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黒豹王の物語 ◇第一部~序章~◇  作者: 種広交明
はじまり

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#007「歓迎の宴」


マッチョポーズを決めまくって十分満足した俺は

風呂を上がって部屋に戻り

大きな窓の近くにイスを持っていき

サッパリとした体で心地よい風に当たりながら

また景色を楽しんでいた。


まるで絵画のようなその景色は時間が経つのを忘れてしまう。


風呂上がりですっかり気持ち良くなり、少し眠くなってきた。


大きな天蓋付きのベッドに横になりウトウトと・・・



・・・・・・



コンコン

「黒豹王様、黒豹王様・・・」


レグス「ぐーーー・・・ぐーーー」


コンコン

「黒豹王様、晩餐会の準備が整いました。

 すみません、失礼いたします。」


ガチャ

「黒豹王様、お休みのところ申し訳ありません。

 起きて下さい。」


レグス「んんんん・・・ムニャムニャ・・・

 チキンうま・・・うますぎーー・・・

 ムニャムニャ」


ゆさゆさゆさ


ゆさゆさゆさ


(ん?なんだ?体が揺れて・・・)


レグス「んんんん。はっ!!」


目の前にメイド姿をした女性がいた。

驚きのあまり声が出た。

外を見るとすっかり日が暮れ始めていた。

このベッドの寝心地が良過ぎて思いのほか眠ってしまったようだ。


レグス「そ、そなたは?」


「私は黒豹王様の身の回りのお世話をさせて頂く侍女のアリスと申します。

 今宵の晩餐会の準備が整いました。

 私について来て下さい。」


レグス「そ、そうか。

 よろしく頼む。」


落ち着きのあるメイド服を着たそのアリスという侍女は

ダークグリーンの髪色で

やや長めの髪を首の後ろあたりでくくり、肩甲骨あたりまで髪が垂れている。

きれいな人だ・・・というか!

お胸でかっ!

ウエスト細っ!

スタイルっ!


レグス「・・・」


アリス「・・・」


レグス「・・・・・・」


アリス「こ、黒豹王様。

 そんなに見つめられては照れてしまいます。」


レグス「あ、ああ。すまぬ。」


我ながら情けなし。

すけべ根性丸出しの黒豹王・・・残念。



侍女のアリスの後について部屋を出てついて行く。


「黒豹王様、どうぞお入り下さい。」

アリスはそう言うと、大きな扉を開いた。


ガチャ



王「おお、レグス殿、ようこそ晩餐会へ。」


レグス「うむ、失礼する。」


そう言って部屋に入ると、およそ30人ほどの面々に迎え入れられた。

よく見ると、召喚された際の部屋にいた人達と同じだ。


王「今日はここにいる我の最も信頼する者たちと共に、そなたを歓迎したい。

 本当はもっと大々的にやりたいのだが・・・

 実は黒豹王の召喚は国家機密なのだ。

 今、王城にいるのは本当に信頼のおける最少人数でしかない。

 普段はこの数倍の人間がここで働いておる。」


レグス「そうなのか・・・

 皆の者、よろしくお願いいたす。」


パチパチパチパチ

皆が笑顔で拍手を送ってくれた。



王「さあ、それでは晩餐会を始めよう。」


王がそう言うと真ん中の大きく長いテーブルを囲むように、

皆決められた席に座り始めた。


アリス「黒豹王様はこちらへ。」


アリスに言われるがまま付いて行った席は

恐れ多くもエイブン国王の隣だった。


レグス「こ・・・ここなのか?」


「さあ、どうぞ。」

アリスがそう言って席を引いた。

緊張しつつ着席する。


一平社員がいきなり国王の隣で晩餐会?

