34.追手
俺たちのところに、久しぶりにアルシャークが顔を出した。
最近は遺跡の調査などで遠出していたのだが、急遽呼び戻されたとのことだった。
その理由なのだが、レイルの父親が辺境伯の元に押し掛けてきて、揉めているらしい。
「私の所在がバレたみたいね」
レイルがため息交じりに漏らす。
「でも、どうやって?」
元々、レイルはここに来る以前に家出同然で飛び出してきたらしいし、消息が判らないよう気を付けてもいたと言っていた。そして、ここに来てからは、一度も屋敷の敷地から出ておらず、レイルの素性を知る者も俺たち以外にいないのだ。
「……父には恥ずかしい固有能力があるの」
「恥ずかしい?」
「そう。鑑定では『特定人探査』という固有能力と出たらしいのだけど。本人曰く、『愛する人の居場所が判る』らしいの。相手の気持ちとか関係なく働くから、ただのストーカースキルね。一定範囲内に居れば、対象の居場所の方角が判るらしいわ。この都市まで来た理由は知らないけど」
アルシャークや伯爵からは無視して追い返してもいいとは言われたものの。レイルは嫌っているとはいえ一応相手は父親であり、国にも知られているスキルで『攫われた娘の居場所を特定した』などと騒がれるのも風聞がよろしくない。
仕方なく、レイルには一度父親に会って、正式に三行半を突きつけるべきだろうと説得した。
そして名目上、レイルを匿っているのは伯爵家ではなく俺の家ということになっているので、俺が撃退するしかなかった。
「うおおおおおレイルちゅわあああん!!」
レイルを見るなり奇声を発して抱き付こうとしてきた父親を、レイルはまずしゃがんで避け、ボディーブローで宙に浮かすと空中コンボを決めやがった。
「きゅうぅ、相変わらず照れ屋さんなんだから……」
絨毯に突っ伏したまま、何か言ってる。えらく丈夫だなこのおっさん。学者の才能はないらしいが、兵隊としての才能はあるのかもしれない。
「私はここにいるアフロスに嫁いだ。帰れ」
いや、もうちょっと説明してあげて?
レイルの言葉に愕然としちゃってるよ。
そして、隣にいる俺を見て。
「お父さんはゆるしませええええええええええん!!!」
絶叫しながら突撃してきた。今、床に伏せた状態だったよね?
俺はというと、慌てることなく『魔力結界』を現時点での最大強度であるレベル三で展開した。
「ぶへっ!?」
おっさん(俺の中ではもうこの呼称でいいな)は顔面から結界に激突して、弾かれてひっくり返って気絶してしまった。
「今のは、アンリさんの『魔力結界』!?」
それを見ていたアルシャークが驚愕していた。
「ええ。俺に習得出来ました」
事も無げに返事をすると、
「いやぁ、アフロス君への興味は尽きませんねぇ」
などと不気味なことを言い出した。
それはともかく。
「それで、この人はどうすればいいんでしょうか?」
「……ちょっと奇行が目立ち過ぎてますから、我が家で正式にレイルさんの保護を申し出ますかねぇ。フィリアード内務卿なら、話が通じない相手ではありませんし。ちょっと父に頼んでみますね」
レイルの祖父に話を通してくれるみたいだ。
「お願いします」
「申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
俺とレイルは深く頭を下げたのだった。




