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終末の鐘が鳴り響く、この空のもとで ~ゲームみたいになった世界で、僕はカードを手に無双……無双は出来てないな?~  作者: 鈴木えんぺら
第1部第1章

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2/50

第2話 僕のスキルはカードゲーム、らしい。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 名 前:桧川(ひかわ) 拓郎(たくろう)

 種 族:人間

 性 別:男

 レベル:1

 H P:10/10

 M P:30/30

 状 態:正常

 攻撃力:1

 防御力:1

 魔法力:3

 称 号:なし

 スキル:なし

 エクストラスキル:【万象の書】レベル1

            ・【カード購入】


 装備品:なし


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「ステータスは……まぁ、いいか」


 自分の運動神経(カス)を鑑みれば、攻撃力と防御力の1には納得。

 いや、納得したくないけど。これ、最低の値だろ。

 そこはいい。それよりも――


「問題は、この【万象の書】って奴だ」


【カード購入】

 ここが目に入ったときから期待で心臓がドキドキしている。

 そっと【万象の書】の文字に触れると、説明テキストが表示された。スクロールさせながら読み進める。


――落ち着け。


 長考します。

 ここはじっくり時間を使うべきタイミングだ。期待どおりであろうがなかろうが、このスキルをうまく使いこなすことは、生き残るための必須条件に違いない。


「……出ろ」


 呟くと、左手に一冊の書物が出現した。

 黒地に金と銀の細緻な装飾が施された魔導書っぽい書物。表紙をめくると、裏はタブレットのような液晶で、ページの方には3×3のポケットがある。

 ファンタジーなのかSFなのかハッキリしてほしいなぁ。

 まぁ、それはともかく――


「やった……カードゲームだよ、これ」


 予想どおり!

 口の端がニヤリと歪んだ。

 僕はカードゲーマーだ。カードと言ってもトランプとかUNOじゃない。いわゆるTCG(トレーディングカードゲーム)のほう。

 いくつものゲームで両親と一緒に遊んだ記憶が脳裏に甦った。特に父はその道では名を知られたプレイヤーで、そんな父の遺伝子を受け継いだ僕もかなりハマっていた。ある意味英才教育と言ってもいい。

 目の奥がツンとなって、小さく頭を振った。


――今は思い出に浸っている場合じゃない。


【万象の書】はカードゲームみたいなスキルだ。

 モンスターを呼び出したり魔法を使ったりと色々なことができるっぽい。

 それぞれのカードにはランクとコストが設定されていて、一度使ったカードは『ランク×日数』が経過すれば再び使用できるようになる。


「カード、何度でも使い回せるのはいいね」


 ランクが高いカードほど使いどころが難しくなるってのは引っかかるけど。

 強いカードを引けばいいってだけじゃないのはカードゲームらしいか。


「……」


 頭を上げた。

 薄いドアの向こう――トイレの外からは、まだドタバタと足音が聞こえてくる。パニックは収まってない。焦るな。


――モンスター、ウヨウヨいるんだろうな。


 ちょっとルールを緩めてほしい気がしなくもない。


「で、肝心のカードはどうやって手に入れるかって言うと……ここだ」


 カードは1枚100PP、1000PP払えば10+1枚購入できる。まとめて買えばちょっとお得。


「ソシャゲかよ」


 つい笑みが漏れる。

『PPってなんぞ?』と首をかしげていると、さっきゴブリンを倒した後に転がっていた石が勝手に【万象の書】に吸い込まれて液晶部分に10PPと表示された。なるほど、そういうことね。

 モンスターを倒してPPを稼ぎ、カードを買って手札を増やす。


「……って、待て待て待て待て」


 倒したモンスターをカードにすることもできるじゃないか!

 ん?

 不具合か?


――違うな。


 ゴブリンを倒してレベルが1になった。スキルが手に入った。

 倒す前にはスキルがなかったからダメだった。

 おそらく、そういうことだろう。

 世界そのものがバグってるみたいな状況だ。確認のしようがないことをグダグダ考えていても仕方がない。


「……まぁ、一日一枚だけ無料で貰えるみたいだし、ゴブリン一枚ぐらい許してやろうじゃないか、うん」


 そう、一日一枚無料でカードをゲットできるんだ。これは美味しい。

 僕のスキル、なかなかやるじゃないの。

 それで――


『光属性ユニットピックアップ』

『光属性魔法ピックアップ』

『アイテムピックアップ』

『地形ピックアップ』


 液晶には四種類のバナーが表示されている。『なんで光属性推し?』と思ったが、これは曜日ごとに変化するようだ。今日は金曜日なので光属性。『あと半日我慢すれば休みだったのになぁ』とため息をひとつ。


「アホか、僕は」


 そんなこと言っている場合じゃない。

 今はどのカードをゲットするか、それが問題だ。

 冗談抜きで生死にかかわる、ここが文字どおりの分水嶺だ。


 ドン!


