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高校に入学したのに女友達が出来ない。それどころか、男友達に振り回されている。  作者: 駿河犬 忍
第三巻 シークレット・オーケストラ
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第四十五話 陰陽師の兄弟。

 体育祭も終わり、二学期中間試験も終わった十月の中旬頃。まだ寒くなり切らない、少し暑い日もある様などっち付かずな季節。

 放課後、俺は西条寺さんと友永さんに呼び出された。

 いつもの人目の無い渡り廊下へ行く。

「聞いたわよ。あたし達の会員が迷惑かけたんだってね?ほんとにごめん!」

 友永さんが頭を下げた。

 告白されたかと思って無駄に振ってしまった挙句、三人の男に詰め寄られたあの日を思い出す。結局、弟の顔を思い浮かべて言っただけ、と言う事にして難は免れた。

「いやいや。そんなに謝らないでくれ。ラブレターかと勘違いした俺も俺だし。」

「今後も同じ事が起きない様、わたくし達のルールに新しくつかさを利用しない事を追記致しましたわ。気が回らず申し訳ないです。」

西条寺さんも綺麗な姿勢で頭を下げた。

「それは助かる!ありがとう。俺はもう気にして無いから大丈夫だ。」

 俺が言うと、二人はパッと頭を上げた。

「じゃあ、本題に入るわね。」

友永さんは腰に手を当てて、クリクリの大きな目を俺に向ける。

 俺は驚き、少し身動いだ。

「え!今の本題じゃ無かったのか!?また詰め寄ったりしないよな?」

「そんな事しませんわよ!学園祭の前夜祭で歌って踊るらしいですわね?アイドルの様に。」

 西条寺さんは腕を組み、俺を凛の見据える。

「あ、その話か。うん。一応、俺と和田はバックダンサーで、マジ研の先輩方とひゅうが、りんのすけをメインでやるらしい。まだ練習は始まって無いけど。」

「それ、あたし達も手伝わせてよ。あたし、こう見えてアイドルは詳しいのよ!衣装のデザインを考えてあげるわ!」

友永さんは、えっへんと胸を叩いた。

「わたくしの知り合いにプロのダンス講師の方がおりますの。わたくしと友永さんでプロデュースさせて頂けないかしら。」

 西条寺さんは微笑んで言った。

「それは心強い!りんのすけとひゅうがに聞いてみるよ。」

 俺は男友達二人に断られそうな一抹の不安を抱えながら、苦笑いを浮かべた。

「今確認して。」友永さんが上目遣いで睨む。

「あ、はい。分かりました。」

俺はポケットからスマホを取り出し、二人にメッセージを送った。

 りんのすけは直ぐに返事を返してくれた。

「任せるって、りんのすけから返事が来たぞ。」俺が言うと、西条寺さんはメロメロ顔になる。

「ふふふふ。りんのすけ様。お速い的確な判断、わたくしへの信頼が伺えて恐悦至極ですわー!」

「元々、プロの講師を雇って、本気練習はするつもりだったらしいけどな。」

「余計な事言わないで下さる?」

 西条寺さんに睨まれる。俺は目線を逸らして、目を泳がせた。

 話している間に、ひゅうがからも返事が来た。

「『友永は昔から絵が上手いからお願いしたい』ってさ。」俺がメッセージを読み上げると、友永さんは顔を赤くした。

「ふーん。まあ、当然の判断よね。」

 そう言いながらも、口元が緩んでモゴモゴしていた。

「また練習の日程が決まったら連絡するよ。協力してくれてありがとう。前夜祭のパフォーマンス大会で優勝目指してるから、そのつもりで一緒に頑張ろう!」俺は二人に頭を下げた。

