↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/74

第三十二話 そうだ、地獄行こう。え?

 週明けの月曜日。昼休みの屋上。

 何故かひゅうがはちょっとだから不機嫌だった。

「何かあったのひゅうが?」川島が聞いた。

「別に。おれも夏祭り一緒に行きたかったとか思ってないし。」

ひゅうがは大きなお弁当箱を、かき込んで頬張る。

「そう言う事ねー。」川島は意味深な笑みを俺に向けた。

「予定が合ったら、一緒に行こう!な!」

俺は苦笑いをしながら、ひゅうがに言った。

「うん!……でもいつ行けるかは、今の所微妙なんだよなぁ。夏休みに、海外で行われるトレーニングに誘われたたんだ。」

「凄いじゃないか。」

りんのすけは驚いて、目を見開いた。

「ありがとう!自分のレベルアップに繋がりそうだから楽しみなんだあ!夏休み明けにある大会、良かったら皆んなに応援して欲しい。もっと強くなってるから!」

「絶対行くよ!」俺はちょっと食い気味に言う。

 ひゅうがは嬉しそうに、へへへと笑う。




 蝉が鳴き、日差しが強くなり、ジメジメとした熱気。そして、大量の課題。

 ついに夏休みが始まった。

 七月末にサッカーの全国大会がある。オカ研のメンバー皆んなで応援に行く。開催場所は北海道。りんのすけの用意したプライベートジェットに乗って向かった。

 友永さんと数人のファンクラブ会員も応援に駆けつけていた。北海道まで来てくれる人が何人も居るのは、ひゅうがの性格が成せる技だろう。

 ひゅうがは相変わらずの強さを魅せつけていた。全国の猛者が集まるこの大会でも、ひゅうがは周りに差をつけている様だ。

 途中、負けそうな試合もあったが、延長戦で逆転し、高校サッカー大会で優勝を勝ち取った。一年生でここまで活躍する選手は居ない。取材陣もひゅうがを取り囲み、新聞やテレビでも報道されていた。

 その後、ひゅうがは高校生代表が行く海外遠征のトレーニングに参加する事が決まった。

 海外へ旅立つ日に、俺はひゅうがを見送りに行った。八月頭から八月の中旬までの約二週間の期間で行くらしい。

 暑さで倒れないか心配だったが、室内のトレーニングが主だという事で安心した。

 俺の夏休み期間における通常の過ごし方は、課題は毎日コツコツと進めたり、時々、りんのすけの家に行って一緒に課題を片付けたりした。

 川島とも一緒に過ごした。二人で大きいプール施設へ行ってはしゃいで遊び倒す。その日のためだけに、新しい水着も勿論用意した。

 プールでは、川島を振り回している女子達に遭遇したが、それはまた別のお話。

 なんだかんだで、充実した夏休みを送れている。休みの期間はあっという間に過ぎて、遂に部活の時を迎えた。

 八月十三日の日曜日。静丘駅の北口にある、竹千代君像の前で待ち合わせる。

 既に進一と和田は到着していた。

 進一の私服は、モダンな感じだった。白と黒でまとめたファッションで、とても似合っている。

 和田は、何と言うか。変なキャラクターがデカデカとプリントされたTシャツに目が行く。七部丈くらいのパンツは、何故か紫だった。

 待ち合わせ予定時刻ぴったりに、りんのすけからメッセージが届く。駅のロータリーに到着したそうだ。

 俺は助手席に乗り、他の三人は後部座席に乗り込んだ。運転手は勿論、サソリさんだ。

「今日もよろしくお願いします。」

俺はサソリさんに挨拶した。

 サソリさんは、珍しく私服だった。ピンクの派手な柄シャツに、白い短パン姿だ。

 りんのすけは、高そうだが落ち着いた大人っぽい私服に身を包んでいる。

「坊ちゃんがいつもお世話になってるっす。そんじゃ行きますよー!」

 サソリさんは車を走らせた。

 道中、後部座席組は何やら盛り上がっていた。また和田がりんのすけに挑発をしたらしい。知っている寄生生物の種類をひたすらに言い合っていた。結局二人とも出し切った所で、進一がボソリと言い、進一が勝負を持って行った。

 それで、またしても揉め始める。しかし、楽しそうだった。

 俺はサソリさんと雑談をしていた。どこの大学に行っているのかと聞いたら、情報非公開の所だから言えないと、言われてしまった。

 小声で、俺はサソリさんに言う。

「なんだか秘密結社みたいですね。」

「そうっすねー。俺、たくさん秘密があるんですよ。ミステリアスな男ってかっこよくないですか?」

サソリさんは前髪をかき上げて、カッコつけた。かき上げた時の腕の筋肉が太く強靭で、ワタヌキさんから教えてもらった秘密を思いす出す。

「かっこいいです。良いなあ。忍者みたいで。」俺はボーッと、窓の外を眺めながら言う。

 そこから、サソリさんの変なスイッチが入ってしまった。ひたすらに、忍者漫画の話をされたのだ。興味ある話題だったため、意外と盛り上がったが、サソリさんの詳しさに少し引いてしまう。何故なら、ちょい役のキャラ名も、印の結び方も全部覚えていたからだ。

