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黒豹王の物語 ◇第一部~序章~◇  作者: 種広交明
はじまり

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20/24

#020「ブレイクタイム3~仁義なきモフモフ大抗争勃発!!~」

ミニエピソード集~ブレイクタイム~



ある朝、俺はいつもよりも早起きした。


先日アモンに連れられて行った『双剣亭』の店主、

マルクから譲り受けた『黒流こくりゅう』を使いこなせるように

練習しておくためである。


城内にいくつかある中庭の内の一つに向かった。


爽やかな朝日に照らし出されるお城の風景は、

ただそれだけで異世界好きの自分にとっては

たまらないものであった。


と、

中庭に近付くと人の気配がした。


「ふっふっふっふっふっ!」


レグス「ん?

 あ!あれは・・・」


そこにいたのはアモンだった。


アモン「ふっふっふっふっふっ!」

ブン

ブン

シュ

シュシュ!


剣が空を切る鋭い音が聞こえてくる。

いつものアモンとは違う、

あの闇アモンを思わせるような真剣な表情で、

目にも止まらぬ速さで剣を振っていた!

朝日の中でしたたる汗が光っているように見えた。

アモンほどの強者でも、

いや、強者だからこそと言うべきか、

これほどの鍛錬をしているとは・・・。

俺は、一人の戦士として尊敬の念を持って、

その様子を柱の陰からしばらく見ていた。


アモン「だれ?」


ギクッ!!!


まさか・・・

音など立てていないのにバレたのか?


アモン「はあーーー・・・


 ふっ!」


レグス「あれ?」


アモンが消えた!

一体どこに!?


アモン「な~んだ・・・

 レグスじゃん。」


レグス「うわっ!」


急に後ろからアモンの声がして、

俺は腰を抜かしそうになった。


アモン「私になんか用?」


アモンは、闇アモン寄りの冷たい口調でそう言った。

確かに・・・普段のアモンからは想像もできない

「クールでカッコいい」という真逆の人間性には

そのギャップに心を射抜かれるという者の気持ちも

分かるような気がした。


レグス「いや、先日もらったこの剣に慣れておきたくてな。

 我もたまたまここに練習に来たのだ。

 するとアモンが練習していてあまりに見事だったもので・・・

 つい見てしまった。」


アモン「そう。


 ・・・


 そういうことなら、もう練習終わり!

 ということで、今からご褒美を所望するのだ!」


レグス「えっ?」


次の瞬間!

視界が真っ暗になった!


レグス「ぐむぅぅ!!」


アモン「よーーしよしよしよしよしよしよしよしよし!!」


レグス「ぐぅぅ!

 はっ、離れろアモン!」


手でアモンをはがそうとするが、

頑固な汚れ・・・ならぬ頑固なアモンが

頭部と一体化してこびり付いている!


レグス「我も・・・ぐふぅ!

 我も練習しなければむぐぅぅぅ!!」


アモン「よーーーーしよしよしよしし!!


 ふ~~。

 朝練終わりのモフモフはまた格別なのだーー!」


レグス「ううう(泣)」


まだ練習もしていない内から、

アモンの練習後の汗まみれの手で

モフられてしまった。



その日からだった・・・

いつもどこからともなく

少女の皮をかぶった『煉獄○○ゴロウさん』が襲来するようになったのは!



ここに宣言する!

今・・・

血で血を洗う

仁義なき

モフモフ大抗争の火蓋が

切って落とされたのである!!



また別の朝・・・

レグスは不審者のようにキョロキョロと周りを見渡しながら、

先日とは違う中庭に向かった。


レグス「きょ、今日も朝練を・・・

 よし、誰もいない・・・。

 今日こそ落ち着いてできる。


 ふっ

 ふっ

 ふっ

 ふっ

 むぐぅぅぅぅぅ!!」


???


リズムよく素振りを始めたのも束の間だった!

音も無く、

敵は背後から頭部に突進して来た!


アモン「言ったのだ。

 このモフモフは誰にも渡さないのだ!」


レグス「もう勘弁してくれ!

 これでは練習もぐむむぅぅ!」



この抗争はしばらく続くこととなった。


絶対にモフりたい少女

vs

絶対にモフらせたくない獣人


しかし、幸か不幸か・・・

レグスにとっては

この一連の抗争が、

動体視力と反射神経を飛躍的に向上させる

良い訓練になってしまったのである!



また別の日・・・


ん?

感じる・・・

どこからともなく殺気。


レグス「そこかーーー!」


また素振りをしていたレグスは

すかさず背後に剣を向けた!


アモン「やーーい、引っかかった引っかかった(笑)」


レグス「ぐんむむぅーー」



そしてまた別の日・・・


今日こそアモンの思い通りになるものか!

レグスは究極まで神経を研ぎ澄ませながら自主練していた。


ほら・・・

やっぱり今日も来たぞ

この殺気・・・。

以前はなすすべも無くモフられていたが、

最近はだいぶ反応できるようになってきた!

今日こそ防いでみせる!!


これは結果論にはなるが・・・

ある意味近衛騎士団副団長様じきじきの

ありがたい訓練と言えたのかもしれない。

レグスの戦士に必要なセンスや勘のようなものが

意に反して勝手に磨かれてしまったのも

また事実であった。


ん?

・・・

来る!!


レグス「やらせはせん、やらせはせんぞーー!」


アモン「ふっふっふ~、残念でした!」


レグス「ぐっむふぅぅぅぅ!」


なんと、

その日のアモンは

あろうことか“真上”から降って来た!!


