第2話 僕のスキルはカードゲーム、らしい。
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名 前:桧川 拓郎
種 族:人間
性 別:男
レベル:1
H P:10/10
M P:30/30
状 態:正常
攻撃力:1
防御力:1
魔法力:3
称 号:なし
スキル:なし
エクストラスキル:【万象の書】レベル1
・【カード購入】
装備品:なし
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「ステータスは……まぁ、いいか」
自分の運動神経を鑑みれば、攻撃力と防御力の1には納得。
いや、納得したくないけど。これ、最低の値だろ。
そこはいい。それよりも――
「問題は、この【万象の書】って奴だ」
【カード購入】
ここが目に入ったときから期待で心臓がドキドキしている。
そっと【万象の書】の文字に触れると、説明テキストが表示された。スクロールさせながら読み進める。
――落ち着け。
長考します。
ここはじっくり時間を使うべきタイミングだ。期待どおりであろうがなかろうが、このスキルをうまく使いこなすことは、生き残るための必須条件に違いない。
「……出ろ」
呟くと、左手に一冊の書物が出現した。
黒地に金と銀の細緻な装飾が施された魔導書っぽい書物。表紙をめくると、裏はタブレットのような液晶で、ページの方には3×3のポケットがある。
ファンタジーなのかSFなのかハッキリしてほしいなぁ。
まぁ、それはともかく――
「やった……カードゲームだよ、これ」
予想どおり!
口の端がニヤリと歪んだ。
僕はカードゲーマーだ。カードと言ってもトランプとかUNOじゃない。いわゆるTCGのほう。
いくつものゲームで両親と一緒に遊んだ記憶が脳裏に甦った。特に父はその道では名を知られたプレイヤーで、そんな父の遺伝子を受け継いだ僕もかなりハマっていた。ある意味英才教育と言ってもいい。
目の奥がツンとなって、小さく頭を振った。
――今は思い出に浸っている場合じゃない。
【万象の書】はカードゲームみたいなスキルだ。
モンスターを呼び出したり魔法を使ったりと色々なことができるっぽい。
それぞれのカードにはランクとコストが設定されていて、一度使ったカードは『ランク×日数』が経過すれば再び使用できるようになる。
「カード、何度でも使い回せるのはいいね」
ランクが高いカードほど使いどころが難しくなるってのは引っかかるけど。
強いカードを引けばいいってだけじゃないのはカードゲームらしいか。
「……」
頭を上げた。
薄いドアの向こう――トイレの外からは、まだドタバタと足音が聞こえてくる。パニックは収まってない。焦るな。
――モンスター、ウヨウヨいるんだろうな。
ちょっとルールを緩めてほしい気がしなくもない。
「で、肝心のカードはどうやって手に入れるかって言うと……ここだ」
カードは1枚100PP、1000PP払えば10+1枚購入できる。まとめて買えばちょっとお得。
「ソシャゲかよ」
つい笑みが漏れる。
『PPってなんぞ?』と首をかしげていると、さっきゴブリンを倒した後に転がっていた石が勝手に【万象の書】に吸い込まれて液晶部分に10PPと表示された。なるほど、そういうことね。
モンスターを倒してPPを稼ぎ、カードを買って手札を増やす。
「……って、待て待て待て待て」
倒したモンスターをカードにすることもできるじゃないか!
ん?
不具合か?
――違うな。
ゴブリンを倒してレベルが1になった。スキルが手に入った。
倒す前にはスキルがなかったからダメだった。
おそらく、そういうことだろう。
世界そのものがバグってるみたいな状況だ。確認のしようがないことをグダグダ考えていても仕方がない。
「……まぁ、一日一枚だけ無料で貰えるみたいだし、ゴブリン一枚ぐらい許してやろうじゃないか、うん」
そう、一日一枚無料でカードをゲットできるんだ。これは美味しい。
僕のスキル、なかなかやるじゃないの。
それで――
『光属性ユニットピックアップ』
『光属性魔法ピックアップ』
『アイテムピックアップ』
『地形ピックアップ』
液晶には四種類のバナーが表示されている。『なんで光属性推し?』と思ったが、これは曜日ごとに変化するようだ。今日は金曜日なので光属性。『あと半日我慢すれば休みだったのになぁ』とため息をひとつ。
「アホか、僕は」
そんなこと言っている場合じゃない。
今はどのカードをゲットするか、それが問題だ。
冗談抜きで生死にかかわる、ここが文字どおりの分水嶺だ。
ドン!
