↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を越えた転生姫は最愛の推しを能力全開で幸せにします。勿論、死ぬ以外の方法で!  作者: 文月みい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/15

面倒な来訪者



「どうしても会わないと駄目ですか?断ることはできない?」


「そうねぇ……ごめんなさい。無理ね。」


 朝食を取るため食堂へ向かうと、家族が勢揃いしていて、何故か皆が難しい顔をしていた。何があったのか話を聞くと、今日のお昼過ぎ、私に会いに人が訪ねてくると言う。会うだけなら問題ないが、相手が問題だった。


「お母様、あのですね。私は、10年日本に居たので、すっかり貴族としての作法やら何やらを忘れてしまったんです。そんな私が王子様に会って、何か失礼な事をやらかしてしまったら、どうするんです?」


 この国の第一王子様が、私が目覚めたことを何故か知っていて、直ぐに会いたいと連絡してきたと言う。お父様やお兄様達は、私の捜索で出払っていたため、お母様が丁重にお断りするため王宮に向かったが、説得できなかったようだ。


「折角、エルちゃんが目覚めたから、今日はお母様と一緒にお庭でお茶会しましょうって思っていたのに、本当に残念だわ。しつこい男は、本当に嫌ね。こちらの事情も無視なんだから、本当に残念。」


 お母様が頬に手を当てて、困った顔を見せる。

 昨日の夜、お母様が王宮から帰宅して、私とも喜びの再会を果たした。その後、奏人や植田さんの事も紹介し、お母様は、二人をとても歓迎してくれた。お母様は、私の転生に巻き込んでしまった事を二人に謝罪した後、日本に戻るまで屋敷への滞在を認めてくれた。さすがは、優しいお母様。二人を快く受け入れてくれて私も嬉しい。


「婚約は10年前に白紙に戻っているというのに、いつまでエルに関わるつもりなんだ。エルが目覚めたことを知るのも早すぎる。絶対に屋敷を見張っていたに違いないよ。」


 ルカ兄様が、朝食のステーキを口に運びながら、不機嫌そうに眉根を寄せる。


(朝から分厚いステーキ……すごいわぁ。)


 朝食はガッツリよりも軽めだった私には、ルカ兄様の食べる姿を見ているだけで胃もたれしそう。

 

「別に歓迎してはいないので、エルは目覚めたばかりで体調が優れないと、帰ってもらえばいいのでは?」


 真面目な顔で、そんな不敬なことをさらっと口にするとは、アド兄様も怒っているみたい。ただ、王族に嘘を吐いてバレた時は、大変なことになるのは分かるので、それは却下でお願いしたい。


「こら、二人共、そんなに怒らないのよ。どうせ断っても会うまで諦めないのだから、面倒な事は、さっさと終わらせるのが得策よ。今なら体調を理由に早めにお帰りいただく事も出来るのだから、会うなら早い方がいいわよ。」


 お母様が、フワッと美しい笑顔を見せる。笑顔の中に少しだけ含みが見えるが、気のせいだろう。取り敢えず、私も笑顔を返しておこう。



♢♢♢♢♢♢♢♢



「ああ、エルミア、ようやく君に会えた。無事に目覚めてくれて嬉しいよ。」


 午後になり、約束通りに第一王子様が、我が家へとやって来た。

 私の顔を見て、それはそれは嬉しそうな顔で、当たり前のように私の手を取った。


「えっと……、第一王子殿下?今日は、わざわざ私の快気祝い?の為に、お越し下さりありがとうございます。」


 何で会いに来たのか良く分からないので、取り敢えずは、快気祝いって事でお礼を伝える。それより、勝手に手を取られて嫌なのだが、顔に出したり手を引っ込めるのは駄目だと思うので、バイトで培った愛想笑いで乗り切る。


「そんな他人行儀な言い方をされると寂しいな。昔みたいに名前で呼んでくれ。」


 第一王子が、悲しそうな表情で私を見るが、私は直ぐに家族に視線を向けて助けを求める。


(私……この王子の名前知らないんだけど…。誰か助けて……。あと手も離して欲しいよぉ)


 正直、10年前の婚約も政略的な意味合いが強かったので、私的には諦めから始まったものだった。だから日本に転生して、第一王子のことは、直ぐに記憶から消えてしまった。

 

(名前なんだっけ?ヴィとか?ヴァとかだったような?はぁ、手を引っ込めたい。昨日、せっかく奏人と握手したのに……あっ、まって…奏人の手の感触が王子に汚される。わぁぁ、今すぐ離してぇぇ)


