36.登城
翌日。
朝からケルドナを出発して、大きな街道を北へ向かうと、昼過ぎには王都の姿が見え始めた。
まだ距離はかなりあるのだが、王都全体がやや小高い丘の上にあり、更に高く長い城壁が遠くからでも視認出来た。今の位置からだと中心にある王城が上の方だけ見えている。もう少し近づくと、角度の関係で城壁しか見えなくなるだろう。
夕方になる前には王都へ辿り着いた。
城門前では中に入るための待ち行列が続いていたのだが、伯爵家の馬車だけあって待ち行列とは別の門に案内されて、簡単な確認だけで中に通される。
そのまま、王都にある伯爵家の屋敷に乗り付けた。
「さあ、到着したよ」
アルシャークに案内されて中に入る。
メイドを一人あてがわれ、まずは部屋で寛ぐように言われたので、家族とともに案内して貰った。
「……大事になってしまったね」
父さんがため息交じりに零した。一応、今回の成り行きについては説明していたのだが、父さんには訳が判らないだろうな。
一方母さんは、大して気にした様子もなく、ニコニコしていた。
「大丈夫よ。何か悪さをした訳じゃないんだし。まぁ、変なことになったら、また別の国にでも行けばいいんだし」
神殿関係のトラブル以来、母さんは開き直っているみたいだ。
実際、悪さをして追われる身になるのでなければ、好きなところに行って暮らせばいいのだ。仕事を探さないといけないが、俺がもう少し大きくなれば、冒険者として稼ぐことが出来るようになるだろう。
夕食後、明日のことについてアルシャークが話してくれた。
「明日は王城にある『鑑定の間』にて、アフロス君の鑑定が行われる。例年貴族の子に対して行われる『鑑定の儀』と違って、臨時のことだから無関係な貴族が呼ばれることは無い筈だよ。ただ、グレンのやつが軍部の仕事をしてるらしいので、そっち方面の人間と、王族の誰かは見物に来る可能性はあるね」
「正直、父がただの三流学者じゃなくてびっくり」
レイルは先日まで父親の仕事を知らなかったみたいだ。
「そう考えると……あのふざけた言動も、半分は演技かもしれない。やつの固有能力について詳細が判らないからなんとも言えないけど、ひょっとしたら、優秀な人材を探し出す任務に就いている可能性もある。領内まで来たのはただの偶然かも知れないけどね」
それはそれで面倒な話だな。
「実のところ、国が優秀な人材を探し出して、仕官を勧めるのはこれまでもやっていたことだからね。王城の設備を使う訳だから、国ぐるみで何か企んでいない限り、悪いことにはならないと思うよ」
その国が当てになるのかが判らないんだが。あのおっさんが重用されているのは不安要因でしかない。
翌朝。伯爵の屋敷に王城からの使いが訪れた。
使いからの指示に従い、馬車にて登城して。
そのまま使いに案内されて城の中を進んでいると、アルシャークの顔が引きつっていることに気付いた。
その理由を尋ねる前に、目的地に到着した。
部屋の扉が開かれる。
促されるまま中に入る。
そこは、謁見の間だった。




