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36話 第5騎士団



「ここが第5騎士団の駐屯地か」


「タダの資料を取りに行くだけなのになァ」


団長から次に下された任務はある資料を第5騎士団へ取りに行くというものだった。


どうやら第5騎士団は他の騎士団に比べ、特に大きな組織であるため、駐屯地自体もここ第6騎士団の数倍の大きさがあるそうだ。

そのため全騎士団の資料を一括に保管する大規模な資料庫があるという。それぐらい在中する騎士も多く、警備もしっかりしているということなのだろう。


だが、


目の前に広がるのは大きな門。鉄製のそれは凝った装飾も無く無骨だが、檻のように堅牢だ。

門の奥に広がる建物群も、美しいというよりも、より実務的でシンプルなものが多い。


「こりゃア道に迷いそうだなァ」


ラヴェルは興味深そうに辺りを見渡している。


「おい、着いたぞ」


暫く歩くと、大きな箱のような四角い建物が現れる。


外壁に手を翳すと、どうやらここには大規模な結界が張られていることが分かった。

このくらいなら解析して()()()()()()()()()()()が、そんなことをやる意味は無い。


「ラヴェル、行くぞ」


「ああ」


ラヴェルは怪訝そうな表情で俺を見ている。

そう、見ているだけだ。






ずらっと並ぶ本の山からお目当ての品を見つけるのは気が遠くなる作業だ。


「見つかったか?」


「ユロリア王国とエルアデス帝国との民間による交易の記録だァ?そんなものは無ェよ!」


ラヴェルはイライラしながら積み重なった資料の山に手を突っ込んで荒っぽく探している。


「しかも十年分を複写して持って行かなきゃいけない」


「ハァ、面倒くせェ……」


ラヴェルは遠い目をして溜め息をついた。





黙々と探していると、ある資料が目に留まった。


『奴隷』とだけ書かれた背表紙が本棚から覗く。


なぜかこの二文字に惹かれ、スゥはその資料に手を伸ばす。


ここのエリアはユロリアと帝国に関係する資料しかない。

もしかしたらこの資料は奴隷貿易についての資料なのかもしれない。


ペラペラと頁を捲り、記録を遡る。


そこには捕縛した敗戦者を奴隷にした記録とそれをどこに売りさばいたのかが事細かに記録されている。

戦争を繰り返してきた帝国だからこその資料といえよう。

国家が進んで奴隷貿易を行っているとは、業が深いとしか言いようが無いが。



だが、頁を捲るたびに、徐々に緊張していく自分がそこにいた。



克明に記録されたそれに意識が持っていかれる。

もしかしたらと、可能性を考えてしまう。


頁を捲る手は止まらない。

四年前、五年前、六年前と記録を遡っていく。



「あ」



無意識に掠れた声が出た。


現れた文字列は懐かしさと苦しさを同時に呼び覚ます。


『フォティ。灰色髪、女、推定十五歳、ヴラディア人、バイエル子爵家に売却後、ユロリア王立魔法研究所へ譲渡。』


「姉さん」


生きていた。あの地獄の夜を生き抜いていたんだ。もしかしたら、まだどこかにいるのかもしれない。

もしそうなら、俺が見つけに行かないと。

怪我はないか、穢されてはいないか、寂しくないか、辛い思いをしていないか、死んでしないか、


頭の中に轟音が響き、今にもここを飛び出て行きたい気持ちをぐっと堪える。


姉さんを追うのは全てに片を付けてからだ。

こんな人生を歩ませた憎い元凶をこの手にかけてからだ。


スゥは決意して手を強く握りしめる。



「見つかったぞー!」


突如、少し離れた所からラヴェルの声が聞こえた。


見れば資料の山から分厚い冊子を持った白い手が見える。


「ああ、今行く」


そっと、奴隷と書かれた資料を棚に戻す。


本当は燃やしてしまいたかった。


けれど、そんなことをしたら化けの皮が剥がれてしまう。

ここまで慎重にやってきた意味が無くなる。



浅くなった呼吸を整えるように深呼吸をした。


全てを終わらせるにはまだ早い。















不定期更新申し訳ありません。



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