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終末の鐘が鳴り響く、この空のもとで ~ゲームみたいになった世界で、僕はカードを手に無双……無双は出来てないな?~  作者: 鈴木えんぺら
第1部第4章

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第3話 仲良くお話などしてみた!

 レベルアップを手伝った後、柊さんたちも合流して晩ごはんを一緒に食べることにした。

『舞坂 麻衣』さんと『守屋 斗真』くん。ふたりは学園内でも有名なカップル(本人たちは否定する)だ。

 舞坂さんは金髪ドリルロールのお嬢さま。いろいろな意味で近寄りがたい印象があったけど、普通に話せる人だった。ちなみに今はドリルじゃない。髪をセットするのって大変だろうしね、この状況だと。女の子は大変だ。

『戦えるようにならなければ生き残れない』って守屋くんを説得したらしい。

 見た目でお嬢さまだと思って舐めてました。どこの誰とは言わないけど、舞坂さんの爪の垢を呑ませてやりたいね。

 守屋くんは目立たないよう振舞っているけど、目鼻立ちはかなり整っていて隠れファンが多い。舞坂さんがいなかったら、すごくモテると思う。


『また女子』


『先輩さぁ……』


 ふたりとも目が冷たいの、なんでさ……

 舞坂さんは守屋くんとラブラブなんだから、僕が出る幕なくないですかね!?


「それで、舞坂のスキルはどんな感じなんだ?」


「わたくしのスキルは【舞踏】と【鑑定】ですわ」


「やっと私以外にも【鑑定】持ちが来た!」


 猛烈に食いつく柊さんに、舞坂さんは戸惑いを隠せない模様。

 柊さんの気持ちはわかる。今まで唯一の【鑑定】持ちとして朝から晩まで引っ張りだこだったからね。仕事を手分けするって、とっても大切。

 彼女を一番引っ張りまわしている僕が言うんだから間違いない。


「【舞踏】かぁ」


「いかがされました、桧川さん?」


「あ、ごめん。初めて聞くスキルだから、どんなのかなって」


「ふふ、こちらこそ失礼しました。そうですわね……」


【舞踏】はパーティ全体に特殊な効果を付与するスキルとのこと。スキルレベル1の状態ではHPかMPのいずれかを選んで徐々に回復できるらしい。

 発動条件は一定時間踊り続けること。一之瀬さんの【演奏】と似てる。

 つまり、すごく大変そう……


「もしよろしければ、わたくしたちがどのように戦っていけばよいのか、アドバイスなどいただけませんでしょうか?」


「そうだねぇ……まず、守屋くんから」


「ああ、頼む」


「【射撃】はレベルを2に上げると【矢玉作成】ってスキルが派生する。これが使えるようになると残弾数の融通が利くようになるよ。でも、今ある7発でレベルが上がるかって言うと……たぶん難しい」


 チーム椎名の参謀こと矢守さんに【射撃】スキルについて聞いてみた。矢守さんはゲームとかオタク知識に詳しくて、なおかつ、それを隠そうとしない運動部員というレア属性の持ち主だ。


『【射撃】には武器種の区別がないので、どっちでもイケると思うッス』


 だってさ。

『だったら、とりあえず弓矢でスキル上げすればいいんじゃないの?』って話になりそうなものだけど……これがダメ。弓道部もアーチェリー部も、部室をオークにぶっ壊されていて新しく武器を補充することができないんだ。

 じゃあ、守屋くんの【射撃】はレベルを上げられない死にスキルかって言うと、それは違うんだなぁ。


「僕のカードに【射撃】スキルを付与する装備品があるから、これで【射撃】のレベルを底上げして、【矢玉作成】を使いながら守屋くん自身のスキルを2に上げる。【矢玉作成】を自前で使えるようになったら、だいぶん楽になると思う」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 名 称:S・バスター

 タイプ:アイテム(装備品)

 ランク:2

 コスト:1

 攻撃力:0

 防御力:0

 魔法力:0

 スキル:【射撃】レベル1

 特殊能力:スプラッシュ・バスター!(対象:ユニット1体)

      ・対象に【津波:このユニットの攻撃力】ダメージを与える。


 レアリティ:SR


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 S・バスター、正式名称は『スプラッシュ・バスター』で、要するに水鉄砲だ。アサルトライフルみたいな形をしていて、背中にタンクを背負う本格的なやつ。

 ファンタジー感がない?

 細かいことはいいんだよ!

 すでにスキルを持っている人間が同じスキルを有する装備品を身に着けた場合、適用されるスキルは両方の合計の値になる。これは『銘刀スイカ割り』で確認済み。【射撃】は人気がないので、このカードは今すぐにでも貸し出せる。


「【格闘術】の方は、王さんか護道くんに聞いてほしい。こっちはいいカードがないんだ。【格闘術】と【射撃】で、どういう風に戦うかは……なんか、昔の映画で見たことがあるような?」


「タクローさま、『エイガ』とはいったい?」


「ん~、劇みたいなものだよ」


「はぁ、演劇ですか」


 プリムプラムは要領を得ない顔をしている。映画って言ってもわからないよね。見せてあげたい気持ちはある。異世界の住人がこの世界の文化に触れたらどういう反応を見せるか、興味あります。でも……もう、この世界で映画を見る方法はないと思う。こればっかりはどうしようもない。


「あったね。映画は無理でもマンガはどう?」


「マンガかぁ……」


 柊さんは心当たりがあるのかな?