「……ッ!」


 トイレの外からひと際大きな音が響いてきた。

 重くて鈍くて、不吉な感じの音。

 そして――沈黙。

 パニックはいつの間にか収まっていた。たぶん、あまりありがたくない理由で。


「……」


 廊下で何かが起きているのに、僕はずっと個室に籠って説明書を読んでいる。

 間違ってない。僕は間違ってない。この降って湧いた特殊なスキルを理解することは、僕にとって最善の生存戦略なんだ。


「……って、ちょっと待て」


 テキストを読み進めて、絶句。

 一度に起動できるカードのコスト上限は僕自身のレベルとスキルレベルの合計値まで。今の僕だとコスト上限は2だから、コスト3以上のカードを引いても使えない!

 そりゃいきなり高コストのカードが使えたらゲームバランスおかしいけど!

 ふぅ~、ちゃんとテキスト読んでよかった!


「……ユニット一択だね」


【万象の書】は常にバインダーを手にしていないとカードの効果が消失する。左手にバインダーを、右手にカードを構えると両手が塞がってしまう。僕の代わりに戦ってくれる誰か、すなわちユニットが必要だ。

 魔法とかアイテムは多分一回使ったら終わりだ。ランク1のカードでも再び使えるようになるまでクールタイムが1日必要。敵が1匹しかいないならそれでいいけど、どう考えてもそういう状況じゃない。

 地形は……配置したところから動かせないよなぁ。待ち伏せするならアリか?


――でも、トイレに籠ってる今とたいして変わらないんだよなぁ。


 何よりも――僕の経験が言っている。

 ユニットを戦わせるタイプのカードゲームはユニットのカードが一番多いはず。ゆえに、低コストのカードもユニットが一番多いはず。

 コスト3以上のカードを引いたら、死んでしまいます!


「じゃ、そういうことで」


 ポチッとな。

『光属性ユニットピックアップ』のバナーを押した。

『カードを購入しますか? (YES/NO)』のウィンドウの『YES』をタップすると……液晶から光が飛び出してカードの形に変化した。

 光は銀色、つまりSRだ。

 悪くない、はず――金色とか虹色がよかったとは言うまい。


――お願い、コスト2以下来い!



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 名 称:リュンクス

 タイプ:ユニット

 種 族:ビースト/スピリット

 属 性:光

 レベル:-

 ランク:1

 コスト:1

 攻撃力:0

 防御力:1

 魔法力:1

 スキル:【気配察知】レベル1

     【気配遮断】レベル1

 特殊能力:なし

 装備品:なし 


 レアリティ:SR


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「キタ―――――! え、あれ……攻撃力0!?」


 僕より弱いじゃないか。

 ……って言うか、1より低い数値ってあるんだ。

 う~ん、SRなのにこの低いステータス……つまりこのユニットの価値はスキルにある!


――よね? よね?


 じっとカードを見つめた。

 描かれているのは煌めく金色の瞳が印象的な白猫だった。背景は森。誰が描いたのかは知らないが、凄く好きな感じのイラストだ。僕はカードを手に取って――


「リュンクス、起動!」


 声とともにカードが光を放つ。

 その光が消えると、僕の膝の上に白い猫が一匹座っていた。

 カードに描かれていたのと寸分たがわぬ姿をした猫は、僕を見上げて『んな~』と鳴いた。


「猫だなぁ、普通の」


 どこからどう見ても猫。

 可愛らしい容姿に癒されはするけれど、今欲しいのは癒しじゃない。


「……だ、大丈夫……なのか、これ?」


 お、教えて有識者!


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― 新着の感想 ―
一日一枚無料、がセリフの中で急に出てきた感じがあります。そのまえの購入価格の説明のところあたりでコメントしておいたほうがいいのではないでしょうか。
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