29.備忘録再び
仕方なく、レイルを今の家まで連れていく。
もう夜も遅かったのだが、全員まだ起きていた。
「あらぁ。アーくん、こんな遅い時間に女の子を連れ込むなんて、誰に似たのかしらぁ?」
母さんに揶揄われる。そのついでにジト目で見られた父さんがぶるぶる顔を振っていた。……何か前科がありそうだな。
「レイルと申します。アンリちゃんからアフロス君のところでお世話になるよう言われて来たのですが、大丈夫でしょうか?」
「……何か事情がありそうね。うちに来ること自体は問題ないんだけど、どうしましょう? 部屋が空いてないわ」
母さんは特に気にしていない様子。父さんは、母さんがOKすれば特に異存はなさそう。
「それなら、アフロス君と同じ部屋で」
おい。
「えっと、それはさすがに……」
子供とはいえ、異性の子を俺と同室にするのはさすがに問題だと思ったのか、父さんが止めようとするのだが。
「あ、大丈夫ですよ。さすがに、精通前に手を出すほど野暮じゃありませんから」
などとほざきやがった。
父さんはあんぐりと口を開けて絶句して。母さんは噴き出して、笑い転げていた。
レイルがドヤ顔で俺を見ていたので、デコピンを喰らわしてやった。
「いいわよぅ。手を出しても、きちんと報告さえしてくれるなら」
母さんは母さんでとんでもないことを言い出す始末。
その後は、母さんとレイルが何やら耳打ちし合って。お互いにサムズアップやらOKサインやら出し合っていたのが非常に気になるのだが、教えてはくれないのだろうな。──俺、愛されてるのか弄ばれてるのか判らなくなってきた。父さんも目が点になっていたよ。
それから。風呂に入ることになったのだが、レイルが一緒に入るとか言い出して、母さんがOKを出していた。最早やりたい放題だな。
傍では、ケリーがハンカチの角を噛んで「きぃーっ」ってやってたけど、無視することにした。
元々、各部屋にはベッドが二つ設置されていたので、レイルには空いている方を使うように指示した。
「……それで。これからどうする気だ?」
改めて問う。
「ん? さっきも言った様に、アフロスのチーレムに入れて欲しいな」
冗談じゃなかったのかよ。
「意外だな。君なら、逆チーレムでも目指すかと思ったんだが」
「初めはね、やろうと思って色々頑張ってみたのよ。家にあった古文書を頼りに、いくつかのスキルは習得出来たんだけど……私じゃ無理かと思うようになったのよ。前世でも頭いい方じゃなかったから、大した知識持ってないし。こっちの世界、魔法もあって思ったほど文明低くないから、専門的な知識でもなきゃ、知識チートとか無理っぽいし」
色々調べたのだろう。表情に諦めが滲み出ていた。
別に、普通に生きていく分には、なんら不自由はしてなさそうなのだが。実家は法衣貴族らしいし。
それでも、前世の記憶があるから、前世の価値観に縛られている部分があるのだろう。はっきりとは思い出せない俺でもそうなのだから、レイルはそれ以上なのだろう。
「チートがやりたいのなら、まだあわてるような時間じゃない」
俺は棚の引き出しから、紙束を取り出した。
「レイルにも使えるかは判らないが」
紙束を差し出す。レイルはそれを受け取り、目を見開いた。
「これって……!?」
「俺の父さんが昔調べていた古文書の写しだ。アルシャーク様のコレクションとは別口のな」




