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第2話 異世界転移

ブックマークありがとうございます。励みになります。

 MR? 聞き馴染みの無い単語が出てきて頭の中が少し乱れる。ただ優男は「VRとARに近しい」と言った。つまりMRとは仮想的現実...みたいな理解で良いのだろうか?


「少し違うかな?」


 そもそもの話、VR―――ヴァーチャル・リアリティ―――とは現物(オリジナル)でないが機能は現物と同じである環境を利用者の五感を刺激することによって作り出す技術。

 そしてAR―――オーグメンテッド・リアリティ―――とは利用者が知覚する現実空間をコンピュータを介することによって拡張する技術。


 そしてMR―――ミックス・リアリティ―――とはその二つの技術が融合し、そこからさらに発展した技術。驚くことにMRは頭部にガジェットを装着することによって現実の光景にコンピュータの映像が重なって表示されるのだとか。


 それらのことからVRは『仮想現実』と呼ばれ、ARは『拡張現実』、MRは『複合現実』と呼ばれているのだとか。


 そして俺が今回転移するのはMRが存在する世界。


「それに先駆けて”これら”を渡しておくよ」


 優男が俺にポイントレーザーの様な筒状の物とスポーツ用メガネの様な物とリストバンドの様な物を手渡す。


「これは?」


 俺は市販のポイントレーザーよりも少しスリムなデザインのそれと、スポーツ用メガネにしか見えない物と、リストバンド様な物を装着しながら訊ねる。


 ポイントレーザーの様な筒状の物のカラーリングは銀ともグレーとも言えそうで、マグマの亀裂の様に走っている線が青色に発行していてカッコいい。目に悪い光を放っているヘッドセットとは雲泥の差である。あれはあれで雰囲気があって良いんだけどさ。


 そしてメガネは度が入っておらず、とても透けて見えるし重さを感じない程軽い。二つの意味で付けている感覚が無い。それと後頭部にあるゴムはきつくも緩くもなくとても快適。デザインはポイントレーザーと同じ。


 リストバンドは...これに至っては何故渡されたのかが分からない。デザインは上の二つと同じで統一感がある。


「それらは『デバイス』。MRの中、即ち複合現実にログインする為に必要不可欠の物さ。でもあちらではそれらのデザインのデバイスは作成されていないよ」


 優男が自慢げにふふんと胸を張る。


「デバイスはちゃんと使用者登録をしなければならないのだけれど、今ちゃちゃっと済ましてしまおうか」

「キャラクタークリエイト!」

「―――は出来ないようになっているんだ、ごめんね?」


 優男曰くキャラクタークリエイトをしないのは防犯目的の為なのだとか。まあゲームの中だからって好き勝手しちゃ駄目だしな。ルールを守ってその範疇で楽しむのが真のゲーマーだからな。

 と虚勢を張った俺は空しくなって優男に使用者登録についての説明を受けた。


 ◇◆◇◆


「本当にこれで終わりなのか?」

「地球ではあと幾つかの段階を踏むのだろうけど、これから行ってもらう電脳世界(サバス)ではこれが一般的なんだよ」


 へー、と返す。無下にしているわけではなく驚きと感心、そしてこれから行く世界へ対する無限の可能性を案じているのだ。

 因みに先程登録中に教えてもらったのだが、ポイントレーザーの様な物はDW(デバイスウェポン)と呼ばれる物で、メガネはDG(デバイスグラス)、リストバンドはDB(デバイスバンド)


「《サバス》って俺の居た世界に似てるんだよな...」

「そうだよ。不自由に感じることは少ないと思うから安心してね...っともうそろそろ送るよ」


 俺は深呼吸を行いドッドッドッドとうるさい心臓の音を鎮めようと試みる。


「それじゃあ三十秒後に送るよ。気になることがあったらDBを使ってね」

「おう」


 十、九、八、七、六、五、四、三、二、一...


「それじゃあ送るよ!」


 プツン、という音を最後に俺の目の前は真っ暗になった。


 使命は無き異世界転移。使命というものがあるとすれば、それは「目一杯楽しむこと」。あの優男ならそう言いそうだ。

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