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異世界右手お祈りゲーミング  作者: ペリ一


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第29話:考察

 さて、ミギテ・ピカライトの固有能力とはいったい何なのか。


 見れば分かる。カードゲームだ。

 だがそこは重要ではない。

 どのような効果を持つカードなのか。

 今、アイツが何を起こしているのか。

 詳細に知ることが重要だ。


 コドクは(・・・・)思考する。


 カードの効果がどこを起点にループしているのか。

 それを探らねばならない。


 あいにくカードゲームには疎いが、このカードを使うとループする、なんて単純な書き方はされない事ぐらいは知っている。


 何らかの行動をトリガーに、連鎖的に効果の起動が行われ、循環している。


 耳にした言葉はいくつかある。


 適応する魔槍。

 コストを得る代わりに闇の子蜘蛛を召喚。

 

 俺にわざわざ見せたカードもあったな。

 闇の母蜘蛛。

 まぁあの強力なアラクネのことで間違いないだろう。


 コストを得る、か。

 どうやってコストを得ている?


 コスト云々の宣言は、適応する魔槍を使用したタイミングで行っていたように思う。

 どうやればアイツのループを止められる?


 術者本体を奇襲で叩くのが現状1番手っ取り早いとは思うが……他にも手法を考えてみよう。


 適応する魔槍がトリガーでない場合。

 他のトリガーとして、どんな可能性が考えられる?


 時間経過?

 闇の母蜘蛛からの供給?

 この場全体にそういうルールが敷かれている?

 それか……敵性個体の死亡?


 ふむ。現状確かめられそうな仮説から試していこう。

 死亡でコストを得るという説についてだ。


 ある程度自律行動させていた群れの主導権をこちらに戻す。

 そうして、使用された魔槍を回避した。


「——ッ!?」


 闇の子蜘蛛の召喚の数が減った。

 推定される数より2少ない。


 なるほど。

 当たりを引いた。


「共鳴の魔法陣! 対象は再臨の契約書! 山札に対象無し!」


 ミギテが何やら叫んでいる。

 何の呪文だ?

 共鳴……再臨……俺が行った回避の穴埋めか?

 それにしては何かが起こった様子は無いが。


「コドク先輩よぉ! 日が暮れちまうぜ! 俺と一騎討ちで決着ってのはどうよ!」


 何か言っている。

 まぁ、この後輩くんがそれなりにやれる奴ってのは理解した。

 日が暮れる、というのは俺も同意するところだ。

 適当なところで切り上げてしまったって構わない。


 時間は貴重だ。

 俺の仕事——この街で起きている問題も、まだ解決できていない。


 ただ、少し。

 俺相手に、手加減を前提としているとはいえ善戦ないし勝利できると確信していた、その生意気さが鼻につく。


 闇の母蜘蛛とやらの守りは完璧ではないことを教えてやろう。



◇



 眼前に、闇の母蜘蛛の2倍近いサイズの百足が出現した。

 それは凄まじい速度で接近し、闇の母蜘蛛と衝突した。

 そんなやり取りに巻き込まれては致命傷を負いかねない。魔王様もそう判断したのか、俺の身体が放り出される。


「蜘蛛の炸裂をプレイ」


コスト5:呪文:蜘蛛の炸裂

闇の子蜘蛛を2体召喚する。正面の敵に、場にある闇の子蜘蛛の数に応じた威力の物理ダメージ。


 即座に切る。このデカ百足を瞬殺するのは計算外じゃないのか?


 視界がホワイトアウトした。

 轟音と共に辺りに蠢いていた子蜘蛛達が百足へ殺到する。


 砂塵が舞う。周囲から羽音がする。

 魔槍を継続的にプレイし続ける。

 回避されたか? まずい、あと1枚しか無い。


「なるほどな。大した火力だ」


 コドクだ。

 闇の母蜘蛛の脇を通り抜けたのか、俺の目の前に現れる。


「合格点をくれてやるよ。ただ勝ちは譲れねぇ」


「生贄の剣(・・・・)。対象は俺」


 俺はピン差しのそのカードを即座にプレイした。


コスト8:付与:生贄の剣

付与時:付与された対象を除く全ての支配下にある魔物を破壊し、破壊した分、生贄の剣の攻撃力を上げる。


 手中に禍々しい気を放つ、錆びた剣が出現する。


「お前……ッ!?」


 炸裂に使った闇の子蜘蛛が死ぬ前に、効果コストにした方がお得だろ?

 魔王の命すら吸った剣を振るう。

 コドクが驚愕の表情を浮かべながら吹き飛び、剣を薙いだ風圧で砂塵が散る。

 

「再臨の契約書。対象は闇の母蜘蛛」


コスト3:呪文:再臨の契約書

この戦闘中に自分が召喚し、破壊された魔物を1種類選ぶ。

それを再召喚する。

10秒後、再召喚した魔物は自壊する。


 さて、これで手札は適応する魔槍1枚のみ。

 山札もゼロ。

 俺のリソースはおしまい!

 10秒ごとのサモンファングくらいだな!


