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霊体のまま


「ええっと、レイチェルさん。レイチェルさんは、この家の⋯⋯守護霊みたいなものですか?」


 俺は檻の中から問い掛けてみた。

 何はともあれ、情報収集。それが脱出ゲームの基本だと、オタクくんもそう言っていた。⋯⋯気がする。

 レイチェルさんはオドオドとした様子で答える。


「守護霊だなんて⋯⋯。そんな大したものじゃないわ⋯⋯。

 ここは、私の娘の家なの」 

「娘さんがいらっしゃるんですか。へえー、それはそれは⋯⋯」


 ⋯⋯大丈夫かな、これ。ハーレムに誘って。

 この国の法律だと、幽霊になってる時点で離婚扱いになるから不倫犯罪は回避できるが、いや、しかし⋯⋯。

 旦那から「ボクはまだレイチェルのことが好きなのにー!」って刺されちまうのはゴメンだぞ。

 幽霊なんて、墓地で探せばいくらでも簡単に出会えそうだし、レイチェルさんのスカウトには少し慎重になるべきだろう。うん。


 俺がそんなことを考えていると、レイチェルさんが娘さんの話をし始める。


「娘は昔から、魔法使いに憧れててね⋯⋯。村から離れた場所に家を建てて、薬草なんかを育ててるのよ」

「へえ。薬草。そういえば、そこにヨルモルギーとか干してありますね」

「ええと⋯⋯、ごめんさい。私はあまり詳しくなくて⋯⋯。薬草に興味があるってことは、あなたはお医者様なのかしら?」


 レイチェルが問い掛ける。

 そう言えば、俺はまだ名乗ってなかったな。


「自己紹介がまだでしたね。俺は⋯⋯、エルシー。王都で魔術師をしています」


 薬草の話が出たから、ここはエルシーとしての肩書きを出そう。

 突然「異世界転生者でファンタジーゲームの話が好きだから薬草も云々~」と話しても混乱させるだけだろうし。

 俺の自己紹介を聞いて、レイチェルさんは驚いた顔で言った。


「まあ、凄い⋯⋯! 王都の魔術師さんって、あれよね、たまに魔獣狩りに来る⋯⋯」

「それは騎士団の魔法兵ですね。俺の仕事は、古文書の現代語訳とか、遺物の鑑定とか、そういう地味なのばっかりです」


 魔導師の名門であるマッドリバー家に寄せられた依頼の解決が、エルシーの主な収入源だ

 魔術師と聞いて真っ先に連想されるような、華やかな元素魔法を使う機会はほとんど無い。

 勇者としてのエルシーに求められているとのも、戦闘ではなく後方支援だとアレックスには言われていた。

 神様がわざわざ魔導伯の娘を選んだのは、魔術的な知識の面から、魔王の討伐方法を思いつくためなのだろう、と。

 そんな訳で、エルシーは救世主アレックス様のように、魔獣退治でキャーキャー言われたり、世界を救うため頑張れと激励を貰ったりする機会はほとんどない。

 そもそも、聖女の正体自体が市井には秘匿されている。

 教会のお偉いさんが「悪魔に襲われてはいけませんので、成長するまでは『教会本部で秘密の修行をしている』ことにしましょう!」とか言い出して。

 ⋯⋯悪魔被害で魔術師に対する風当たりが強いから、教会関係者ってことにしたほうが民衆に受け入れられるだの何だの⋯⋯。

 オトナの考えることってややこしくて難しいよな。


 ──おっと、話がまた脇道にそれた。

 今はこの檻からの脱出について考えないと。


「レイチェルさんは、娘さんのことが心配で、よくこの家に来てるんですか?」

「ええ、そうよ。引っ越した頃から欠かさず毎週。でも、最近は話し掛けても無視されちゃってて⋯⋯。

 反抗期ってやつかしら? なんだか変な魔導書も買ってて⋯⋯。

 怪しい道具も家に増えてるし、悪い悪魔に唆されて、邪神崇拝でもさせられてるんじゃないかって、心配だわ⋯⋯」


 レイチェルさんが深く溜め息を吐いた。

 怪しい道具? そんなもの見当たらなかったけどな⋯⋯。

 俺は改めて室内を見回す。棚には乾燥した薬草の詰まった瓶と、魔導書らしき本が数冊。

 後は、魔香木の灰を入れておくための壺。たぶん肥料用かな。

 魔導書とか壺のデザインがちょっと禍々しいから、魔法に詳しくないレイチェルさんにはヤバいモンの見えてんのかな?


「一般的な薬草農家って感じで、問題無さそうですけどねぇ」

「そうだと良いんだけど⋯⋯。一週間くらい前に、普段は飲まないお酒をたくさん呑んでてねぇ⋯⋯。

 よくわからないんだけど、失恋か何かしたみたいなの。それからなのよ、私のことを無視したり、おかしな物を買い始めたり⋯⋯。

 変な格好の男の人を家に連れ込んだこともあったわ⋯⋯。娘ももう良い歳だから、生活にはあまり口出ししたくないんだけど⋯⋯。

 でもほら、若い子の失恋に漬け込んで依存させる詐欺とか、あるでしょう?」


 母親としてはやっぱり心配なのよね、とレイチェルさんが窓の外を見る。

 外は日が暮れ始め、空が茜色に染まってきている。

 家主だという娘さんもそろそろ帰ってくる頃だろう。


 彼女が何のためにこの悪霊捕りの鳥籠を設置したのかは、まだ断定は出来ないが⋯⋯。

 問答無用で何でも除霊したがるエクソシストでも横から突っ込んでこない限りは、まあ、どうにでもなるだろう。

 なんたって、俺はラッキーボーイだし!

 なんだかんだで今回も良いほうに進むって!


 ⋯⋯はいはい、なぁに、オタクくん?

 そういう言い方は『フラグ』?

 あー、なんだっけ、それ。ごめん、その言葉の意味忘れちゃったー!

 まあ、そんな心配そうな顔すんなって!

 多少のトラブルは、俺の直感で何とかするからさ!


 それじゃあ、次回! 次回の予告!

 次回、薬草農家が人外ハーフのカワイコちゃんなら良いのにな!! お楽しみにー!



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