#018「街・・・デート?(後編)」
噴水のある広場で大切なおまじないをした後、再び歩き始めた二人・・・
アモン「ルンルルンルラ~ン♪
ルンルルンルラ~ン♪」
例によってアモンのウキウキ鼻歌スキップに連れられて辿り着いたのは
『喫茶ルテーヌ』
レイン「ほう!喫茶店か!」
異世界喫茶店・・・これはたまらない!
おしゃれな店構えに加え
店先にはカフェテラスまである。
爽やかな陽光に照らされながらご婦人や紳士がお茶を楽しんでいた。
店の入り口は開け放たれていてアモンがそのまま入っていく。
店員「いらっしゃいませ。」
アモン「私とこの人、二人だよ。」
店員「あ・・・」
ダークグリーンで統一された小綺麗な制服に身を包んだ店員は
レインを見上げると、
その巨体に一瞬驚いたように目を丸くしたが、
特に何も言わなかった。
店員「か、かしこまりました。
お席のご希望はございますか?」
アモン「よーーし!
せっかくだから外の席にしよう!」
店員「かしこまりました。
ご案内いたします。」
と言って、店員に店の外へ案内された。
店員「こちらでよろしいでしょうか?」
アモン「うん、いいよ。」
丸い木製のテーブルとイス。
外のテラス席は、その上をストライプ柄の布製のシートが覆っている。
直射日光を避けるためなのだろう。
二人が椅子に腰掛けると、レインの椅子がミシミシと音をたてた。
店員「え?」
アモン「なにこの音?」
レイン「うわ! これは危ないかもしれぬな。」
それもそのはず・・・。
身長もすごいが、体重も成人男性二人分はあるだろう。
椅子の製作者も想定外だったに違いない。
あまり体重をかけ過ぎないように浅く座ることにした。
レイン「すまぬ。壊さないよう気を付ける。」
店員「椅子はいいのですが・・・お怪我なさらぬようお気を付け下さい。
ご注文はいかがいたしましょうか?」
アモン「それじゃーねー」
と言って、アモンのお気に入りをレインの分まで注文してくれた。
店員「それでは少々お待ち下さい。」
レイン「アモンは一人でこんなおしゃれなお店まで来るのか?」
アモン「ううん。
ここはね、アリスが教えてくれたの。」
レイン「そうか、アリスが・・・。」
アモン「うん。
アリス姉ちゃんが連れて来てくれてさ、
すっかり私も大好物になっちゃったよ。」
レイン「大好物? 一体なんだ?」
アモン「それは来てのお楽しみ~♪」
レイン「それにしても今日は、アモンがこの街を気に入っていることがよく伝わってきた。
アモンは本当に良いお店をたくさん知ってるんだな。」
アモン「へへん、まあね。
アリスが時々このお店に誘ってくれるんだ。
私も一人だと入りづらいよ。」
レイン「そうか、まさに二人だけの女子会というわけだな。」
アモン「じょしかい? なにそれ?」
レイン「はは、何でもない。こちらの話だ。」
陽光に照らされる美しい街並みを目で楽しみながら、
テラス席で他愛のないそんな会話をしているとふと思う・・・。
近頃、座学や格闘訓練など慣れない大変なことも多かった中、
「なんて癒やされる楽しいひと時なのだろう・・・」
ってもはやこれ・・・
「デート」なのでは!?
すっかりアモンのペースに一日巻き込まれて、
気が付けばアモンが最初に言っていた通り
「完全なデート状態」
と化していたことに衝撃が走る!