「魔槍! 魔槍魔槍魔槍魔槍魔槍ッ!」


 命中する限り適応する魔槍を使用する。

 あ、外れた。


「サモンファング!」


 素人なので出鱈目に剣を振り回すことしかできない。

 だがそれで十分なほどの破壊力。


「不快な剣だが……まぁ良い。勝利を優先しよう」


 蘇った闇の母蜘蛛が俺をワイヤーアクションよろしく高速で前に進ませる。

 吹き飛んだコドクに追いついた。

 分散してねぇ。デカいの出した反動か何かか?


 いずれにせよチャンスだ。


「おら食いやがれぇッ!」


 コドクの目が見開かれ、そして——。



 ——突如球体となったコドクに剣が弾かれる。


「お、おおおお!?」


 いってぇ! 手がビリビリする。

 後ろから闇の母蜘蛛が糸越しに声を伝えてきた。


「その者の中には数多の生物が眠っている。気をつけろ」


 俺は剣を構え直した。

 球体から声が響く。

 さぁ、なんだ。どんな手でくる?


「止めだ、止め! 俺の反則負けだ!」


「……え?」


『戦闘を終了します』


 無機質な音声が、俺の勝利を告げた。



◇


 

「約束しちまったからなぁ。2種類に制限するって」


 白い空間に戻ったこの模擬戦用の部屋で、コドクがあぐらをかいてそう言った。

 そんなこと言ってたか?


「だよな」


 横目にローリスがそう言って頷いたのが見えた。

 じゃあ言ってたのか。


「ちなみに何種類あるんすか?」


 俺の質問にコドクが薄く笑みを浮かべた。


「ま、お前ら期待以上だ。仮にBランクに間に合わなくても……いや待て……そうだな……」


 質問には答えてくれないらしい。

 コドクがブツブツと何か呟きながらスマホを開いた。


「うん。お前ら、俺の仕事手伝え。そしたら推薦してやるよ」


「は?」


 コドクが立ち上がる。

 そして何もないはずの場所でドアノブを握るような動作をした。


「ちょっと来い」


 扉が出現し、ガチャリと音を立てて開く。


「おい何だよ仕事って。休暇つってたのは嘘か?」


「もちろん嘘だ。いいから2人とも着いてこい」


 ローリスと顔を見合わせる。

 まぁ、着いていくけども。

 というかそうしないと帰れない。


 扉をくぐる。

 薄暗い、研究施設っぽい廊下に出た。

 ずんずんと歩いていくコドクに慌てて追いつく。


「迷宮作成の能力を持っていたアシヤという転移者は、迷宮を大規模化していくにあたって個別の階層の管理役のような魔物を錬成した」


 歩きながら、コドクが喋り始める。

 迷宮作成の能力。アシヤ。


「主人であるアシヤが死んでも、ダンジョンと管理役の魔物達は残った。だから迷宮は相変わらず稼働を続けている。今もダンブルグが栄えている理由だな」


 管理役って、たぶん階層主のことだよな。

 アイツらが稼働も担ってんのか。

 何のために?


「階層暴走《フロアオーバーフロー》を知ってるか?」


 頷く。

 キンさんに聞いた。

 階層が勝手に統合される現象だったか。

 地上と統合される場合もあるらしいな。

 何年か前にそれで大騒ぎになったとか何とか。


「アレは管理役の魔物がリソース調整のためにやっている事だ。使わないフロアの削除。コスト削減だな」

 

 リソース管理ね。

 どこも世辞辛いな。

 ん? 待て、そうなると妙だな。


「じゃあ地上と統合された事件は、ありゃ事故か?」


 あの場合削除したい層はどこだ?

 1階層を消したいなら1階層と2階層を統合してしまえばいい。

 地上と繋げた意味は何だ?


 コドクが感心したような声を出す。


「ちゃんと知ってるのか。偉いな。だが答えは変わらない。階層暴走はリソース調整のために行われる」


 リソース調整。

 コドクは今、削減じゃなく調整と言った。

 そうか。そういうことか。


「リソースの確保のために地上を飲み込もうとしたのか?」


「正解。やるねぇ。だが20年前の侵攻は失敗に終わった。奴らが期待していたほど大した人死にが出なかったからな。その時に主人無きダンジョンを成長させようとする過激派の魔物どもも始末された」


 この話の着地点が見えてきた。

 同時に、延々と続くように見えた廊下が唐突に終わる。

 何もなかったはずの壁に扉が現れた。


「もう起こらない。少なくとも地上を飲み込むような形では。そう思われていたが……奈落院所属の転移者の1人が階層暴走、それも地上との統合の兆候を検知した」


 中は、会議室のような場所だった。

 ギルドの資料室で見た物と同じパソコンが一台。そして円卓のような机。椅子。

 壁に貼られた地図。


「おい、トクメイ! 調査結果を報告しろ!」


 コドクが虚空に向け叫ぶ。

 トクメイ? 誰だ?


 数秒の後、PCがひとりでに起動した。

 ツインテールの美少女キャラが画面に映る。


『いらっしゃいませ陰険虫野郎に紙オタクくん。それにローリスちゃん。いやぁ、きみ可愛いねぇ! もっとモニターの近くに来てくれよ!』


 そしてニチャニチャした音声で喋り始めた。

 

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