較にならないほど篁さんは強いのだ。ここで別れるのは惜しい。
食料か、戦力か……迷うところじゃないな。
「……わかった。僕も一緒に行くよ」
「いいのか?」
「備蓄食料は逃げないしね。魔石も貰っちゃったし」
「そんなつもりではなかったが、助かる。正直、ひとりでは不安だったんだ」
篁さんが、ほころぶような笑顔を浮かべた。
不覚にもドキッと胸が高鳴った。
チョロすぎるだろ、僕。
――備蓄食料は……まぁ、いいか。
モンスターに奪われるにせよ、他の生き残りに先を越されるにせよ、ひとつも残らないという事態にはならないはずだ。それよりも篁さんの方が重要だし、第3校舎に生き残りがいるなら助けてあげたい。
ここに転がっている、物言わぬ死体のようになる前に。