レイン「こ、これは・・・なんとしたことだ。」
アモン「えっ? なにレイン?」
レイン「いや、なんでもない・・・。」
「意識したら負け」という謎の精神戦が始まり、
顔がほてった気がする。
しばらくすると店員が銀色のトレーに商品を乗せて来た。
店員「お待たせいたしました。
こちらご注文のルテーヌモロー2点と
オレンジジュース2点です。
ごゆっくりお楽しみ下さい。」
アモンとレイン「ありがとう。」
それはパッと見カステラのように見えたが、
全体的に白い蜜のような物がかかっていた。
大きさは筆箱ぐらいあって
シナモンのような良い香り、
そしてたまらない甘い香りが漂ってくる。
レイン「ほう・・・これが初の異世界スイーツ。
なんともおいしそうだ。」
アモン「ささ、食べよう食べよう♪」
と言ってアモンがフォークで一口食べる。
アモン「んんん~~♪ あんまーうんめーーー」
そしてレインも続く。
レイン「どれどれ・・・
もぐもぐもぐ
んんん~~~ これは中々♪」
非常に素朴な味だったが、転生後初めてのスイーツに感動した。
現代のスイーツを食べ慣れている自分にとっては
正直それほど甘くはない。
しかしアモンの反応からも分かる通り、
きっと砂糖や生クリームなどはまだ一般的ではなく、
これでもかなり甘く感じるのだろう。
実際、この異世界での素朴な食事に慣れてきている自分にとっても
ほのかな甘みでも有難く感じた。
アモン「もぐもぐもぐもぐ
んんんん♪
あまあまあまあまーーー
うんめーーー!」
と言ってオレンジジュースを手に取り
アモン「ごくごくごくごく
くーーーーー!
“ごぞーろっぷ”にしみわたるぜーー!!」
レイン「ご、五臓六腑!?
意味分かっているのか?」
アモン「うーん・・・分かんない。」
レイン「なんじゃそりゃ!
一体どこで覚えた?」
アモン「えーとね、ケイラスがお酒飲んでた時に言ってた。」
レイン「ええ!?」
あのケイラスが!?
これほど見た目とミスマッチな言葉があるだろうか?
お酒を飲むと変わるのか?
レインも続いてオレンジジュースを飲む。
レイン「ごくごくごくごく
くーーーーー!
五臓六腑に染み渡るーーー!
うむ、爽やかな酸味でとてもうまい!
ごくごくごく」
アモン「ねえ、レインは元居た世界で結婚してた?」
レイン「ぶぅぅぅぅぅ!!」
俺はオレンジジュースを勢いよく吹き出した!
アモン「うわっ! なにするの!」
レイン「ごほっ!ごほごほっ!!
なっ!・・・なんだ急に。」
アモン「え? レインはどんな人だったのかなって。」
レイン「結婚などしたことは無かった・・・ただの一度もな。」
アモン「へー、そうなんだ。
じゃあさ、こっちの世界に来た時に付き合ってる人はいた?」
レイン「いや、いなかった。」
アモン「ふーん。
じゃあ好きな人もいなかった?」
レイン「それは・・・。
はあ・・・
まあ美味しい物を馳走になった礼だ。
話すとしよう。」
まさかアモンが恋バナをぶつけて来るとは夢にも思わず動揺した。
アモンも恋する一人の乙女なのか?
そう思えなかったのは、普段から無邪気な姿を見慣れていたからかもしれない。
レイン「人生でたった一人だけ・・・本気で好きになった女性がいた・・・。」
アモン「へー、そうなんだ!それでそれで?」
レイン「そして人生でたった一度だけ、その人にプロポーズまでした。」
アモン「ぷろぽ? なにそれ?」
レイン「結婚を申し込むということだ。」
アモン「えええええ!!!
そっ! それでそれで!?」
恋バナにのめりこみ、どえらい食い付き方をするアモン。
前のめりに身を乗り出している。
レイン「断られたよ。『年収が低過ぎる』と言われてな。」
アモン「ガーーーン!」
レイン「彼女の判断は賢明だったと思う・・・。
俺が女性の立場でも同じ回答だっただろう。
貧乏で、大して冴えない男と一緒になろうなどという物好きもそうはいまい。」
アモン「う~ん・・・そうかな?
かわいそうなレイン。
仕方ない・・・アモンが養ってあげよう。」
レイン「勝手に我をヒモにするな!!」
アモン「よーーし!
今日のデート終了!
どう?
楽しかった?」
レイン「ああ、素晴しいデ
じゃなくて街案内だった。
ありがとうアモン。」
アモン「どういたしまして!
まーーたまた照れちゃってさ。
うぶレインなんだから。」
レイン「その呼び方やめい!!」
こうしてアモンのデート・・・ならぬ街案内を終えた二人は
城に向かって帰路に就いた。
それにしても・・・いくら見ても飽きない街並みだ。
と、一つのお店が目に留まった。
なんとそこには
『黒豹王グッズ』
と書かれた旗が立っていた!
