35.結局王都行き
辺境伯に話を通して貰ったのだが、それで解決とは行かなかった。
別に、レイルの祖父であるフィリアード内務卿が、話の通じない人だった訳ではなく。レイルの父親グランのおっさん自体の問題だった。
このおっさん、学者としては三流でレイルには恥ずかしいスキルを持っているだけの父親だったのだが、実は王国軍内では特殊な地位にある人物だったのだ。
理由は、その能力にある。『特定人探査』という能力は、当人が探そうと思えば範囲内ならどんな相手でも『探せてしまう』能力で、レイルが認識してる『愛する人の居場所が判る』という効果は、普段は国から《隷属》の様な力である《制限》によって、それ以外の人物を探せないように強制されていたのだ。
世の中には、『探されると困る』人たちが結構いるらしい。困るのが探す方なのか探される方なのかは知らないが、所謂大人の事情というやつか。
そしてこのおっさんは、国から《制限》を受けることと、国からの依頼に力を貸す見返りに、地位以上の特権が認められていた。
今回もその特権によって辺境伯や内務卿の干渉を国に治めさせ、無理やりレイルを連れ戻そうとしたのだ。ただ、レイルの戻りたくない理由が当人の奇行だという指摘もあり、国からも『ちょっと自重しろ』と諭され、不貞腐れて迷惑なことを言い出した。
「大事な娘を凡庸な男にはやれん。王都にて鑑定を受けて貰うぞ」
辺境伯のところにも鑑定の魔道具はあるが、王都の物の方が上等であることも知っているらしく、王族の目の前で鑑定させて恥をかかせようと考えたみたいだ。
おそらく相手にするのが面倒だったのだろう、それならばと国も反対しなかったため、俺の王都行きが決まった。国が絡んではアルシャークにも抑えきれなかったみたいだ。
***
豪奢な馬車に揺られ、王都に向かう。おっさんや護衛を合わせると、馬車五台と騎馬六騎の大所帯だ。
まだ六歳であるため保護者同伴、両親とも一緒に乗っている。ちなみにケリーはお留守番してもらっている。
レイルはアルシャークの馬車で、何故かアンリとセーナも一緒に来ている。
その理由をおっさんに問われ、「娘の婿候補の晴れ舞台だからね」とか言うもんだから、おっさんがまたブチ切れて俺に飛び掛かって跳ね返されていた。
道中は二日野営、次の夕方には大きな河の畔にあるオークスという街に辿り着いて宿泊。
朝から川船三艘に分乗して下り、途中中継拠点で一泊した後、翌昼過ぎには王都の南にある港湾都市ケルドナまで辿り着いた。
河を下ったのでここまで四日半で着いたが、戻りは陸路で八日ほどかかるらしい。流れの緩やかな河とはいえ遡るには時間が掛かるみたいだ。
王都アルカスまでは後一日くらい掛かるらしく、ここでまた一泊すると言われた。
夜まで暇になったので、観光することになった。ちなみにおっさんは色々と手配することがあるらしく先に王都に向かっている。出立前、レイルを連れて行こうとして断られ、また俺に切れていたが。
物流拠点として栄えているらしく、かなりにぎやかな都市だったのだが、俺はこっちの世界で自由に出歩くのは初めてだったので、ここがどれくらいすごいのか全く判らないが。脳内では『地方都市のアーケード街くらい?』とか囁いているけど、その表現も微妙に判らん。
特に買い物とかする訳でもなかったが、商店街を見て回っただけでレイルは妙にご機嫌な様子。アンリも普段は自由に出歩けない身らしく、珍しく年相応にはしゃいでいた。
俺の両親やアルシャークは、そんな俺たちを微笑ましそうに眺めていた。
王都……王城……やっぱりお姫様とか期待されますか?w