「……ッ!」
トイレの外からひと際大きな音が響いてきた。
重くて鈍くて、不吉な感じの音。
そして――沈黙。
パニックはいつの間にか収まっていた。たぶん、あまりありがたくない理由で。
「……」
廊下で何かが起きているのに、僕はずっと個室に籠って説明書を読んでいる。
間違ってない。僕は間違ってない。この降って湧いた特殊なスキルを理解することは、僕にとって最善の生存戦略なんだ。
「……って、ちょっと待て」
テキストを読み進めて、絶句。
一度に起動できるカードのコスト上限は僕自身のレベルとスキルレベルの合計値まで。今の僕だとコスト上限は2だから、コスト3以上のカードを引いても使えない!
そりゃいきなり高コストのカードが使えたらゲームバランスおかしいけど!
ふぅ~、ちゃんとテキスト読んでよかった!
「……ユニット一択だね」
【万象の書】は常にバインダーを手にしていないとカードの効果が消失する。左手にバインダーを、右手にカードを構えると両手が塞がってしまう。僕の代わりに戦ってくれる誰か、すなわちユニットが必要だ。
魔法とかアイテムは多分一回使ったら終わりだ。ランク1のカードでも再び使えるようになるまでクールタイムが1日必要。敵が1匹しかいないならそれでいいけど、どう考えてもそういう状況じゃない。
地形は……配置したところから動かせないよなぁ。待ち伏せするならアリか?
――でも、トイレに籠ってる今とたいして変わらないんだよなぁ。
何よりも――僕の経験が言っている。
ユニットを戦わせるタイプのカードゲームはユニットのカードが一番多いはず。ゆえに、低コストのカードもユニットが一番多いはず。
コスト3以上のカードを引いたら、死んでしまいます!
「じゃ、そういうことで」
ポチッとな。
『光属性ユニットピックアップ』のバナーを押した。
『カードを購入しますか? (YES/NO)』のウィンドウの『YES』をタップすると……液晶から光が飛び出してカードの形に変化した。
光は銀色、つまりSRだ。
悪くない、はず――金色とか虹色がよかったとは言うまい。
――お願い、コスト2以下来い!
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名 称:リュンクス
タイプ:ユニット
種 族:ビースト/スピリット
属 性:光
レベル:-
ランク:1
コスト:1
攻撃力:0
防御力:1
魔法力:1
スキル:【気配察知】レベル1
【気配遮断】レベル1
特殊能力:なし
装備品:なし
レアリティ:SR
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「キタ―――――! え、あれ……攻撃力0!?」
僕より弱いじゃないか。
……って言うか、1より低い数値ってあるんだ。
う~ん、SRなのにこの低いステータス……つまりこのユニットの価値はスキルにある!
――よね? よね?
じっとカードを見つめた。
描かれているのは煌めく金色の瞳が印象的な白猫だった。背景は森。誰が描いたのかは知らないが、凄く好きな感じのイラストだ。僕はカードを手に取って――
「リュンクス、起動!」
声とともにカードが光を放つ。
その光が消えると、僕の膝の上に白い猫が一匹座っていた。
カードに描かれていたのと寸分たがわぬ姿をした猫は、僕を見上げて『んな~』と鳴いた。
「猫だなぁ、普通の」
どこからどう見ても猫。
可愛らしい容姿に癒されはするけれど、今欲しいのは癒しじゃない。
「……だ、大丈夫……なのか、これ?」
お、教えて有識者!




