表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界右手お祈りゲーミング  作者: ペリ一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/17

第4話:初期コスト

「もう少し、だな」


 先導している角刈りの大男……ゴトウがそう呟く。

 言われて見れば、廃棄場特有の臭いが近付いてきている。

 血にも似た鉄臭に、何を混ぜたのかも不明な油の悪臭。


「いやぁ、ゴトウさんがこのチームの要ですよ」


「そうかもな。ただ最も期待されているのはライト。君だ」


「ははは。じゃあ頑張らないとっすね」


 このゴトウという男はかなりまともだ。

 後ろでふらふらとついてきているローリスとは違って。


「アルバートさんってどういう人なんすかね?」


「見る目がある人、というと俺自身の自惚れになってしまうか。まぁ……信用のできる人だ。掃除屋には珍しい」


「へぇ……」


 見る目ぇ〜?

 疑念を込めつつ後ろを振り返る。

 ローリスがへらへら笑いながら手を振ってきた。


 その様子を見ていたゴトウが渋面を浮かべつつ弁明を口にする。


「その、だな。アレはアレで有用なんだ」


「とりあえず勧誘に使うべき人材じゃないっすよ」


「ああ……アレはあいつが勝手に先に声かけをしてなぁ……」


 なるほど。

 アクティブなアホは扱いづらいな。

 

「今俺の話した?」


「おう。お前は軽率に口を開くべきじゃねぇって話をな」


「いひひ」


 何笑ってんだコラ。

 1発引っ叩いてやろうと腕を振るが、容易く避けられる。

 

「揉めるな揉めるな。そろそろ……来るぞ」


「ういっすー」


「了解」


 結界を通り抜ける独特の感覚。

 おそらく企業が隠蔽の為に張っているものだろう。


「……ひっでぇなこりゃ」


 思わず口と鼻を塞ぎ、眉間をしかめる。

 頭痛がするようなオイル臭。

 過剰魔力のせいか景色が歪み、空は紫がかって見える。


 そして、どんな加工をしたのか想像もつかない不自然な輝きを放つ金属物体の数々。その中で、機械兵達が虫の如く蠢いていた。


「どんだけ放置すりゃこんな事になんだよ」


「景色歪みすぎだろ! マジでやべー!」


 ローリスが緊張感のない声でそんな事を言う。

 アホは呑気でいいな。


「ゴトウさん」


「ああ。さっそく掃除にかかろうか」


 デッキホルダーを構える。

 敵を検知したのか、デッキが電子音声を発した。


『パーティーメンバーを確認』


『敵の戦力を確認』


『機能解放。初期コストの調整——完了』


 あ? なんだ?


『パーティーメンバーによるマイナス調整6』


『未知の戦力によるプラス調整3』


『初期コストは0です』


「は? おいコラ」


 4枚の手札が排出。

 

「いやいやいやふざけんなよマジで」


 悪態をつきつつ手札を見る。


コストX:呪文:掘削の魔法陣

 山札の上からX枚を見る。その内からカードを1枚選び、相手に見せてから手札に加え、その後山札をシャッフルする。(Xは1以上の任意の数値)


コスト2:呪文:遺骸より湧き出る

 この呪文を行使した段階で場に存在している自分の召喚モンスターを1体選ぶ。その召喚モンスターは“破壊された時、闇の子蜘蛛を1体召喚する”を持つ。


コスト3:魔物:荒くれ土人形

 荒んだ魂を宿した土人形。

《召喚時:近距離に敵対生命体が存在》

 >砂かけを行う。


コスト6:魔物:竜頭蛇尾

 竜の頭部に蛇の尻尾を持つキメラ。

《召喚時》

 >コスト3を得る。


「3コスト溜まるまで何も無し! いや掘削……無理だな! 無理無理! 何もないんでご自由にどうぞ!」


「ライトくん、どうした!?」


「ミギテくん! ちゃんと戦えよー!」


 うっせーな殺すぞ。

 手札は正直マシな方だ。

 だが初期コスト0ってのは何だ?


「俺の能力は始動するまで時間がかかります!」


「そういう事は先に言ってくれ!」


「戦況がこっち有利すぎたらしいっすね! 俺、逆境の方が強くなれるんすよ!」


 多分。

 とりあえずの言い訳にはなるだろう。


 アナウンスを思い返してみよう。

 パーティーメンバーによるマイナス調整。

 そんでもって敵の戦力によるプラス調整。


 これまで俺はソロかつ同一の敵と戦い続けていた。

 初期コスト3は基準値……おそらく最初の戦闘を基準点にしているのだろう。


「えぇと、つまり……?」


 俺の初期コストは戦況次第で数値が変わる。

 なるべく公平に戦えるように調整されるって事か?