レイン「なっ!なにーーーーー!!」
アモン「えっ!急にどうしたの?
・・・ああ、あれはね・・・」
と言って説明してくれたアモンの話によれば・・・
この国では黒豹王という存在がとてもポピュラーで
童話のように楽しまれているのだという。
親が子供に黒豹王の絵本を読み聞かせることは恒例で
黒豹王のデザインが施された様々な商品もあるんだとか・・・。
しかもこの国に観光に来た人が買って帰るお土産の定番が
『黒豹王グッズ』なのだという。
これはえらいことになった・・・と思った。
アリアが以前「マスコットみたいで人気出るかも」なんて言っていたが、
それは正しかったのかもしれない。
もはやマスコット以外の何物でもない。
レインは恐る恐るそのお店に近づいた。
レイン「店主、少し見せてもらってもよいか?」
店主「ああ、いらっしゃい。
って、でっかいねーあんた!
まるで伝説の黒豹王様みたいに立派な体だよー!」
ギク!!!
レイン「・・・はっ、ははははは!
よく言われる。」
レインは動揺し少し裏返ったような声で答えた。
アモンが「おいおいバレかかっているぞ」と言わんばかりに
ひじでこづいてくる。
もし今「ひょうへん」と言って変身を解き、
黒豹の頭に変わったら、
目の前の店主は驚きのあまり死んでしまうのではないか?
この街の人達も、今まさにこの街の中を
伝説の黒豹王がウロチョロしているなど夢にも思うまい・・・。
黒豹王の立派な体をかたちどった木製の人形。
布の中に詰め物をして黒豹王の頭をかわいらしくデザインした物は、
引っ掛けられるように紐も付いている。
小さな板片に黒豹王の絵を繊細なタッチで描いた物。
棚には黒豹王の絵本が何種類か置かれている。
皿やまな板、コップ、布製のクロスなど・・・
日用品まできりがない。
レイン「すごい品揃えだな・・・」
店主「へっ、分かるかい?
うちはちゃんと国から許可をもらっている正規店さ!
だから品質は保証するよ。
本当は黒豹王グッズを販売できるのは認可をもらっているお店だけ。
最近じゃ無許可のお店が“まがいもん”売ってるって話も聞く。
気を付けな。」
レイン「そうか。
では店主、あちらの木製のコップを二つもらおう。
アモン、あれでよいか?」
アモン「へ~~、結構かわいいじゃん!」
手作り感のある木製のコップに黒豹王の頭のデザインが描かれている。
アモンも気に入ってくれたので二人分購入した。
自分で自分のグッズを購入することになるとは
なんともおかしな気分である。
店主「まいどありーー!」
店主から品を受け取り、そのお店を後にして言った。
レイン「ふ~~。アモン、肝が冷えたぞ。」
アモン「きも?
おなか冷えてるの?
あったかい物飲む?」
レイン「そうじゃない、あんな物が売られているとはびっくりした。
これはバレたらとんでもないことになる。
この国がひっくり返るような予感がする。」
アモン「う~ん・・・まあなるようになるよ。」
レイン「人ごとだと思って・・・。」
しかし、いつかは黒豹王が召喚されたことを公表しなければならない時が来るのだろう。
それは、この国のみならず他国にもとんでもない衝撃を与えるのは間違いない。
それがもし更なる戦乱を引き起こす引き金になってしまったら・・・
と考えるだけで、身震いするほど恐ろしい。
もし公表された後も、レインとして街を歩くことは可能なんだろうか?
今日のような楽しい一日を送ることができなくなってしまったら・・・
こんなに寂しいことはない。
衝撃を受けた『黒豹王グッズ』のお店を後にし、
今度こそ城へ向かって帰路に就いた・・・
はずだったのだが、
その道すがら
ちょっとした事件と、
ちょっとしたミラクルが起こった。
すぐ前を何人かの人が歩いていて、
更にその前・・・距離にして10メートルほど先を二人の親子が歩いていた。
その親子は若い母親と幼い少女だった。
母は植物を編み込んで作ったような手作り感のあるカゴに
野菜や果物を入れていて
幼い娘と手をつないで歩いている。
二人で買い物をした帰りだろうか?
娘が楽しそうに母にしゃべりかけていた・・・
と、その時突然!!
