1.5 千鳥型水雷艇の設計
時は少し飛ぶが、1931年になると、”ミニ駆逐艦”を目指した水雷艇、千鳥型水雷艇の設計が始まった。
軍令部からの要求性能は”500t級の船体に12.7㎝砲3門と、533mm連装魚雷発射管2基を搭載し、35kt以上で航行可能”というものだった。
さすがにこれは無理があると思ったので、12.7㎝砲を三年式十二糎高角砲3門に変えてもらうように軍令部に直談判することにした。
「流石に12.7㎝砲を500t級の船体に搭載するのは無理があります。そもそも本砲は1基だけでも30t近くあります。このままの要求だと転覆して大惨事になりますよ!」
「なにか代替案はあるのか?藤本くん。」
「より軽量で連射力も高く弾道特性も優秀な、三年式十二糎高角砲を単装1基、連装1基で搭載することを提案します。」
「しかし、それで敵の駆逐艦とまともに撃ち合えるのかね?」
「夜戦の戦闘距離は長くて10km、短くて数kmです。そのような距離になると装甲による防御は無視できます。となると、重要なのは速射性能です。しかし、三年式十二糎七砲は装填速度があまり速いとは言えません。それならば、より速射性に優れ、威力もさほど変わらない高角砲を採用するべきです。」
「ふむ……速射性能が勝敗を決するか。確かに、敵駆逐艦の懐に飛び込む水雷艇には、重い一撃より数の一撃の方が理に適っているかもしれん。よし、藤本君。その案で進めてもよい。ただし、公試で期待外れの結果が出たら承知せんぞ。」
ということで、直談判は無事軍令部に了承させることが出来たので、横須賀工廠に帰って設計作業に戻ることにした。
「いやー……しかし、要求が通ってよかったですな。通らなかったらすぐにひっくり返るフネが出来るところでしたよ。」
「そうだな。しかし、このフネを水雷艇と言い張るのはなぁ……まあ、欧州勢がやっているし大丈夫だろう。」
「12㎝砲といえば最近八九式十二糎七高角砲が採用されたと聞きましたけど、アレはどうなんですかねぇ。三年式よりずっといいと思いますよ。」
「アレは大型艦用のものだぞ。それに水雷艇に載せたら三年式よりトップヘビーだ。」
「まあ、所詮は水雷艇だ。とっとと設計をまとめて、次の仕事をすることにしよう。」
と議論がまとまり、結果的に
千鳥型水雷艇
・基準排水量 520t
・満載排水量 730t
・全長 79m
・最大幅 7.4m
・機関 空気余熱器付きロ号艦本式2基
・速力 37kt
・武装
三年式十二糎高角砲 3門
533mm連装魚雷発射管 2基
大掃海具 1基
八一式爆雷投射機 2基、装填台 2基
爆雷投下軌条 1条
12.7mm機銃 1挺
となった。
更に同時期、私はもう一つの無理難題を攻略しなければならなかった。