「OK、落ち着け。完全に理解したぞ」


 戦闘中に情報量で殴られたせいで整理に時間がかかった。

 そうとなれば焦る理由はない。


「俺の能力によれば、俺らが有利なんで! ほんと油断さえしなければ余裕で勝てます!」


「……君は、鑑定系のスキル持ちという事か!?」


「副次的な効果です! 本質は別です!」


 さて。コストは2入ってきてる。

 あと1で一旦荒くれ土人形を出せるな。

 ……いや、もうちょい待って遺骸より湧き出るとセットで行くか?


「さて、戦況は……」


 ローリスが刀……を作ろうとして失敗したみたいな造形の剣を構え、その辺のジャンク部品でパルクールしながら機械兵を切り裂いて回っている。

 一方ゴトウさんは動きこそ少ないが、盾と棍棒で効率的かつ確実に機械兵を潰している。


「なるほど。こりゃ有利だわ」


 機械兵はかなりの数だが、俺の方に溢れてくる気配すらない。

 つーか俺、要る?


「ま、やるか。召喚、荒くれ土人形」


「グゴッガーッ!」


 やる気十分なとこ悪いが、お前はさっさと死んで闇の子蜘蛛になるんだよ。


「発動、遺骸より湧き出——」


「うわぁ何それ!? すっげー!」


「触んなァ!」


 咄嗟に大声で威嚇し、ローリスを追い払う。


 さて。

 手札の内2枚を使用したため、ハンドが4枚になるように山札からドローが入っている。

 ちなみにドローカードを使った場合はドロー効果より先に手札補充が入るから一時的にハンドが5枚になる。

 初見では理解に時間がかかった仕様だ。分かってしまえば何でもないんだがな。


 補充された手札を確認。荒くれ土人形、2枚。


「俺ポーカー上手いかも」


「ガガゴー!」


 返事すな。

 さて、この土人形……パーティーメンバーと連携してくれたりするんだろうか。

 

「あの2人と連携して機械兵を撃破しろ!」


「ガー!」


 土人形が特に2人を援護するまでもなく1番手前にいた機械兵を相打ちに近い形で殴り倒す。

 アホでかわいいね。


 さて。

 荒くれ土人形が破壊されたという事は……?


「呪文、遺骸より湧き出るの効果が発動するぜ!」


 卵の殻を破るようにして、土人形から闇の子蜘蛛が湧き出る。


「ギギーッ!」


「ライトくん、君は先程から何の詠唱を行なっている!? それは君の管理下にある怪物という認識で合っているのか!?」


 何って、対戦相手が分かりやすいように使用したカードの宣言をしているだけなんだが?


 ……対戦相手いなくね?


「癖ってのは恐ろしいねぇ……ゴトウさーん! ちゃんと俺の管理下のやつなんで安心して下さい!」


 コストは現在3。

 戦況はゴトウさんとローリスが優秀すぎて普通に優勢。

 そりゃそうだ。俺の初期コストがゼロにされるぐらいなんだから。


「ふむ」


 余裕が出てきたな。

 じゃ、少しばかりギャンブルをしちまうか。


「発動、掘削の魔法陣。使用コストは3だッ!」


 また意味もなく口に出してしまったが、口に出した方が気持ちが良いので仕方ない。


 掘削の魔法陣の発動が始まる。

 山札の上から3枚が捲られ、開示された。


「……は、はははッ」


 思わず笑いが漏れる。

 ああ、光ってきたぞ。俺の右手ッ!


「闇の母蜘蛛を選択」


 選んだカードを機械兵どもに向け見せてから手札に加える。


「ら、ライトくん! それは何かね!?」


「掘削の魔法陣の効果によって闇の母蜘蛛を手札に加えました」


「あー……了解! 分かった!」


 分かってなさそうだが、どちらにせよ俺がやる事は変わらない。


「コスト溜まるまで待機!」


 傍に闇の子蜘蛛を控えさせながら仁王立ちで腕組みをする。

 

「ミギテくんなんかサボってねー?」


「まぁまぁローリス君。待っていたまえ。魔王の降臨を」


「……へぇ〜?」


 デッキに1枚のみ存在を許されるカード。

 その破壊力がどれほどのものか確かめるとしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