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アワアワする朝


「そう言えば、窓の外のアレは何なんだ?」


 俺は食堂の窓を指差した。

 真っ白で、ほのかに光ってる何かが、びっしりとガラスを覆っている。


「ああ、そうか。魔力が薄い国で育ってるキミには想像もつかないか。

 アレは、バブルストリームと言ってね。大気中の魔力が突風で掻き混ぜられて、泡状に凝固する自然現象の結果だよ」

「つまり、あの白いのは泡状に固まった魔力結晶ってことか」

「そうだね。触っても無害だし、一日も経てば、大気に溶けて消えるから。特に気にしなくて良いよ」


 なるほどな。それじゃあ、外に出ても大丈夫なのか。それは良かった。

 俺は手早く朝食を胃に詰め込んで、「ごちそうさま」と手を合わせる。


「はい、お粗末様。片付けはオレがやっとくよ」


 ジルケアがそう言いながら、空になった皿を下げていく。至れり尽くせりだ。ありがたい。


「よっしゃ! 頼んだぜ、ジルケア!

 ところで、ここにシャベルとかある? ちょっと土を掘りたいんだけど!」

「園芸道具なら裏庭にあるよ。でも、それで畑を掘り返したり人を殴ったりはしないでね」

「はいはい! そんじゃ、後片付けはよろしくー!」


 俺は笑顔で、食堂の外へと飛び出した。

 裏庭の場所は知らないが、建物の外周沿いに走ればそのうち着くだろう。

 俺を冥堂の回廊から外に出た。


「うわっ、外めっちゃ泡だらけ!」


 地面だけでなく、壁や木々まで魔力の泡で覆われている。

 どこもかしこもキラキラふわふわ。雲の上みたいで幻想的だ。

 珍しい光景に目を取られながら、俺は泡だらけの道へ足を踏み出した。


「ぬわァ!」


 つるりと足の裏側が滑って、尻餅をつく。

 やわらかな泡の層がエルシーの体で脇に押しやられ、もにょんと表面を波立たせる。

 なんだこれ、めっちゃ歩きづれぇ!

 思ってたよりもヌルヌル滑るし、マジで石鹸の泡みたいな感触だ。

 しかも、ここで転んだせいで下半身が泡だらけになってしまった。


「⋯⋯ここは魔法で! 水流よ、我が身につきしものを流せ!」


 俺はエルシーの魔法知識を引っ張り出して、自分の体についた泡を洗い流す。

 ついでに、水流の勢いを利用して、地面の泡をしっかりと弾き飛ばしてやった。

 これなら、泡で滑らずに立ち上がる事が出来るだろう。


「このまま水で道を切り開きながら歩いていけば、裏庭にもすぐに辿り着けるな!」


 俺はバシャバシャと水魔法で泡をどかした。

 なんか、通販番組の映像みたいだ。車用の高圧洗浄機(パワーウォッシュ)とか、そういう感じで、石畳の道が泡の中から現れていく。


 冥堂の壁沿いにぐるりと回って進んでいくと、裏庭の畑に辿り着いた。

 ここも当然、泡だらけ。

 ほうれん草の葉っぱみたいなのがずらっと畝に並んでるんだが、真っ白に染め上げられている。


「ジルケアは、ほっとけば消えるから大丈夫って言ってたけど⋯⋯。野菜を石鹸水に浸けてるみたいな感じにも見えるし、大丈夫なのかって不安になるな⋯⋯」


 余談だが、野菜を洗剤で洗うのは、農薬に関する法律がガバガバだった昭和とか、人糞肥料の問題が多かった時代の風習である。

 この異世界だと、農薬に頼らず魔法で虫除けをしたり、肥料もマジックポーションだったりで、野菜に洗剤を使うというのはまずありえない。

 そういった背景を踏まえると、ここのマンドラゴラ畑が泡だらけになってても、影響無効化の結界なり何なりで、きっと問題はないのだろう。


「そもそもこの泡、魔力が物質化した物っぽいし。魔法生物のマンドラゴラちゃん達にとっては、恵みの雨みたいなものかもなー」


 であれば、是非とも、たっぷりと魔力を吸収し、立派な人外娘ちゃんへと成長して欲しいものだ。

 カワイコちゃんなんて何人いても良いからな!


「なんなら、後でジルケアに種芋もらって、俺だけのマンドラゴラちゃんを育て上げるのも面白いかもなぁ⋯⋯!」


 確か、オタクくんが紹介してくれた漫画の中に、『植物系の魔物娘を集めて農園スローライフを楽しもう!』みたいなあらすじのヤツもあった筈だ。

 ハーレム作りの一環として、魔法生物の魔族化を研究してみるのは、悪くないだろう。


「⋯⋯いやいや。夢のある話だが、今はサソリ娘ちゃんだ。この話は後回し!」


 俺はマンドラゴラ計画を棚上げし、本来の目的に戻ることにした。

 シャベルは、マンドラゴラを掘り出した畑の穴に突き刺したまま放置されている。


「よし。さっさと種族リロードをやって、ルゥケットちゃんとデートしちゃうぞ!」


 俺は水の魔法で泡を押し流し、目的のシャベルを手に取った。

 次回はいよいよ念願のデートだ! 楽しみにしててくれよな、オタクくん!


 ⋯⋯え? お前の予想はいつも外れる? 次回もきっとデートは出来ない?

 そんな、俺がまるでポンコツのインキュバスみたいな言い方しないでくれよ! 大丈夫だって、イケるイケる!

 イケなかったら木の下に埋めてくれても構わない⋯⋯って、こういう時には言うんだろ?

 俺は、俺がルゥケットちゃんとのデートでたっぷりイチャイチャ出来る展開に一億オレポイントも賭けとくぜ!

 ちなみに、レートは百オレポイントで肩叩き券一枚くらいの価値だと思ってくれ!

 次回は絶対に人外娘とのイチャイチャデートを見せつけてやるから! オタクくんも俺の成功にポイント賭けていってくれよな!


 それじゃあ、次回! 答え合わせをお楽しみに~!



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