黒豹王の加護が無ければ平静を装うこともできないはずだ。


王「レグス殿、そう緊張せずともよい。楽しんで食事をするだけの事なのだ。」


レグス「い、いや。このような席は慣れぬものでな。」

高級レストランにも一度も行ったこと無いんです、とはさすがに言えなかった。


最少人数しかいない、と先ほど国王が言っただけのこともあり、

5人ほどの侍女がせわしなく動いて料理が入った皿を置いていく。


あっという間に配膳が終わると国王が口を開いた。


王「今宵は記念すべきうたげである。

 とはいえ、皆も知っての通りあまり大々的にやるわけにもいかず

 ささやかなものだ。

 この世界に来てくれたレグス殿を皆で歓迎しよう。

 では黒豹王様より一言お言葉を頂いてから乾杯しよう。

 レグス殿、お願いできますかな?」


「いや、無理です。」と言うこともできず渋々立ち上がった。


レグス「え~・・・コホン。

 これから先、どんな苦難が待ち受けているかは分からないが

 皆からもらったこの名前を大切にし、

 この国のために共に頑張っていきたい。

 では、カンパーーーイ!!」


わあああああ!


ふ~~、何とか形になったようだ。

加護ありがとう。


ホッとした俺は、早速目の前にある料理を食べるために

フォークを持とうとしたのだが・・・


グニャッ

!!!!


曲がった!!

何が?

フォークが・・・

ほんの少し手で握っただけで、固い金属製のフォークがまるで粘土のようにグニャリと!


レグス「あっ・・・・・」


目を丸くして固まってしまったレグスのおかしな様子に最初に気づいたのは王だった。


王「な!なんとこれは」


レグス「す、すまぬ。壊してしまった。

 だがもう一度まっすぐに伸ばせば使えるはずだ。」


そう言ってフォークをまっすぐにしようといじっている内に

パキッ!!


レグス「あ!・・・すまない、折れてしまった。」


王「す、すごい。レグス殿、人智じんちを超えた怪力ですな。

 謝る必要はない、なんとも頼もしい限りだ。

 おい、レグス殿に新しいフォークを。」


改めて、恐ろしい力を手にしてしまったと思った。

こんな力をもし人に向けてしまったらどうなるだろうか?

人体など簡単に壊してしまうのは間違いない。


レグス「ありがとう。」

新しいフォークを受け取った俺は、握るというよりも

指先で軽くつまむようにして慎重に使い

美味しい料理に舌鼓したつづみを打った。


しかし・・・皆が食事を忘れたかのようにこちらを見ている。


黒豹の頭を持った大男が

大きなきばを持った大きな口を開けて

人間と同じように食事するその様は

見るなと言う方が難しい。


そして美しいガラス製のグラスに入ったワインとおぼしき飲み物を飲もうとしたが、

やはり普通に飲もうとするとこぼれてしまうため

缶ビールの時に編み出したおかしな角度で口に入れた。


アモン「あはははは!!何その飲み方おもしろーーい!!」


レグス「仕方なかろう。こうしなければこぼれてしまうのだ。」


王「ぷっ、いやすまぬ。あまりに滑稽に見えてしまいつい。」


王がそう言うと皆つられたように笑い出した。


うむ・・・かなり恥はかいたが、場の空気は和んだようなので良しとしよう。


ということにしたが、レグスがこの後、一人黙々と自然に飲める練習をしたのは言うまでもない。


食事が終わった後、そこにいた面々が一人一人挨拶に来た。

軽い自己紹介と握手をするだけだったが、手に力を入れ過ぎないように細心の注意を払った。


アモン「私はねーーアモーン!!」


レグス「知っている。アモン、その節は世話になった。

 素晴らしいお風呂も先程頂いた。」


一通り挨拶が終わると、王が口を開いた。


王「さあ、皆の者。

 今宵の宴はこれでお開きとする。

 ささやかなものではあったが、皆今日という日を生涯忘れることは無かろう。

 我が国に、そして伝説に刻まれる一日を皆と共にできたこと、

 嬉しく思う。

 そして皆も知っての通り、我が父、

 前コルニール王のレイブン・フォン・コルニールの国葬こくそうも近く行われる。

 その事についてこの後、レグス殿には話があるゆえ残ってもらいたい。

 では、解散!」




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