37.謁見
部屋の中に入ると、でかい玉座が目に入った。王冠を頭に載せた、長い髭を生やした中年男性が座っている。
こういう場での作法など知らなかったが、たしか王に目を向けては駄目だった気がする。慌てて視線を落とす。
アルシャークが歩みを進めたので、それに追随する。部屋の中央付近で足を止めた。
アルシャークに倣い、右膝をついて。俯き加減でそのまま待機した。
「……陛下、お久しゅうございます。我が家臣の子、アフロスの能力鑑定に参ったのですが、謁見の予定ではありませんでした。事情を伺ってもよろしいでしょうか?」
「うむ。皆、面を上げ楽にするがよい。此度のことは、グラン特務官の差配でな。ベルン伯爵のところに、固有能力を持つ子供がいると聞いて、楽しみに待っておったところじゃ」
やっぱりおっさんの仕業か。
顔を上げて周囲を確認すると、玉座のある檀上には王族なのだろう、右に美しい女性、左には少年と少女が立っていた。壇の下は騎士らしい男女が左右に構えており、その手前に貴族らしい中年男性が三人いて、その中におっさんが混じっていた。
おっさんは俺たちを見てニヤニヤしていた。
「……陛下。ベルン伯爵家は、固有能力持ちを報告せず抱えようとしていた様子。これは叛意と見てよろしいのでは?」
おっさんが何か言ってる。
「グラン殿、これは異なことを。報告義務もないことを報告していないだけで叛意とは」
「えっ?」
「えっ?」
双方とも驚いているよ。なんか、認識に齟齬がありそうだ。
「……グラン殿。そもそもベルン伯爵領では、通常は貴族の子供のみを鑑定させています。その際、固有能力持ちが現れれば国へ報告する決まりになっていますが、アフロスは平民の子、国からの徴用の定めはありませんよ?」
どうやら、貴族の子には、能力に応じた義務が定められているみたいだな。対して平民は非常時の徴用はあるにせよ、普通の義務は納税だけなのだろう。
「でっ、では、どうして伯爵家の屋敷に?」
「アフロスの両親、ローディとベルナは、私が雇った考古学者とその助手です。近年、私が伯爵家の仕事で忙しくしていて、学者としての仕事が疎かになっていたこともあって、我が家で召し抱えたのですよ。まだ子供のアフロスが小さいこともあり、敷地内の屋敷のを一つ与えていますが、別に貴族の誰かと縁組があった訳ではありません」
おっさんが悔しそうに顔を歪めた。
俺をネタに、アルシャークを貶めようと画策したらしい。ネタ自体が勘違いだったらしく、ただ恥をかいただけで終わったみたいだ。
「まぁよいではないか。そもそもベルン伯に叛意があるなど、微塵も疑ってはおらん。わしは有能な子供が見たかっただけじゃ」
国王が二人を執成す。初めから察していたみたいだな。
しかし、それほど固有能力者は有能で希少な存在なのか。獣人のセーナも固有能力はあるみたいなんだが。ただ、そっちは種族固有のもので、そこまで強力なものでは無いのかも知れない。でなければ、獣人の地位はもっと高かっただろう。数が少ないだけかも知れないが。
「そっ、それでは、これからその少年に、『鑑定の儀』を執り行います」
さて、どれくらいの能力にしようかなw