「あっ!!」
という声がなぜか上から聞こえた!
その方向を見ると道沿いの建物の三階のベランダに
人が立っているのが見えた。
そして、その人の真下から何かが落下してくるのが見えた。
なぜかは分からないが、それはまぎれもなく植木鉢だった!!
しかもそれは、前方を歩く少女の頭に直撃する軌道に見えた!
その時だった!
突如、黒豹王の血が沸騰するのを感じた。
次の瞬間には、何も意識していないのに体が勝手に動いていた!
それは間違いなく尋常ならざる動物的な動きだった。
その植木鉢が少女に直撃するのを防ぐために動いたのは間違いない。
だが決定的な問題が一つあった。
レインと少女の間に何人かの人が歩いていたことに加え、
運の悪いことに、
ちょうど向こうからこちらに歩いてくる人がすれ違うタイミングで、
広いとは言えない道はすり抜ける隙間も無く完全に塞がってしまった状況だった。
ではどうしたか?
まず建物の壁に向かって飛んだ。
これは、レイン本人がそうしようと意識したわけではなく、
黒豹王がそれを選んだのだろう。
おそらく豹の身体能力がそのままフィードバックされているその体は
人間には不可能なほどの跳躍や身のこなしが可能なのは間違いなかった。
地面を蹴る「ダーーーン!!」という凄まじい音と共に
おおよそその巨体からは想像しえない速度で飛んだ!
壁に足から着地すると、今度はそのまま壁を蹴って少女に向かって飛んだ。
壁を利用した三角飛びで、歩く人達をかわして少女のすぐ後ろに着地した時には、
植木鉢はすぐ目の前に迫っていた。
レインは左手で少女を抱き寄せ、右手一本で植木鉢をキャッチした!
そこそこ重量のある植木鉢が三階の高さから落下した衝撃を
片手で受け止めることなどあり得るだろうか?
急に大男が目の前に現れたことに戸惑い
親子が呆然としている。
レイン「危なかったぞお嬢さん。
この植木鉢が頭に直撃するところだった。」
老婦人「ちょっと!!
ごめんなさーーーい!
ベランダに植木鉢を飾ろうとして落としちゃったの!
お怪我ない?」
レイン「うむ、大丈夫だ。
ご婦人、受け取られよ。」
レインはそう言うと、なんと右手の植木鉢をその婦人に向かってそのまま真上に放り上げた!
植木鉢は完全な水平を保ったままみるみる上昇し、
なんとその婦人の目の前でピタリと止まった!
老婦人「あらま!」
婦人は反射的に手を出してそれを受け取ったが、
あまりのことに驚き目をパチクリさせていた。
母親「たっ、助けて頂いたのですか!?
ほ、本当にありがとうございます!!」
娘「あ・・・大きいおじちゃんありがとーー!」
レイン「うむ、本当に間に合って良かった。」
アモン「ちょっ!ちょっとなに今の!
かっくいーーーー!」
レイン「うむ。
我もよく分からぬ。」
一連の様子を見ていた一人の通行人が拍手した。
町人「す、すげーー!
何が起こったか早過ぎてよく分からなかったが、
人間業じゃねーよ!
ヒューヒューー♪」
あまりに一瞬の出来事だったためか
見ていなかった人も多く
大した騒ぎにはならずに済んだ。
今の内に、と思い足早にその場を去った。
アモン「さっきバレたら大変って自分で言ってたのにさ~。
よくやるよレイン。」
レイン「全くその通りだ。
だが恐らく、この体にはこの国の民を守ることが使命だと
刻まれているのだろう。
だから勝手に動いたのだ。」
アモン「・・・にしてもとんでもない動きだったよ!!
アモンもあれやりたいな~。」
レイン「おぬしなら出来るのだろう?
ケイラス殿から聞いているぞ。
『神速のアモン』などと言われていることを。」
アモン「しっ!しーーーー!!」
レイン「あっ!すまぬ。」
アモン「そりゃできるけどさ~。
あんな風に片手で植木鉢キャッチするほど力持ちじゃないよ。
私なら足で蹴ってたのかなー?
