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終末の鐘が鳴り響く、この空のもとで ~ゲームみたいになった世界で、僕はカードを手に無双……無双は出来てないな?~  作者: 鈴木えんぺら
第1部第2章

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第4話 森を抜けて

 高等部と中等部の間には森があって、道があって……誰からと言うこともなく、その入り口の前で足が止まった。

 さっきからリュンクスが頬に猫パンチしてくる。

【気配察知】に何か引っかかったのだと思った僕は周囲を見回してみたものの、ゴブリンもオークもいなかった。

 つまり――


「森に何かいるな?」


「モンスターだろうね」


「他に考えられねぇだろ」


 護道くんが吐き捨てて、みんなで頷いた。

 森は鬱蒼と木々が生い茂っていて視界が悪い。モンスターらしき姿は見当たらないけれど……何かいることは間違いない。リュンクスを信じるよ。


――森のモンスター……エルフとか?


 エルフは人間枠?

 それともモンスター枠?

 エルフだったら仲間になってくれないかなぁ。


――いや、待て。


 希望的観測は禁物だ。

 リュンクスの反応を見るに敵対的な存在と考える方が無難だ。


「先頭は篁さん、その後を僕、柊さん、椎名さん。一番後ろを護道くんでどうかな?」


「このメンバーだったら、そのフォーメーションよね」


 うんうん頷く椎名さん。

 僕は聞き忘れていたことを確認する。


「椎名さん、【鷹の目】って使いながら動けたりするの?」


「……できるようになるはずって矢守が言ってたけど、まだ慣れてないの」


「了解。僕らの目的は中等部だから、ここは一気に駆け抜けよう」


 指示を出しているのは僕だ。

『有名人だらけのこのメンツで、なんで僕が?』って体育館を出てから何度か問いかけてみたけれど、みんな『お前が言い出しっぺだろ』の一点張りだった。言い争っている時間がもったいないから、流れで僕がリーダーをやることになって現在に至る。


――今のところ、何の問題も起きてないな。


 空を見上げると――まだ、かなり明るかった。

 日が暮れるまでには時間があるにしても、モタモタしているほど余裕があるわけでもない。

 覚悟を決めて通路に足を踏み入れると――


「せいッ!」


 篁さんがいきなり長剣を一閃。

 なにかが地面に落ちる音がした。チラリと目をやると、真っぷたつにされた矢だった。短めの矢だけど、矢尻が鋭い光を放っている。


「森から撃ってきた!?」


 奇襲?

 リュンクスの【気配遮断】が効いてない?

 疑問を浮かべた僕の前方、頭上から飛びかかってくる小さな影がふたつ……いや、3つ。どれも小さい。ゴブリンじゃない。


「邪魔だ!」


 篁さんが剣を振るう。

 倒されたモンスターは光の粒子となって僕のカードに封印されていった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 名 称:コボルド・レンジャー

 タイプ:ユニット

 種 族:コボルド

 属 性:土

 レベル:1

 ランク:1

 コスト:1

 攻撃力:1

 防御力:1

 魔法力:1

 スキル:【気配察知】レベル1

 特殊能力:なし

 装備品:なし


 レアリティ:N


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「【気配察知】を持ってる! 【気配遮断】が相殺されてるんだ!」


「そういうことか!」


 コボルド。

 犬の頭を持った二足歩行のモンスター。

 ゴブリンやオークに負けず劣らずファンタジー定番の雑魚だけど、よりにもよって【気配察知】を持っているなんて!

 正反対のスキル同士が打ち消し合って、僕らは丸見えになっている模様。おそらく【射撃】を持った個体もいるに違いない。ステータス的には矢を食らっても耐えられそうな気がするけれど、ワザワザ試したいとは思わない。


「こっちからも撃ち返してやるわ!」


「椎名さん待って! コボルドは無視して通過優先で! ここで矢を使ったら回収できない!」


「もう、わかったわよ!」


 納得してくれてよかった。

 椎名さんは貴重な遠距離攻撃要員だけど、矢の数には限りがある。

 僕らの目的が中等部の救援である以上、ここでの撃ち合いは無意味な消耗にしかならない。

 矢を回収するためにコボルドだらけの森の中に踏み込むのは、危険極まりないからね。

 僕はオークを起動して並走させた。文字どおりの肉盾だ。


「あの矢はカードにできねぇのか?」


「……ごめん、ダメっぽい」


「わかった、走れ!」


 前から突っ込んでくるコボルドを、片っ端から篁さんがぶった切っていく。

 這う這うの体で森を抜けたところで、椎名さんがポツリと呟いた。


「桧川のオーク、ハリネズミみたいになってるわよ」


「囮みたいなもんだから、別にいいよ」


「便利なスキルねぇ」


 集中攻撃を受けたオークが消えた。

 手にしていたオークのカードは、イラストが白黒になっていた。

 雑魚ユニットが死んでもたいして困らない。色彩を失ったカードはクールタイム(ランク×日数)が経過すれば、また使えるようになるのだ。

 

「ひ、桧川、あそこ! セミナーハウス見て!」


 今度は何なのさ!?

 柊さんの声に顔を上げると、小さな建物の入り口にオークが殺到していた。中に入ろうとしているように見えて……そのうち一匹が不自然な姿勢で後ろに跳ね飛ばされた!


「誰か戦ってる!?」


「生き残りか! お前ら、行くぞ!」


 言うなり駆け出す護道くん。

 その後に篁さんと椎名さんが続いて……僕と柊さんが最後列。

 突撃の指示は出してないけど、息が整っていたら同じことを口にしていたから問題なし!


「た、体力ゴリラどもめ……」


 柊さんの悪態には同意せざるを得ない。

 護道くんと運動部ふたり、体力ありすぎるだろ!

 なお、体力ゴリラもとい篁さんたちが加勢したおかげで、僕たちが辿り着くころにはオークは全滅していた。

 セミナーハウスの入り口に立っていたのは……小さな女の子だった。艶やかな黒髪をツインテールにしていて、僕よりも背が低い。

 何より特徴的だったのは、カンフー映画みたいな構えをしていること。

 油断なく僕らを見据える眼差しは、ちょっと釣り目気味で鋭い光を宿している。


「……誰?」


「はぁ、はぁ……君は中等部だよね? 助けに来たよ」


 息が苦しい。むしろ僕を助けてほしい。

 その本音を飲み込んで、どうにかこうにか言葉を絞り出した。

 果たして――反応は劇的だった。

 助けに来たと言った瞬間、目の前の少女が纏っていた空気が緩んだ。目尻にわずかに涙が滲んでいるようにも見えた。

 そこに触れるべきではないと思った。

 感極まった少女の声が、僕らの耳朶を震わせる。


「高等部の先輩たち……来てくれたんだ」


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