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黒豹王の物語 ◇第一部~序章~◇  作者: 種広交明
はじまり

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17/24

#017「街・・・デート?(中編)」



威勢の良いマルクの武具屋『双剣亭』を出た俺たちはまた歩き始めた。



アモン「ルンルルンルラ~♪

 ルンルルンルラ~♪」


またウキウキ鼻歌スキップを始めるアモン。


先程のナイフ投げでも度肝を抜かれたが、

この少女こそがこの国の最高戦力の一角である。


でも・・・やはり失礼ながら

パッと見はどこをどう見てもそう見えないのが逆に凄い。


レイン「う~~む・・・」


アモン「ん? なにレイン?

 じ~~っと私を見て。

 もしかして私のナイスバディに見とれちゃった?」


レイン「誰がナイスバディだ!」


アモン「ほれほれ~~」


クネッ

クネッ


レイン「腰クネクネすな!!」


アモン「まーたまた照れちゃって~

 ほれほれ~~♪」


クネッ

クネッ


レイン「はあ・・・

 これではまるでバカップルだ。」


アモン「ばかっぷ?

 何それ?

 おいしいの?」


レイン「ちがう。

 アホな2人ということだ。」


アモン「失礼だな~、

 アモンあほじゃないよ!」



ごっつい体の大男とちっちゃい陽気な少女・・・

これは一体どういう組み合わせなのか?

遠目には親子のようにも見えるこの二人は、

待ちゆく人達の目からは、さぞ異質に映ったに違いない。



レイン「そうだな、大変失礼した。

 してアモン、

 次はどうする?」


アモン「そうだな~。

 よし!

 あそこへ行こう!」


と言ってしばらく歩いて着いたのは・・・


『アシュリーの人形屋』


おしゃれな字体でそう書かれた

白く塗られたきれいな板が

店先に立てられていた。

板の周りを草花で囲っているのも美しい。


アモン「ここ ここ!」


レイン「ん?

 人形屋?」


アモンがまたドアを開けた。

カランカラン


アモン「やっほーーい♪

 アシュリーおばちゃん、

 アモンが来たよ~。」


店主アシュリー「あら?

 アモンちゃん!

 アモンちゃんじゃないの。


 よく来てくれたね~、久しぶり。」


二人は仲がよいのか自然にハグをした。


そのアシュリ―というふくよかな女性店主からは

温厚な性格と優しさがにじみ出ていた。

きれいな花柄のワンピースに

真っ白なエプロンと三角巾を着用している。


アシュリー「好きなだけ見ていってねアモンちゃん。


 って・・・あらまー、

 おばちゃんびっくりしちゃったわ。

 このお方は?」


アモン「紹介するよ。

 アモンの同僚、レインだよ。」


レイン「店主、お初にお目にかかる。

 我が名はレイン。

 アモン殿には日頃からお世話になっている。

 よろしくお願いいたす。」


アシュリー「まあご丁寧にありがとう。

 こちらこそよろしくね。」


レイン「アモン殿はこのお店によく来られるのか?」


アシュリー「そうね。

 アモンちゃんはお人形が大好きなのよ。

 うちの商品は全て私の手作り。


 アモンちゃんにはよく買ってもらってるし、

 他の人にもこのお店を勧めてくれて

 ありがたいわ。」


レイン「そうだったのか。」


店内の品揃えを見て、いたく感動した。

そこにずらりと並んでいる物は

現代の精巧なフィギュアとは全く違う

正真正銘の手作りの人形の数々だった。


簡素な木製の人形

布を縫い合わせ、中に詰め物をしている物

更には、着せ替え遊びをするためなのか、人形用の可愛らしい小さな服まで…


自分に人形を集める趣味はないが、

こんなに味わいのある物なら欲しいとさえ思う。

現代のアンティーク好きが見れば、

垂涎すいぜんの品の数々であることは間違いなかった。


しかし目の前に、既に垂涎状態の少女がいた・・・。


アモン「欲しい・・・欲しい・・・

 このお人形のおめめ・・・かわいい

 じゅる」


レイン「おいアモン・・・よだれ垂れてるぞ。」


アモン「ううううう」


ついには、獣のような声で鳴き始めるアモン。


レイン「仕方ないな・・・。

 店主、アモンが見ているあの人形と

 我はあちらの木製の物が欲しい。」


アシュリー「あら、ありがとう!

 すぐに用意するわね。」


アモン「へ!? 買ってくれるの?」


レイン「そうだ。」


アモン「ありがとうレイン!!」


アモンが喜びのあまり飛びかかって来た!

そして視界は真っ暗になった。


レイン「ぐぅっ!

