21.鍛錬開始
無詠唱に関しては、誰にも説明しないでおいた。騒動の元になるかもしれないと思ったからだ。
そして、無詠唱出来るにも関わらず、これからもアンリと一緒に一般の詠唱魔術を学ぶことにした。何事も、基本が大事だと思ったのだ。
だが、今の俺には厳しかった。まだ日常会話でさえ怪しいレベルなのに、詠唱に使う『魔術言語』まで覚えるのは、現時点では正直無理。同様の効果を付加する呪文なのに、属性が異なると文言まで変わってしまうのだ。例えば、『火の玉』に『射程延長』の効果を加える場合と、『水の玉』に『射程延長』の効果を加える場合では、同じ『射程延長』なのに呪文が違うのだ。結果、展開される魔法陣の記述は全く同じなのにも関わらず、だ。
一応、この文言の変化にも規則性があるらしく、それを把握していれば、呪文を丸覚えしなくても自分で応用して当てはめることが可能らしい。
だけど、そのレベルに至るまで『魔術言語』を勉強する気にはならなかった。何故なら、他の人が使う呪文を見ていたら、その呪文の魔法陣が見れるため、覚えてしまうからだ。この『見れる』というのも、実はスキルか固有能力の恩恵らしい。普通ははっきりとは見えないみたいだ。そして俺は、はっきり見えてしまうから、その魔法陣の意味を解析して、機能単位で分解・組み合わせることで別の呪文を組み立てることが出来た。頭の中で魔法陣を描くだけなので、自在に出来たのだ。といっても、新しい呪文ではなく、既存の他の呪文に過ぎなかったのだが。ただ、そのせいで詠唱出来る呪文は少ないまま、無詠唱で使える呪文のレパートリーだけ増えていった。
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五歳の誕生日を迎えた。
ようやく、肉体の鍛錬を解禁する。アンリの教育係たちからの鍛錬だけでなく、大地謹製の強化プログラムその二を使う時が来たのだ。別に、大地が五歳までやるなと記していた訳では無い。そもそも大地はこっちに来た時点で大人だったから、子供向けのプログラムですら無い。単に「五歳までは止めておく」という自分ルールを課しただけだ。もっと大きくなってからの方がいい気もしているが、教育係が五歳から鍛錬を始めると言っていたこともあり、それに併せてやろうという判断もあったりする。
一旦、強化プログラムその一である《拡張》を止め、消去する。領域を空けるためだ。
その後、強化プログラムその二《負荷》を実装した。そのとたん、体の力が抜ける。《負荷》のレベルは自分で調整出来、今のレベル一では身体能力が五%弱体化される程度の負荷が常時掛かっている。
この状態で鑑定を受けたら、何らかの異常状態が出ている筈だ。ちなみに、以前鑑定を受けたときは、《拡張》は事前に止めていたので何も出ていない。
《拡張》を実装する前に、《領域保護》も実装しておいた。これも大地が残したプログラムで、鍛えるためのものではなく、領域を保護するという名前のままの機能があるのだ。これがあると、他人から勝手にプロセスを実装されたり、実装中のプロセスを改竄されたりするのを防ぐことが出来るらしい。それも彼我の能力差にも依るのだろうけどね。
教育係からの鍛錬といっても、いきなり筋トレとかをやらされる訳では無かった。初めに現在の能力を測る意味でちょっと走らされただけで、暫くは柔軟体操と座学に終始することになった。
ようやく五歳(汗
こんな調子ですが、大丈夫でしょうか……




