#004「命名」
女神との邂逅からどれほどの時間が経っていただろうか。
アリアが別れを告げた後、ゆっくりと目を開くと、
一同が固唾をのんで見守っていたようだった。
俺「すまない、待たせたようだ。一応の話はついた。」
王「やはりそうであったか。
急に押し黙ったきりこちらの呼びかけにも応じなくなって、
一体どうしたものかと思ったが、
女神様の光が目を閉じた貴殿に近づいて動かなくなったので
我々には聞こえぬ話をされているのかと。」
俺「その通りだ。色々と込み入った話を聞いた。」
王「しかし光に照らされ対峙する黒豹王様の何と神々しきことか!
その神話的な光景に涙する者もいた。
かく言うわしも・・・うっ」
俺「そ・・・それは何よりだ。」
なんと、あの女神との漫才のようなやり取りが神話に見えていたとは。
こんな皮肉があるだろうか?
王「して、黒豹王殿。
名前が無くては不便であろう。
もし希望が無ければ我々の用意している名前を受け取っては下さらぬか?」
俺「かまわない。ありがたく頂戴しよう。」
王「この国に古くから伝わる言葉から取った名・・・『レグス』。
勇気ある者。
困難に立ち向かう者。
というような意味が込められている。」
レグス「承った。我が名はレグス。
これからよろしくお頼み申す。」
おおおおおおおお!!
皆が一斉に歓声を上げた。
王「いつまでも立ち話では申し訳ない。
今日はそなたを歓迎する晩餐会を開く予定だ。
それまでの間ゆっくりと部屋でくつろいで下され。
早速、誰かに部屋まで案内させよう。」
アモン「はいはーーーい!!
王様、私が案内したいでーす!」
ケイラス「この馬鹿アモン!なんという口の利き方か!」
王「アモンか。
うーむ・・・まあよかろう。」
ケイラス「へ、陛下!」
王「よいよい。あまりかたっ苦しい者が案内するよりも良いだろう。
レグス殿もこの世界へ来てまだ間もない。
気さくで喋り易い者の方がよい。」
ケイラス「・・・アモン。くれぐれも粗相のないようにな。」
アモン「まっかせてよ!
ささっ、レグス様行きましょ。」
そう言うとアモンは俺の手を引いて歩き始めた。
レグス「アモン殿、なぜ手を握る?」
アモン「え?迷子にならないためだよ。」
レグス「いや、中身は子供じゃないんだが。」
アモン「いいからいいから。」
アモンは兵装しているが少女に見えた。
身長はかなり小さく140センチほどだろうか?
髪は赤っぽくて短い。
瞳の色は青っぽく、顔には少しそばかすがあった。
こんな小柄で華奢に見える少女が、なぜ側近とおぼしき場所に立っていたのかは後々分かることである。
2分ほど歩いだだろうか。
アモン「着きましたよーーレグス様。」
ガチャ
アモンがドアを開けた。
レグス「ここが我の部屋・・・。」
20畳ほどの広々とした部屋がきれいに掃除され整頓されている。
光が入る南側に大きな窓があり、爽やかなそよ風に、
美しい刺繍が施されたパステルカラーを基調としたカーテンが揺れていた。
この巨体でも寝られそうな天蓋付きの大きく立派なベッドが見える。
その横には小物を入れられそうな引き出し付きの家具。
更にその上にはオイルランプのような物まで置いてあった。
美しい敷き物が床に敷かれていて、その上には繊細な木彫りの意匠が施されたテーブルと椅子がセットされていた。
自分が住んでいたボロボロのアパートとかけ離れたその空間に
一歩も進めず呆然と立ち尽くしていたのだが、
アモン「あら?レグス様固まっちゃった。
どしたの?
気に入らなかった?」
レグス「い、いやあまりに立派で。
どうにも落ち着かぬ。」
アモン「なに貧乏くさいこと言っちゃって。(笑)
黒豹王様なんだからしっかりしてよ!」
レグス「余計なお世話だ。
今しがたまでずっと貧乏暮らしをしていたんだ。
急に慣れるわけなかろう。」
アモン「そうなの?
レグス様前の世界で苦労してたんだ。
あっ、そういえばさ、こんなの落ちてたから拾っておいてあげたよ。」
アモンはそう言うと、腰に提げていた布製のバッグから白い袋状の物を出した。
!!!!!
レグス「こっ!これは!!!」