 アモン、どこにくっついている。」


アモン「ああ、ごめんごめん・・・つい。」


アシュリー「まあ、お二人仲がいいのね。

 はい用意できたわよ。

 レインさんは初めてだし、

 アモンちゃんにはお世話になってるから

 少し割引させてもらうわ。」


アシュリーは簡素な麻製の袋に入れてくれた。

お代を払う時も言語統一の影響なのか苦労しなかった。

金額も円で聞こえるし、硬貨もそれぞれ何円ぐらいなのかが自然と分かった。


アモン「ありがとー、また来るね。」


アシュリー「ありがとね!

 二人ともまたいらっしゃい!」



またアモンの新たな一面を知って

再び歩き始めた。



アモン「ルンルルンルルンルルンル♪

 ラ~ンラ~ンラ~ン♪

 ルンルルンルルンルルンル♪

 ラ~ンラ~ンラ~ン♪」


可愛いおめめのお人形を手に入れ

さらにパワーアップしたウキウキ鼻歌スキップを炸裂させるアモン。


レイン「ノリノリのところ悪いが・・・

 次はどうするアモン?」


アモン「う~~ん・・・

 ちょっとおなかもすいてきたし・・・

 アレいっちゃいますかー!」


レイン「アレ?

 アレとはなんだ?」


アモン「おいしい食べ物だよ。

 着いてからのお楽しみ~♪」


と言ってまたしばらく歩いて着いたのは・・・


『名物 肉串!』


と書かれたのれんがかかった

こじんまりとしたお店だった。


!!!!!


レインの嗅覚がそのこうばしい香りに激しく反応した!


レイン「こっ!これは!!!」


肉とピーマンのような野菜が刺さった串が列を作り、

炭でジュージューとたまらない音と香りをさせながら焼かれていた。


アモン「どう? おいしそうでしょ?

 マリンおばちゃーん!

 今日もすごくおいしそう!」


店主マリン「あーら、誰かと思えばアモンじゃないか!

 うちの肉串はいつもおいしいのさ!

 元気だったかい?」


恰幅かっぷくの良い女性店主のマリンは

これまた白い三角巾とエプロンを着用し

腕まくりをした服で

肉串を焼きながらそう言った。


アモン「アモンはいつも元気!」


マリン「そうだったね。

 あら!

 今日はえらくでっかいお友達が一緒なんだね。

 あんらまーー・・・

 こんな立派な体見たことないよ!


 ってあんたどうしたね!

 よだれ垂らすほど腹減ってるのかい!?」


レイン「た、たまらぬ!!」


レインはそう言いながら、無意識によだれを垂らしていた。


アモン「あちゃ~、レインは肉を見るとこれなんだから。」


レグスは自分の頭が肉食動物と化してしまったせいか、

肉を見るといてもたってもいられなくなり

反射的によだれを垂らしてしまうようになってしまっていたのだ!

ましてや肉の塊がこのように串に刺さって

あぶられているのを見せつけられれば

飛びつきたくなるのを理性で抑えるのに必死だ!


アモン「はあ~・・・しつけのなってないワンちゃんなのだ。」


レイン「だ、誰がワンちゃんだ!

 アモン、それより早く我に肉を・・・じゅる」


アモン「おばちゃん、それじゃ肉串10本!」


マリン「あいよ!

 うちの肉は絶品だよ!

 なんてったってこの国が誇るコーラル地方の名産

 『コーラル黄金鶏』を直送輸入してるからね!

 柔らかくてジューシー!

 あぶった皮は風味よくこんがりするのさ!

 肉の味ではどこにも負けやしないよ!」


レイン「ううっ!もはやたまらん!」


まるで食事を前に“待て”と言われて

尻尾を振りながら耐えている犬と化してしまったレグス・・・。


アモン「おお~~、ちゃんと待てが出来る犬なのだ。」


レイン「まだか・・・まだか・・・」


マリン「はいできたよ!たんと食べな!」


やっと待てから解放された犬・・・

いや、レインは音速でマリンから肉串を奪い取り

一本を一気に口に放り込んだ。


レイン「むっ!むーーーーー

 んんん♪

 もぐもぐもぐもぐ


 んんんんん♪


 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ


 んんんんんんんんん♪」


せきを切ったように、

次から次へと肉串がレインの口の中に消えていく!


アモン「ああーーー!

 アモンの分が無くなっちゃうよ!!」


マリン「あんりゃまーー!

 こんな幸せそうな顔して肉串食べてくれる人初めて見たよ!


 こりゃちっとばかしサービスしてあげないとね。

 ほら、5本おまけだ!」


アモン「ええっ!?こんなにいいの!?」


マリン「今日は特別さ!

 こんなおいしそうに食べてくれて嬉しいったらないよ。


 それにあんた兵隊さんだろ?

 その立派な体で私たちのために戦ってくれるってんならさ、

 これぐらいさせてもらうよ!

 そのかわり、また買いに来ておくれ。」


アモン「ありがとーーマリンおばちゃん!!

 また来るね。


 ってちゃんとレインもお礼言って!」


レイン「うまいっ!うまいいいいいいい!!」


コンビニチキンの一件でもあったように

頭が肉食動物と化したことで

肉を味わうプロと化してしまったレグスの味覚は

人間の想像をはるかに超えて肉の味を堪能していた!!