 私の心の中は大荒れで、目の前の王子のことは、どうでも良かった。やっと、奏人と握手できて幸せだった昨日が、一瞬で不幸な出来事に上書きされた。勝手に手を取った第一王子に、殺意さえ沸き起こりそう。


「ヴィンセント殿下、エルミアが困っております。殿下とエルミアの婚約は白紙になっているのです。そんな娘が、殿下を名前で呼ぶなど、恐れ多いことです。それに、殿下に触れられて、娘も驚いております。どうかご容赦を。」


 お父様が、第一王子から私を引き離し、肩を抱いて自分の隣に引き寄せる。

 王子に掴まれていた手は無事に解放され、私はお父様の隣で守られて、やっと王子から離れることができた。


(やっと離してくれたけど、奏人の感触が……奏人の手の温もりが……あぁぁ……)


 私は絶望の中で、家族と王子が話しているのを、茫然と見ていた。




「……エルミア?エルミア?聞いてる?」


 しばらくショックから立ち直れなかったが、名前を呼ぶ声に我に返る。


「公爵の許可も貰えたし、一緒に庭を案内してくれないか?君とそこでお茶をしながら、話したいな。」


「えっ?嫌です。」


「えっ?」


 直ぐに両手で口を押える。急に庭を案内しろと言われて、本心が口から飛び出してしまった。


「いえ、あの…………分かりました。」


 隣のお父様やお母様からは、断れなくてごめんねの視線が感じられ、王子に押し切られてしまった事が分かる。

 本音は、とてもとても嫌だけど、これで終わりだと思えば我慢できる。

 

「それでは、行こうか。エルミア手を。」


 第一王子に手を差し出され、意味が分からず固まっていると、お母様がそっと耳打ちしてくれた。どうやら、エスコートの意味らしい。エスコートで手が触れるのも正直嫌で仕方ないけど、我慢するしかない。

 第一王子の手に触れると、王子は嬉そうに微笑んだ。


 庭に出ると、たくさんの薔薇が咲いていた。昨日、屋敷に戻ったばかりで庭を見る余裕もなかったが、広い庭の隅々まで手入れされ、とても素敵だった。


「流石、公爵家の庭は綺麗に手入れがされている。薔薇がとても美しい。」

 

「そうですね。」


 バイトで培った営業スマイルで、王子の言葉に返事をする。どんなにヤバいお客様でも、笑顔を忘れず接客していた私のプロ根性を今こそ見せてあげよう。


「エルミア、私はね、君が目覚めてくれて本当に嬉しいんだ。君と婚約して二人で結婚を誓い合った日を覚えているかな?私は、あの日、君に恋をしたんだ。」


 私の頭の中は、?マークでいっぱいだ。あの日と言われても、全く覚えてない。


 突然、語りだした第一王子に、私は表情を変えず営業スマイルで乗り切ろうとしていたが、頬の筋肉がピクピクしてきた。


「私は、あの日から君を忘れたことは一度もない。ずっと君だけを愛している。10年前の事件のせいで、婚約は白紙になってしまったが、私は君を諦めるつもりはないよ。私の妃は君だけだ。」


 第一王子が、エスコートしていた手を引っ張って、私を抱き寄せる。

 その瞬間、私のプロ根性は跡形もなく消え去り、営業スマイルを維持できない表情は、嫌悪感でいっぱいになり、全身鳥肌が立つ。


「ちょっと王子殿下、離して下さい。嫌だ。離して……。」


 両手で王子の胸を押すけれど、細い腕の力ではビクともしない。日本での私の腕なら簡単に押し返せると思うのに、これは鼻の血管だけでなく、腕の力もつけないと駄目だ。


「エルミア……愛してる。そんなに恥ずかしがって、可愛いな。」


 強く抱きしめられ、耳元で囁かれ、私はゾワゾワっと再び全身に鳥肌が立つ。


(嫌だぁ、本当に離して!本気で嫌がってるのに、何を勘違いしてるの。この変態王子!)


 私が嫌がってるのを恥ずかしがってると勘違いして、ますます抱き寄せる手に力を込めてくる。変態王子の最悪の所業に、私は叫び声をあげようかと思った時だった。


「何をしているの?」


 ここには居るはずのない、本物の王子様の声が聞こえた。




 


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。次回も読んでもらえると、とても嬉しいです。

 更にブクマなどポチっとしてもらえると、もっと嬉しくて、飛び上がります。どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。