表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界右手お祈りゲーミング  作者: ペリ一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/19

第3話:闇の蜘蛛

 俺は生まれてこの方、出所不明の自信に突き動かされて生きてきた。

 そのせいでろくでもない目にあった事は何度もある。だがついぞ、この全身を包む薄らぼんやりとした自信を剥がす事は叶わなかった。


 何が言いたいかって?

 分かるだろ。


 ガチャで勝つ時はいつも何か確信めいたものを感じているもんさ。

 

『生存ボーナス:15日:5パックを受けとりました』


「はは。全部だ。全部開けろ!」


 目の前に25枚ものカードが出現する。

 細かい事はどうだっていい。今の俺はいける。


「ゴミ、ゴミ、ちょっと使えるゴミ、ゴミ、ゴミ……」


 カードを順々にめくって確認していく。

 まだだ。まだ見ていない。

 これはいわゆる最高レアだろうと分かるような、強力なカードが。


 今のところの引きは、下振れもいいところだ。

 

「……」


 そこで、ある1枚のカードの前で手が止まる。


「めくりにくい……?」


 まぁ単に俺の指の判定がうまく当たらなかっただけなのだろうが……半ば確信があった。


「——ここ、だな」


『ファイアストライク』


「だぁああああああ!!!!!」


 怒りの勢いそのままに隣のカードを 2枚ほどめくってしまう。


『——、遺骸より湧き出る』


「ん? あれ?」


  2枚の内1枚はアナウンス通りの「遺骸より湧き出る」だが、片方のカードの詳細がなかなか表示されない。


「真っ白なカード……? バグったか?」


『——』


 ノイズ音と共に真っ白だったカードに色が集まっていく。


『闇夜を織りて、八束となる』


 カードに糸が纏わりつくような演出。

 やがてその糸がほつれ、中身が現れる。


『闇の母蜘蛛』


「……おいおい」


 まずいな。これは、狂ってしまう。

 成功体験として強烈すぎる。

 普段命を削りながら鬱屈とした仕事をやっている分、カタルシスが大きすぎるんだ。

 これは非常によろしくない。


「あー、クソ、にやけんな。冷静になれ」


 俺のスキルは結局のところギャンブル性の塊だ。

 そのギャンブル性に呑まれるとまずい。


「採用は見送るべきだ」


 蜘蛛の炸裂だって1枚しかない。

 というかそもそも、この「闇の母蜘蛛」の効果をまだ読んでいない。


「他は……何も当たんねぇだろ」


 どこか遠く聞こえるアナウンス。

 うん。他は大した事ないカードばかりだったな。


 一度、深呼吸する。


「……はぁ。闇の母蜘蛛の効果を見せろ」


『闇の母蜘蛛』


『コスト8:魔王』


「は?」


『カテゴリ:魔王のカードは1つのデッキに1枚のみ入れる事が可能です』


「待て待て待て」


『このカードの召喚コストをX支払う代わりに場に召喚されている闇の子蜘蛛X体を破壊しても良い。Xは8以下の任意の数値』


「あー、マジか」


『貴方がコストを1得る時、コストを得る代わりに闇の子蜘蛛を1体召喚する事を選んでも良い』


「いやー、それはどうなんだ?」


『貴方の手札にある、闇の子蜘蛛を召喚する効果、または闇の子蜘蛛の数を参照する効果を含んだカード全てのコストはその時召喚されている闇の子蜘蛛の数と同値分低下する。ただしその際、コストは0以下にならない』


「そうなるんならつえーわ」


 ただコイツを活かすならデッキを「闇の子蜘蛛」関連カードに寄せなきゃならん。

 ……でも、闇の母蜘蛛が強制でピン差しなのがキッツいんだよな。


「サーチカードねぇのかオイ」


 魔王を手札に加える……なんて都合が良いのは無いわな。

 特定のコストのカードにアクセスするカードは?


