過剰摂取
やっほー、オタクくん。見てるー?
見てるんだったら、今すぐに俺を助けて欲しいんだけどねー?
オタクくんが今から何かしたところで、たぶんもう間に合わないかなぁ⋯⋯。
知ってる、オタクくん?
サソリ娘に恋愛用の毒を延々と飲まされ続けてると、毒のせいで段々と何かが壊れていくような感じがし始めてくるんだぜ。
なんだか頭がぼーっとしてきて、まるで魅了魔法でも掛けられているかのような⋯⋯。
なんなら、毒針から滴る雫を、自分から舐めたいなーとまで感じてる俺がいる。
俺のお腹はもういっぱいで、喉も乾いていないから、液体を飲むなんて苦しいだけなのに。ルゥケットちゃんの毒を飲んでると凄く幸せで落ち着くんだ。
哺乳瓶でミルクを飲んでる赤ん坊って、たぶんこういう気持ちだよ。
いくら薄めてあるとは言っても、大量に飲んだらヤバそうなのにな。
数日分の薬をまとめて飲んだら救急車、なんて注意喚起もあるし、そろそろ不安になってきた。
なのに、俺の精神は妙な安らぎに包まれている。
用法用量なんて気にせずに、がぶ飲みしちゃっても大丈夫だろうと甘い考えが浮かんでくる。
ただの水でも、体液の濃度が変化してぶっ倒れるとか普通にあるんだけどなぁー⋯⋯。
オタクくんへの実況がしたいから、こういう冷静な考えを頑張って維持してるんだけど、それもなんか、どうでもいいかなーって気持ちになってしまう。
「ほらほら、ユウジさん♡ もっと飲んで♡ 私の毒は、まだまだ、たぁ~っくさん、ありますからね♡」
「んぐ⋯⋯っ、ぅう⋯⋯! ルゥケット、ちゃん⋯⋯っ!」
「どうされましたぁ? ああ、もしかして、お口から飲むのに飽きちゃったから、皮膚から吸収したいとかですかぁ?
それとも、お腹の中身がちゃぷちゃぷで、トイレがしたいって報告ですかぁ?」
ルゥケットちゃんが甘く可愛らしい声で、なんだか恐ろしいことを言う。
彼女は俺の頬へとじゃれるようなキスを繰り返し、恍惚とした笑みを浮かべた。
がっちりと繋がれた俺の手を、離してくれそうな気配は無い。
これはもう、絶対に、俺の魅了魔法の掛け方がマズかったって話になるよな。
恋心からくる願望や衝動を我慢するなって命令したのがマジで良くなかった。
俺の限界に配慮して引き下がる必要も無いのだと、そう思い込ませたのだから、彼女は暴走はそうそう止まらないだろう。
魔法を解除して正気に戻すのが良いのかなぁ⋯⋯。でもそれ、もてあそび罪で戦闘になったら大分キツいぞ⋯⋯。
魅了が解けたら、普通に報復で溶かされかねん。
後々のことも考えるのなら、ルゥケットちゃんの記憶を封じる命令も追加で聞いてもらわなくちゃならない。
だけども、暴走状態じゃ、俺の話など聞いてもらえない。
⋯⋯やっぱこれ、ルゥケットちゃんが満足するまで演技して付き合ってやるしか無くねぇ?
うん。そうだな。それしか無いな。
彼女の欲望が満たされるなり、行為に飽きるなりすれば、新しい命令を刷り込むチャンスがやってくるかも。
まあ、心配な点としては、そうなるまでに俺が健全な意識を保ち続けられるかって部分だが⋯⋯。
俺はインキュバスを志す男だ! そこはなんとか耐えてみせるさ! サソリ娘の欲望を満足させられなくて、なにが人外大好きか!!
俺は彼女の毒に酔った振りをして、甘えるように体をそっと擦り寄らせる。
たぶんルゥケットちゃんは、完璧超人なイケメンよりも、欠点のあるタイプが好みなはずだ。
俺は彼女の言葉を信じて、そのような演技を心掛けた。
⋯⋯具体的な内容への言及を避けているのは、アレだよ。その⋯⋯、察してくれよ、オタクくん。
他人には言いづらいことをするんだよ!!
ルゥケットちゃんがたびたび、「やってほしいなぁ~♡」って顔で見てきてるから!
俺、頑張って生還するからさぁ! 応援よろしくね、オタクくん!!
それじゃあ、次回! なに食わぬ顔でお会いしましょう!!
もし俺が、珍しい趣味に目覚めていたとしても、詮索は絶対にしないでくれよな!