でもそうするとさ、割れて破片が飛ぶかもしれないしさ、
他の人にも当たっちゃってたかもしれないしさ。」
レイン「うむ。」
アモン「さっきはね、私も動こうかとも思ったんだけどさ・・・
レインが急に目の色変えて飛び出してったから
ビックリしちゃった。」
レイン「そうだな・・・我もビックリ仰天だ。」
アモン「なにそれ、変なの・・・はははは」
レイン「ははははは」
って笑い事じゃない!!
まさに女神が最初に発した言葉
「黒豹王の加護がある限りあなたの言動は全て黒豹王に相応しいものへと補正されます。」
というのは本当らしい。
そして「コルニールという小国の守護神となる」とも言っていた。
先ほどまさに一人の国民を救うために無意識に勝手に体が動き、
しかもその後、あろうことか植木鉢を超人的な力で投げ上げて渡した。
自分はあんなかっこつけた目立つようなことをするタイプの人間ではなかったはずだ。
そんなパフォーマンスだけでなく、
「危なかったぞお嬢さん。」
「ご婦人、受け取られよ。」
などの言葉遣いに至るまで・・・
この体はもはや「自分であって自分ではない」のかもしれない・・・
そう考えると、少し怖くなった。
レイン「それにしても・・・アモンならどう動いていたのか見てみたかったものだ。」
アモン「いや~・・・でもさ、私もあんま目立ちたくないんだよね~。」
レイン「はは、そうか。我々は何とも難儀な二人だな。」
アモン「なんぎ?」
レイン「大変だということだ。」
アモン「うん、そうだね。」
レイン「アモン、団長殿から聞いているぞ。
とんでもなく強いと・・・。
しかしな、
我にはこの国の守護神となる役目があるらしい。
とすると・・・
いつかはおぬしとも対等な勝負が出来るほどにならなくてはな。」
アモン「レインが私と?
ははははは、ムリムリムリーーー!!」
レイン「分かっている。
だから“いつかは”と申しただろう。」
アモン「むーーー・・・アモンは絶対負けないの!
“いつかは”もなし!」
レイン「ははははは!
これは筋金入りの負けず嫌いだな。
では一つ手合わせといかぬか?
我も一ヶ月ほどケイラス殿に稽古をつけてもらった。
少しは形になったはずだが?」
アモン「本気?
むむむ!
アモンもなめられたままじゃ気分悪いのだ。」
レイン「誰もなめてなどおらぬ。
だが・・・未だに信じられていないことは認めよう。
少なくとも我が元居た世界では、
おぬしのような少女が最強クラスの戦士・・・
などということは有り得ない話だった。」
アモン「むっ!
やっぱりなめてるし信じてないじゃん!」
レイン「うっ・・・すまぬ。」
アモン「もーー、しょうがないなー。」
これが・・・
ちょっとした事件と
ちょっとしたミラクルの顛末だった。
そしてみたび・・・今度こそ・・・
二人は帰路に就いた。
この日、この時間は、
レグスにとって初めて異世界の街を歩いた日であり、
そしてアモンにとってはその初めてを案内した日で、
二人ともにとって生涯忘れ得ない
かけがえのない時間だった。
二人の未来に待っているのは壮絶な戦いなのかもしれない。
今はその嵐の前の静けさに過ぎないのかもしれない。
覚悟に必要なのは『守りたいもの』があるかどうかだと言ったレグス・・・。
アモンによって街や人の魅力を知れたレグスにとって、
戻りたい場所、守りたい場所が出来たのは確かだった。
二人の人生に困難が立ちはだかり、
闇に包まれてしまいそうになったとしても、
今日という一日が一筋の光となり灯台となって、
歩むべき道標になるのかもしれない・・・。
ただ一人・・・
苦い思いをした人といえば、
突然現れたアモンに
まんまとその“初めて”を横からかっさらわれた
この人だったのだろう。
アリス「うう・・・どうしてこんなことに(泣)」
何日も前から考えていた今日の工程を書き記したメモを片手に
被害者アリスは悲しんでいた。
だが、アモンの強さを知るアリスはどうしても強く責める気にはなれなかった。
なぜならば、その強さはいずれ、
この国を守るための戦いに使われ、
そしてアモン自身が生死をかけた戦いをする日が来るのかもしれないからだ。
アリス「はあ・・・仕方ない仕方ない。」
アリスのその一言には、
アモンへの優しさがにじんでいた・・・。