「……あった」


『鏡面の魔法陣』


『コストX:呪文』


『コストXのカードを1枚選び、相手に見せてから手札に加え、その後山札をシャッフルする。Xはデッキ内に存在するカードのコストの内から任意の数値』


 ピーキー過ぎるし、なんで魔物相手に何サーチしたか見せなきゃいけないんだよ。

 いいだろ別に。

 てかこれ山札に何残ってるか理解してないとダメじゃん。めんどくせぇ事すんなよ。


 そういや◯◯の魔法陣みたいな名前のやつ他にもあったな。

 ちょっと探すか。


「えーと」


『掘削の魔法陣』


『コストX:呪文』


『山札の上からX枚を見る。その内からカードを1枚選び、相手に見せてから手札に加え、その後山札をシャッフルする。Xは1以上の任意の数値』


「だから何でいちいち相手に見せるの?」


 ひょっとして対人戦想定してる?

 やらねーだろこんなしょうもない能力でよ。

 一瞬でチートスキル持ちに鎮圧されるわ。


「他は……」


『魔法陣』


『コスト1:呪文』


『カードを1枚引く』


 こんなんあったっけ。

 悪くない……か? 事故率を減らせそうなのが良い。


「クソッ、所持枚数1枚かよ。多分さっきの5パックで初めて出た感じだな?」


 露骨に排出絞りやがって。

 だが残念なことに、俺のスキルには問い合わせる運営が存在しない。

 許せねぇよな。


「……」


 所持カードにざっと目を通し、例の「闇の母蜘蛛」のところで目が止まる。


「ふむ」


 蜘蛛、というよりはアラクニドだな。

 顔の上部半分は蜘蛛の頭になってはいるが、口元だけでも美人であることが伺える。

 下半身は……まぁガッツリ挟角類だが。


 何より見るべきところがある。


「でっか……」


 コストの話ではない。

 いやコストもでかいが、それ以上のモノがある。

 何とは言わんが。


「これ召喚したら生で見れんのか」


 まずい。煩悩が止まらん。

 

「健全系の1枚絵がどうしてこうも唆るかね。いや、健全だからこそか」


 デッキを組む手が。


「まぁ仮組みだけどね。仮組み」


 性欲とギャンブルにハマったらマジで終わるって。

 なぁ。


「今まで何の意味があったのか不明なカードもいくつか意義が見出せてきたな」


 やべぇって。

 異世界で生死を賭けた戦いやってんのに。

 止めらんねぇ。


「あー……これ入るなぁ」


 そもそもコンセプト与えられてからやるデッキ構築が楽しすぎる。

 助けてくれ。


 このままじゃ……このままじゃ……!


「……ってな具合で新しいデッキでの参戦だ。よろしくな」


 予定されていた集合時刻。

 奴らと最初に出会った公園にて俺はアルバートに向けて笑顔でそう言った。


「新しい……デッキ……?」


「普段とは違う戦法でいくってだけだ。足を引っ張る真似だけはしねぇから。心配すんな」


「それなら良いんだが……」


 大柄の茶髪男、アルバートが咳払いをする。


「では、今回の依頼内容だが」


 そんな具合で説明が始まる。

 要点だけメモを取りつつ聞いていると、ポンと肩を叩かれる感触。

 

「なぁなぁ。俺、ローリス」


 金髪のツーブロック、緑色の目。公園で会った時と変わらない灰色の作業着。

 薬でもやってそうなヤバ野郎がにやにやと薄ら笑いを浮かべながら話しかけてきていた。


「……ミギテ・ピカライトだ」


「ミギテくんメモ取ってんの? マジ偉ぇ〜」


「お前みたいに知能が低そうな奴と行動するとなると、信用できるのは自分だけだからな。情報はしっかりと記録するさ」


「いひっ、ひゃひゃひゃ! ウケる!」


 何がウケるんだよ。殺すぞ。


 そんなやり取りをしてる内に説明が終わってしまったらしく、アルバートと目が合う。


「仲が良さそうだな。じゃあミギテ・ピカライト。お前はそこのローリスと、後はゴトウと一緒のチームで良いか」


「はぁ?」


「いえーい」


 ローリスが後ろでご機嫌そうに口笛を吹き始める。

 

「クソが……おい、お前!」


「何すかぁ」


「足引っ張ったらぶっ殺すからな」


 俺の言葉に、ローリスはにたっと笑って答えた。


「この仕事でそんなことになったら、殺されるより前に死んじゃうっしょ」


 よく分かってんじゃねぇか。くそったれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