レイン「女将!!絶品!絶品だーーー!!

 人生史上最高の焼き鳥だーーーーー!!」


マリン「ははははは!

 ありがとうよ!

 また来ておくれーー!」



そんなこんなで

アモンは一匹の犬?

を噴水のある広場へ連れていった。


二人はベンチに腰掛けて

残りの肉串をゆっくり堪能した。


レイン「はあ~~、美味であった!!

 ごちそうさま。

 満足満足♪

 アモン、最高の食事に感謝する!」


アモン「良かった。

 でもレイン行儀悪すぎるよー。」


レイン「ははは。

 おぬしにそれを言われてしまうとはな。

 しかしあれはだな、逆らえない本能によるもので・・・

 いや、すまない。」


広場の中央にある噴水は、現代のような勢いよく吹き上がる物ではなく、

せいぜい10センチほどの高さだった。

ポンプなど無くとも、水源との高低差を利用しているのだろう。

水遊びをする親子や噴水の縁に腰掛けて世間話をする人達の姿があった。

この光景だけを見ると平和そのもので、

とても戦争中とは思えなかった。


アモン「くぅ~~♪ やっぱりかわいい♪」


アモンはレインがプレゼントしたおめめの可愛いお人形にほおずりしている。

こうして見ていると本当に普通の女の子なのだが・・・。


レイン「そんなに喜んでもらえると買った甲斐がある。」


アモン「でも良かったの?

 もらったお金使ってもらっちゃってさ。」


レイン「うむ。

 我もこのお店の人形をすっかり気に入ってしまった。


 それに今日街案内をしてくれている礼もある。


 この世界に転生して初めて街を歩いた今日という日を生涯忘れないだろう。

 そして勿論、アモンに色んなお店に連れて行ってもらい楽しんだこともな。


 だからその思い出をこのように何らかの形で

 残しておきたいのだ。


 きっとこの人形を見る度に、今日の楽しい思い出がよみがえるに違いない。」


アモン「ありがとう・・・

 うん、きっとそうだね。」


レイン「というかアモン・・・

 おぬしの階級なら相当な給金をもらっているはずだが・・・

 人形など好きなだけ買えるのではないか?」


アモン「うん・・・ちょっと他に使い道があって。」


レイン「ん? ・・・そうか。」


アモンが少し訳ありげに答えたので、レグスはそれ以上聞かなかった。

その使い道が分かるのも後々になってのことである。


レイン「そういえばアモン、最初のマルクのお店で階級は言うなと言っていたが

 あれはどういうことだ?」


アモン「う~ん、それがさ・・・」


アモンの話によれば、以前ケイラスと一緒に街に来た際

ケイラスが近衛騎士団長の正装だったためか、

街の人達のケイラスに対する接し方がとてもうやうやしかったのだという。

アモンは街の人との気兼ねない交流を楽しみたいためか

かなり抵抗感があったそうだ。

アモンは普段から正装などせず、

それこそ見習い兵士のような軽装で動き回っている。

単純に正装は動きにくいことも嫌いな理由の一つらしい。

そのアモンがケイラスと一緒に歩いていても

せいぜい従者にしか見えなかったのかもしれない。

だがそれが幸いして、アモンの階級はバレなかった。

これより前からアモンは既に「アモン」という名前で街の人と接していたため

レインのように偽名を使うこともできなかったそうだ。


アモンはその立場上、重要な式典にも出なければならないが、

いつも決まって街の人に見つからない場所に隠れてやり過ごすのだという。

この少女がこの国の最高戦力の一角・・・

とは皆夢にも思うまい。




アモン「あっ、忘れてた!

 そういえばね、この泉には有名なおまじないがあるんだよ!」


レイン「おまじない?」


アモンはベンチを立って噴水のそばまで歩いて行った。


アモン「こうやって泉に背を向けて、

 頭の上を通過させるように泉に向かってコインを投げるんだ。」


レイン「へーー、それは面白い。」


噴水が出ている泉の底をよく見ると、

たくさんコインが溜まっているのが見えた。


アモンの話によれば、

コインは定期的に集められて寄付されるのだという。


レイン「それでどんなご利益があるんだ?」


アモン「またこの場所に戻って来られるようにって。

 この国は戦争で亡くなる人も多いからさ。」


レイン「そうか・・・我らも他人事ではないな。」


アモン「うん。」


こうして二人は、コインを一枚ずつ手に取り泉に背を向けて投げた。


レイン「アモン・・・おぬしも我も戦地に行くかもしれぬが、

 いつかまたここに戻って来て

 今日のように街を楽しみたいものだな。」


アモン「そうだね・・・。

 よーーーし!

 最後はアレいっちゃいますか!」


レイン「アレ?

 今度はなんだ?」


アモン「着いてからのおったのしみーー!」





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