アモン「よーーしよしよしよし!!」


ふ~・・・

もうたくさんだ。

今日も敗北した脱力感に襲われ、

モフられるがままになってしまった・・・。



そしてある日のこと・・・


アリス「ん?

 うーーん・・・

 やっぱりおかしい気が。」


レグス「ん?

 どうされた?」


アリス「え、えーと・・・

 おかしなことを聞くようですが、

 毎朝私が整えているはずのレグス様の毛並みが

 最近異様に乱れている気がするのですが・・・

 なにかお心当たりは?」


レグス「そのことか・・・。

 心当たりどころの話ではない。

 実はな・・・」


と言って、

これまでの経緯を順を追って話していたのだが・・・


話が進むにつれて

アリスの表情が険しくなり、

顔が紅潮し始めた。


アリス「くっ!

 なんたる屈辱・・・。

 レグス様、大変申し訳ありません!

 アモンに代わって謝罪いたします。」


アリスは深く頭を下げた。


レグス「いや、そこまで謝らなくとも・・・」


アリス「いえ・・・どうやら私のしつけが甘かったようです。

 アモン様の自由奔放にも限度があります!」


ついアリスにアモンの悪行をチクってしまった。

激怒したアリスがその後、

足早に部屋を出て探したのは

アモンだったのだろう。


どこかで誰かが、

「ギャーーーー!!!」

というアモンの断末魔を聞いたとか聞いてないとか・・・。



そしてその後、『三者面談』が行われる運びとなった。


出席者は以下三名である。


・絶対にモフりたい少女


・絶対にモフらせたくない獣人


・絶対に毛並みを整えたい侍従


アリス「おほん!

 アモン様?

 真っ先に言うべきことがあるのでは?」


アモン「はい!

 あっ、あの・・・

 勝手にモフモフしてごめんなさい。」


レグス「うむ。

 あれほどのモフモフは勘弁願いたいが、

 少しぐらいなら」


アリス「レグス様!」


レグス「はいっ!」


アリス「そうやって甘やかし過ぎてはなりません!」


レグス「ごめんなさい。」


アモン「で・・・でもアリスねえ

 私が本当は動物飼いたいの知ってるよね?

 だからその、

 少しくらい許してほ」


アリス「アモン様!

 黒豹王様を動物?

 ペット扱いとは!!

 恥を知りなさい!」


アモン「うう・・・ごめん。

 でも・・・

 でもーーー!!


 うっ

 うえ~~~ん」


なんと!

アモンが大泣きし始めた!

いつも笑顔のあのアモンも

こんなに泣くことがあるのか?

とかなり面を食らったが、

それはアリスも同じだったようだ。


アリス「ア、アモン様!

 泣いたって駄目ですよ。」


アモン「うっ

 ええっ

 えええーーーん


 えーーーーん」


アモンは、

ついには地面に転がり激しいダダをこね始めてしまい

収拾がつかなくなってしまった。


が、そのダダのこね方があまりに独特だった!


クルクルクルクル


回っていたのである!

まるで日本のコマ回しのように、

あるいは現代のブレイキングダンスのようだった。


アリス「ちょっ!

 ちょっとアモン様!

 ふざけないで下さい!!」


アモン「えええっ!

 ええーーーん」


クルクルクルクル


それはまぎれもなく、

驚異的な身体能力を最大限に活かした「ダダ」だった。



レグス「すっ!

 すごい身体能力だ!」


アリス「ちょっと!

 感心している場合ですか。

 レグス様もなんとか言って下さい。」


レグス「うう・・・。

 おいアモン、泣くほどなのか?


 ・・・。


 アリス・・・アモンもいつか大人になる。

 永遠にこんなことが続くわけでもあるまい。

 今回は、少し譲歩するしかないのでは?」


アリス「はあ・・・。

 こんなになるアモン様はあまり見たことがありません。


 レグス様がそう仰るのであれば仕方ありません。」


と言って、

アリスは紙と筆記具を持って来た。


何を隠そうアリス自身も、

ブラッシングで表情が崩れきっているレグスの顔を本人に内緒で楽しんでいたわけで・・・

譲歩せざるを得ない面もあったのは事実だった。


三人で話し合い、合意の上、

以下のような書面にそれぞれがサインをした。


――――――――――――――

【モフモフ誓約書】


※本誓約書に同意、署名の上、

違反した過度なモフり行為に及んだ者については、

厳重な処罰が課されるものとする。



私、アモンは黒豹王様であるレグスの頭部を

本人の許諾無く、

過度に

そして執拗に

モフらないことをここに誓います。



アモン

レグス

アリス


――――――――――――――


アモンの『ブレイキンダダ』の甲斐もあり、

モフり行為が完全に禁止されるわけではなく、

レグスの許しがあればよい、

という取り決めにすっかり機嫌を直したアモン。


アモン「あ、ありがとう二人とも。


 そ、

 それじゃあ早速・・・

 今日のモフモフを。」


アリス「ア~モ~ン~さ~ま~?」


アモン「ううっ・・・

 し、仕方ない。

 きょ、

 今日のところは我慢するのだ。」


レグス「うむ。

 えらいぞアモン。」



という取り決めがあったはずなのだが・・・



実はその後も、

アリスの目を盗んでは、

アモンが不意打ちモフモフを炸裂させていたことについては、

内緒にしている・・・。




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