表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒豹王の物語 ◇第一部~序章~◇  作者: 種広交明
はじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/9

#005「遺物」


アモン「あっ、そういえばさ、こんなの落ちてたから拾っておいてあげたよ。」


アモンはそう言うと、腰にげていた布製のバッグから白い袋状の物を出した。


!!!!!



レグス「こっ!これは!!!」


アモン「レグス様が召喚された時にね、

 なんか横にバサッて落ちて来てさ。

 なんかカサカサしてて薄っぺらくてフニャフニャしててさ、

 中にも見たこと無いような物が入っててさ。

 あんまり不思議だったんでアモンが取っといてあげたんだ。

 なにこれ?」


見間違うはずがない!

それはまぎれもないコンビニ袋だった!

一体なぜ!?

俺の服も貴重品も何もかもここには無いのに

一体なぜコンビニ袋だけが!?


俺は少し震える手を伸ばしながら言った。


レグス「アモン、それは恐らく前の世界での俺の最後の所持品だ。

 見せてくれないか?」


アモン「いいよ、はい。」


間違いない。

コンビニのビールにコンビニのチキン!


本当なら今頃、俺は家に帰ってこれを晩酌にしてアニメを楽しんでいたはずだ。


俺はしみじみとそれを眺めながら思った。

恐らく、俺が元の世界の物を目にしたり口にしたりするのは

これが最初で最後になるだろうと。

一体どんな不具合があったのかは知らぬ。

だが、何らかの手違いなり偶然が重なり、

たった一つ、このコンビニ袋のみが俺と一緒に送り込まれてしまったらしい。


こちらに来てから訳の分からないことだらけで

今でも半ばパニック状態だが、加護のせいか平静を装うことができる。

しかし、何一つ見覚えのない世界で

たった一つでも見覚えのある物が目の前に存在することの

なんと有難いことか!

そう思うと意図せずして涙が流れた。


アモン「どっ、どうしたのレグス!

 この白い袋ってそんなに大事なの?」


レグス「ああ・・・これは遺物だ。

 俺がもう二度と戻れない世界のな。」


アモン「そうなんだ・・・。

 ねえ、レグスは元の世界に戻りたい?」


レグス「戻りたい気持ちが無いわけではない。

 だが、今はこの新しい世界を知っていきたいと思っている。」


アモン「そっか・・・

 本当に巻き込んじゃってゴメンなさい。」


アモンはそう言うと深く頭を下げた。


レグス「ありがとう。その気持ちだけで十分だ。」

アモンの肩にポンと手を置いた。


レグス「アモン、悪いが一人にしてくれ。

 俺はこれで()()()()()をしようと思う。

 向こうの世界とのお別れの儀式だ。

 改めて礼を言わせて欲しい。

 よくぞこの袋を取っておいてくれた。

 ありがとう。」


アモン「どういたしまして!

 レグスこそこっちの世界に来てくれてありがとね!」


来てくれて、というか誘拐されたんだが。という言葉が出そうになったがやめることにした。


アモンはその後、用を足す場所や手洗い場など一通り場所を説明してくれた。


アモン「あとさ、このお城には風呂場もあるんだよ。

 今ぐらいの時間なら誰もいないからさ。

 レグス様その体と頭だもん、ちょっと人に見られるのまずいよね。」


レグス「そうか、ならば後で行ってみよう。」



アモンが出て行ってから、俺はコンビニの商品を机に置いた。

よくぎ慣れたチキンの香ばしい香りが鼻から入ってきた。


「この匂いを嗅ぐのもこれが最後か。」


缶ビールのタブを引っ張り上げて開けると

「プシューーーッ!」

と炭酸の良い音がした。

この聞き慣れた音を聞くことも今後二度と無いのだろう。


口に缶ビールを近付けて一口飲もうとしたが、

自分の頭が豹になっていることを完全に失念してこぼしてしまった。


「なっ!!なんということだ!貴重なビールが!!」


その後、どのような角度でどこから缶ビールを口に付ければこぼさずに飲めるか悪戦苦闘し

ようやく一口飲めた。


「くーーーーっ!!たまらん!」


本人は必死なのだが、はたから見ると豹頭の大男が缶ビールで口周りをこねくり回しているのである。

相当滑稽に映ったに違いない。



「お次はこれだっ!」


俺はお待ちかねのチキンを一つ手に取った。


「う~~ん♪このスパイシーな香りがたまらん!!」


おもむろに口に放り込んだ。


!!!!


衝撃的なうまさ!


しあわせ~~♪

にしてもうま過ぎる!

いくら()()()()()だからってここまでうまいか?


もう一個口に運んでみる。

やはり違う!!

いつも味わっていたチキンと同じとは思えないほどうまく感じる。


俺は一つの可能性を考えた。

豹は肉食である。

本来は生の動物の肉を引きちぎって食べられる程の発達した犬歯を持ち、

更にはザラザラとした舌で肉を骨の髄までこそげ落として食べきる。

「肉を味わう」という行為にかけてはプロ中のプロである。

おまけに嗅覚の鋭さも人間の比ではない。


もしその能力がこの体にも受け継がれたとすると納得がいく。


俺は肉を口に放り込んではおかしな角度で缶ビールを飲み、

心ゆくまでこの()()()()()を楽しんだ。


「は~~満足満足。

 いざこれでお別れかと思うと寂しいものがあるな・・・。」


満足感と同時に喪失感もある。

もしかしたらこの奇跡のコンビニ袋を送り込んでくれたのは、

親からの「がんばってこい!」というエールだったのではないだろうか?

そう思うとほんの少し気分が軽くなった気がした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