 海の見える海岸線を走る。りんのすけが晴れ男なのか、今日も良い天気だ。カモメが飛んでいる。富士山も青々と君臨している。

 富士山を通り過ぎて、伊豆市へ入る。海水浴場や観光地が多いせいか、道は混んでいた。

 それでも、集合時間が早めだったのか、昼前に目的地に到着する。

「何だここ?」俺は車から降りて言った。

 大きな鬼のオブジェが、道路沿いに立っている。

「さあ、地獄を巡ろうか。」

りんのすけは、仁王立ちしてニヤリと笑う。

「ここは、小さい頃来た事があるのだよ!スプラッターな博物館で、幼心にトラウマを植え付けられた忌まわしい場所じゃないか!」和田は、眉間に皺を寄せる。

「グロいんだ。ちょっと気になる。」

進一は真顔で淡々と言う。

サソリさんも車から降りた。

「そんじゃあ、いっちょ行きますかね!」

 五人分まとめてお金を払う。サソリさんがチケットを受け取って、あっ!と声を出した。

「すみません。◯宝館とセットのやつ買っちゃいました!」

サソリさんは頭を下げて謝った。

「秘◯館って、このすぐ隣に看板があった所ですよね。良いんじゃ無いですか?ついでに行けば。」俺は気にしないでくださいと、笑顔を向けた。

「つかさ、秘宝◯ってどう言うところか知らないの?」

進一は俺の顔を覗き込む。

「チケットが必要なら、博物館みたいなもんだろ?何かまずいのか?」

俺はキョトンとした顔をする。

 和田とりんのすけも知らないと言う顔をしていた。

「本当に入るんだとしたら、ちょっと刺激が強いかも知れないですけど、社会勉強だと思って下さいね。」

サソリさんは冷や汗を垂らして苦笑いした。


【※現実の秘◯館は18歳以上しか入れません。この物語はフィクションです。登場する人物、団体、事件等は架空であり、実在のものとは関係ありません。※】


 地獄を巡る博物館に入る。館内は薄暗く、涼しかった。

 俺と和田は、後方から恐る恐るついて行く。

 他の三人はどんどん先へ行くため、ついて行くのが大変だった。

 たくさんの人形が展示されている。色んな色の鬼と、地獄に落とされた人達を表現している様だ。結構グロい。

「一百三十六地獄。地獄の数と言われている。八大地獄と小地獄を合わせた数だ。地獄の数には諸説あり、六万四千地獄あるとも言われている。宗教の種類に寄るんだろう。」

りんのすけは、解説した。

「こんなの見せられたら、良い子にしようってなるよな。」俺は和田の方を見た。

「私が悪い子だったみたいに言うじゃないか!別にそう言うわけでは無いのだよ!」

和田はプンスカ怒った。

「地獄に迷い込んじゃう事ってあるらしいよね。」進一は静かに言う。

「そうだ。鬼門と言われる方角があるのは知っているな?」りんのすけは、俺に振り返る。

「いや。知らない。」首を横に振る。

「北東の方角なのだよ!」和田は得意気に言う。

「そうだ。今でも建築の際にその方角に風呂場やトイレなどが被らない様に考える事もあるらしい。地域によっては、鬼門を閉じるためのお祓いもする。その鬼門は、鬼が出入りすると言われ、もし門を潜れば地獄へ行ってしまう。」

りんのすけは怖い顔で言う。

 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

「まあ、実際に行ける可能性は宝くじで一等が出る可能性より低いだろうがな。」

りんのすけは、やれやれと首を振った。

「りんのすけは、鬼門に入れたら入りたいか?」俺は何となく聞いた。

「出られる方法があるなら、入りたいね。」

りんのすけはキッパリと言い切った。

 先に進むに連れて、グロさのレベルが上がっていった。

 俺は気持ち悪くなりながら、何とか出口まで辿り着けた。

 和田は意外と平気そうだった。理由を聞いたら、

「子供の頃の記憶よりも、マイルドだったのだよ。記憶が誇張されていた様だね。」

と言っていた。

「じゃあ、次の所はササっと行きましょうね。ササっと。」

サソリさんは、ぎこちない笑顔で言うと、早足で進んで行った。

 さっきの所より、もっとキツかったらどうしよう、と俺は不安になりながら後をついていく。

 秘◯館から出た五人は、何とも言えない空気になった。

 外に出た途端にりんのすけは、サソリさんに説教を始め、サソリさんは全力の土下座をかます。

 中で見たものは、十八禁のエッチなものだった。うん、それしかなかった。

「ちょっと、俺には刺激が強すぎたな。」

俺は高まる鼓動と、赤い顔を誤魔化すためにわざとらしく咳払いした。

「実際にああいう事をするのかね?」

和田はボーッと空を眺めている。

「いや、しないだろ。……多分。」

俺は人差し指で鼻の頭を触り俯く。

 進一だけは通常運転だ。ぐぅと鳴るお腹を手で押さえて、「お腹空いた。」と呟いた。

 帰り道に美味しい海鮮丼を食べた。サソリさんがお詫びと言って全て出してくれた。

 りんのすけが「わさびソフトを食べたい。」と言ったので、寄り道して皆んなで食べた。

 甘さの中にあるツンと来る感じが俺は嫌いではなかった。しかしりんのすけは険しい顔になり不味そうに食べていた。

 りんのすけが残した分は、和田が喜んで平らげた。

 静丘駅に着く頃には、夕方になっていた。

 和田と進一と別れる。

 思ったより早く解散となっため、俺はりんのすけの家に行って夕飯を作った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。