「当たり前ですわ。わたくしが関わった以上絶対に優勝させますわよ。」

 その後二人と別れ、俺は走ってオカ研の部室へ向かった。

「ごめん!」俺は部活のドアを開け直ぐに謝った。

 りんのすけは、腕組みをしたまま言った。

「構わないよ。急な呼び出しなら仕方ない。」

「つかさの為なら、おれはいくらでも待てるよー!」ひゅうがはニヒヒと笑う。

 今日はグラウンド整備で、サッカー部が休みだったため、三人で遊ぶ約束をしていた。

 学校を出て、取り敢えず静丘駅に向かう。遊ぶ場所は決まっていないが、街中に行けば何かあるだろうと言う事だ。

 駅の北側にある、有名な店が立ち並ぶ通りを歩きながら、ひゅうがはお腹を摩った。

「おれ、お腹すいたなー。」

「マック行くか?」俺の提案にりんのすけが首を傾げる。

「デスクトップPCのアレか?」

「違う!黄色いMの方。CMで見るだろ?」

俺はつい突っ込む。

「ああ。あれか。一度も食べた事ないが、美味しいんだろうな?」りんのすけは眉間に皺を寄せる。

「安くて美味いぞ!おれはね、BLBが好き!」

「何だそれは。微生物の調査でもするのか。」

「えー?しないよ!ベーコンとレタスのハンバーガーのこと!りんのすけってホントのホントに行った事ないんだなあ。」

 ひゅうがは驚いた後、目線を上の方に動かして何か考え始めた。その後、腕を組み首を傾げる。

「ひゅうが。もしかして、りんのすけに何食べさせようか考えてるだろ?」

「何でわかったの?!つかさってエスパー?」

「違うよ。もう半年も一緒に居たら、何となく分かる。」

 ひゅうがはキョトンとした顔をして、何かに気が付き顔を赤くした。

「それは僕も同感だ。つかさもひゅうがも分かりやすいからな。」

 りんのすけは、優しく微笑みながら言った。

「自分は違うと思ってるだろ?りんのすけも、大概分かりやすいからな。」

「何だと?ふむ。それは初めて言われたな。何を考えているか分からないなら、よく言われる。」りんのすけは顎に手を当てて悩み始めた。

「そりゃそうだろお!友達同士は気を許してるから分かるんだし!」

 ひゅうがの言葉に、りんのすけは俺達を交互に見た後、幼い少年の様に嬉しそうに笑った。

「すまない。純粋に嬉しくなってしまった。」

 顔を赤くして、りんのすけはそっぽを向いた。

 俺はひゅうがと目を合わせて、お互いにニヤニヤする。俺とひゅうがでりんのすけを挟む様に移動した。

「まあ。俺達はただの友達じゃなくて、親友だからな。」俺は言いながらりんのすけの肩に腕を回す。

「そうそう。かけがえの無い親友!心の友と書いて心友!」ひゅうがもりんのすけの肩に腕を回す。

 りんのすけは、更に顔を赤くして、俯く。肩に力が入り、少し膨らむのを腕で感じた。

「煩い!!分かったから黙ってろ!!」

 りんのすけは両手でアッパーをかまして、俺とひゅうがは吹っ飛んだ。

 倒れる俺達を他所に、りんのすけは先に行ってしまう。

 顎を抑えながら、急いで追いかけた。

 店に入り、注文をする。

 りんのすけは、俺と同じダブルチーズバーガーを頼んだ。ひゅうがはBLBを単品で10個頼んでいた。

 二階にあるテーブル席へ行き、食べながら談笑する。夕飯時でも無いこの時間は、中高校生が多かった。

 りんのすけは、ダブルチーズバーガーを丁寧に開けたが、手が汚れない様に半分剥がす事を伝えると、その通りにした。

 一口頬張ると、幼い少年の様な笑顔になっていた。

「味がゴチャゴチャしているが、何とも言えない美味しさがあるな!」

「おれのBLBも食べる?」

「一口貰おう。」

 りんのすけは、ひゅうがの食べかけを奪い取って一口齧った。

「いっぱいあるんだから新しいの食べろよ!」

ひゅうがはりんのすけのバーガーを奪おうとしたが遅かった。

「これも、なかなか美味いな!」

 りんのすけは、食べかけの食べかけをひゅうがに返した。

「美味かったなら良いけどさあ。」

 ひゅうがは受け取ったバーガーを二口で食べた。

 俺は二人のやりとりを見ながら、チーズバーガーを食べ切り、体育祭の話題を振った。