 僕は割とオタクのつもりだったけど、とっさにタイトルが出てこないぞ。


「【射撃】のアドバイス、助かる。これからも是非とも力を貸してほしい」


「こちらこそ。それで、舞坂さんの方は……【舞踏】がどれくらい忙しいのかによりそう。気になったのは、ひたすら踊ってサポートする戦い方だとHPとMPを余らせるのがもったいないかなって」


「それは桧川も同じでしょ」


「そうなのですか?」


「ぼ、僕は【リユース】がありますし?」


 だから僕に『ビビッド・サマー』を着せようとするの、やめてくれないかなぁ。

『この水着、女性専用とは書いてないな』って篁さんにツッコまれて心臓が止まるかと思ったよ。カードを見たときから気づいてたけど、黙ってたのに!


――そりゃ、みんなの言うことにも一理あるよ。


 むしろ理屈の上ではそれが一番合理的だってわかってるんだけど、布面積極小の女性用水着を着るとか完全に猥褻物チン列罪もとい猥褻物陳列罪で警察のお世話になるやつじゃん。

 え?

 警察なんて、もうどうでもいいだろって?

 そういう問題じゃないんですぅ!


「【精霊魔法(水)】を覚えられるカードと、【剣術】を覚えられるカードと両方あるんだけど……水の魔法の方は予約が詰まってるんだよね」


『ビビッド・サマー』は、今すぐには貸し出せない。

 あれから何度かカードを引いているけど、2枚目が出る気配はない。排出率0.01%は伊達じゃない(吐血)。


「予約ですか……どれくらいかかりそうですか?」


「わからない。今のところ会長と弓道部の弓削さんのふたりだね。篁さんは一日で魔法が使えるようになったのに、会長は時間がかかってる」


 だから、どれくらいかかるかという問いには答えられない。

 人それぞれにスキルとの相性みたいなものがあるんじゃないかってのが、柊さんの仮説だ。直感的に正しい感じはする。でも、相性説だとゴリゴリの前衛な篁さんが簡単に魔法を習得できた理由に説明がつかないのがネックだね。

 スキルの後付け自体が始めたばかりだから、この辺はこれから事例を積み上げていくしかなさそうだ。


「あと、スキルを付与できる武器を独占するのは避けてほしいから、どっちかだけでお願い」


「そうですね、ひとり占めは反感を買いますわね。ちなみに、桧川さんのおススメは?」


「……魔法はやめといた方がいいよ」


「なぜですの?」


「デザインがエグイ」


 柊さんに目で促されたので、『ビビッド・サマー』のカードを見せてあげた。

 顔を真っ赤に染めて『これはダメです、お嬢さま!』って狼狽える守屋くんに反して、舞坂さんは目をキラキラさせている。

 あれ、この流れって……


「こちらの水着にしますわ」


「マジかよ」


「ええ。わたくし、容姿には少々自信がございましてよ」


「……そーゆー問題なんだ、高等部って凄いのね」


「違うから。篁と舞坂がおかしいだけだから」


『ビビッド・サマー』を断固拒否した柊さん(戦闘中にあんまりMP消費しない勢)が、感心する王さんにツッコんでいる。

 舞坂さんがチラッと守屋くんに視線を送っていた。守屋くんは気づいてない。

 なるほどねぇ、察した。


「まぁ、僕も魔法の方がおススメ」


「桧川ぁ」


「先輩……」


「タクローさま、それはあまりにも」


「違う、これは真面目な話だから。魔法で水が出せるって、サバイバルだと超強いでしょ」


 ここには備蓄があって、ネット通販スキルもある。強力なスキルを持っている仲間もいる。

 でも……万が一かもしれないけれど、考えたくもないけれど、ここを放棄する事態に陥る可能性を否定しきれないんだ。ひとりで生きていかなきゃならないことになるかもしれない。人間が生きるためには水が必要だ。

 舞坂さんがうんうんと頷いている。本当は守屋くんに見てほしいんでしょ?


「こんな感じかな」


「色々とありがとうございます。わたくしたちで協力できることがあれば何でもおっしゃってくださいな」


「なんでも? 今なんでもって言った?」


「桧川、死ね」


「あのね、柊さん。僕はそんなしょうもないボケはかまさないから」


「どーだか」


 フンとそっぽを向く柊さん。そのほっぺをムニムニとしてやりたい気持ちをグッと抑えて、僕は舞坂さんと向かい合った。


「はぁ……まぁ、いいや。それで、さっそく悪いんだけど……ちょっと、ふたりに聞きたいことがあるんだよね」


 舞坂さんたちはピクリと身体を震わせ、居住まいを正した。

 さっきまでの和やかなほわほわ感が消えて、空気がピンと張りつめていくのを感じる。


「……伺いますわ。なんでしょうか?」


 舞坂さんが僕を見つめてくる。

 最初に声をかけられたときは、僕に怯えているように感じられた。

 今は違う。まっすぐに向けられた蒼い瞳は、ここまで言葉を交わした彼女の印象とピッタリ一致している。どこまでも真摯な眼差しは、心地よくさえあった。

 これは――期待できる。


「なんでレベル0の人たちってレベルを上げようとしないの?」


 レベル0側の本音が知りたいんだ。

 生き残りのレベルアップ計画が全然進んでいないからね。



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