「ひゅうがのクラスは、何やるんだ?」

 ひゅうがは、新しいバーガーに手を伸ばしながら答える。

「確かお化け屋敷だった気がする。サッカー部はエキシビジョンマッチやるから、当日参加出来るか分かんないけどなあ。そっちのクラスは何やんの?」

 りんのすけはジュースを一口飲んだ後、腕を組みへの字口になって言った。

「……メイド喫茶だ。」

「へえ!人気出そう。男子の間では可愛い子が多いクラスって言われてた気がする。」

 ひゅうがはバーガーを頬張った。

「それは初耳だ。結局、話をする女子は友永さんと西条寺さんだけだからな。」

「その二人も美人だの何だのと持て囃されそうだがな。」りんのすけは、ジュースのカップに付いた水滴を指でなぞった。

「癖が強いと言うか、何と言うか。そう言う理由でモテては無いと思う。」

 ひゅうがは苦笑いする。

「はあ。女装したく無いなぁ。」俺はボンヤリと呟いた。

 ひゅうがは目を丸くして、口に入れたバーガーをほとんど噛まずに飲み込んだ。りんのすけは目を逸らす。

「メイド喫茶って、女装すんの?!」

 ひゅうがは驚いた顔のまま、大きい声で聞いた。

「静かにしろ。ただの女装メイド喫茶だ。」

 りんのすけは、ひゅうがを睨む。

 ひゅうがは首を横に振る。

「ただのじゃ無いだろ!どう考えても!あ、そうか。つかさがアッチの世界に行ってた時だもんな。出し物決める日。」

 ひゅうがは、何かを察して同情の顔を俺とりんのすけに向けた。

「止めろ。そんな目で俺を見るな。はあ。いっその事、女の子になる薬を飲んで出た方がマシだ。」

 俺ため息を吐き、ジュースを一気に飲んだ。空になったカップから、ズズズと音がする。

「飲めば良いじゃ無いか。あるんだから。」

 りんのすけは、当たり前の事の様に言った。

「それもそうだな。有り難く使わせてもらおう。あ、そうだ。ずっと相談しようと思ってたんだけど、この前の鬼門の中で、野崎先輩が陰陽師の魔法みないなのを沢山使ってたんだ。それを使えば、斎藤一家の地下幽霊を何とかして貰えるんじゃないか?」

「そんなに凄い陰陽師なのか?そうは見えないけどな。」りんのすけは疑いの目を向けた。

 ひゅうがは首を傾げて、考えながら言った。

「うーん。でも鬼門開けたり閉めたり出来るんなら、充分凄いんじゃないかなぁ?」

「中に居た化け物の動きを鈍らせたり、結界を張ったり、神様みたいな者を召喚したりしてた。」

 俺はその時の事を思い出しながら話した。

 二人は驚いた顔をして少し固まった。

「ただの馬鹿では無かったんだな。僕が人の見る目を誤るとは。」

 りんのすけは顎に手を当てて、少し俯いた。その後、ニヤリと口元を緩める。

「よし。野崎先輩に依頼をしよう。なるべく早くな。」

「何企んでンだよ、クソガキ共!」

 声がする方を振り返ると制服姿の野崎先輩と学ラン姿の中学生くらいの男の子が居た。

 サイドを大きく刈り上げ、トップにある長めの髪をワックスで整えている。耳にはピアスが開いていて、少しヤンチャな感じだ。手には野崎先輩と同じ布製の籠手が嵌められている。

 男の子は、俺達にペコリとお辞儀をする。意外と礼儀正しい。俺とひゅうがもお辞儀を返した。

「僕の買った平屋に住む幽霊が厄介でね。良かったら祓って頂きたい。報酬は用意する。」

 りんのすけは立ち上がり、先輩の前まで行くと綺麗なお辞儀をした。

「ケッ。お祓いなんて誰でも出来るだろォが!他を当たりやがれ。」

「アニキ、俺やってみたいです。俺で良かったらやりますよ!」

 男の子は笑顔で言った。笑うと目が細くなって、幼さが出る。

「僕の名前はりんのすけだ。君は何者だ?」

りんのすけは男の子に手を差し伸べ握手を求めた。

「オイ!勝手に自己紹介始めてンじゃねえよ!」

 野崎先輩を無視して、男の子はハンバーガーの乗ったオボンを片手に持ち変える。空いた手で握り返した。

「野崎陽丸(たかまる)の弟の、野崎陰丸です。よろしくお願いします。」

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