↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界右手お祈りゲーミング  作者: ペリ一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/27

第24話:チェックイン

「まったく、酷い目にあったな」


 1日薬を飲んで寝て、何とか体調を戻してダンジョンに潜る。


 来たのは区画D。絨毯が敷かれた道が延々と続く。

 時折ある部屋と、そこから更に分岐する通路。


「ホテルみてぇだ」


 手元には地図があるが、頻繁に確認しないと迷いそうだ。


「ホテルってこんなんだっけ」


「高いとこはこうなんだよ」


「へー」


 ローリスと適当に会話しながら、歩みを進める。


 見た目こそ上等だが、当然ながらここを整備・清掃する者はいない。

 絨毯は固く、全体的にすえた臭いがする。

 通路は電灯に照らされ明るいが、その電灯の設置箇所がやたらに無造作で、眺めていると酔いそうだ。


『システム起動』


「キ——ィイイイ」


 極め付けは、この扉に擬態する客骸(きゃくがい)と呼ばれる魔物。

 俺の能力がなければ2回は不意をつかれていた。


『初期コストは3——』


 システム音声が終わるより早く、ローリスが駆け出す。

 同時に俺も初期ハンドにきたアクアウィップとサモンファングを即叩きつけ、客骸が破壊された。


『戦闘終了』


 魔石を拾う。


「こいつの擬態からの不意打ちコンボが難易度上げてるだけだな。やっぱ本体そのものは弱い」


 弱いつっても初期コスト3だから、徒党組んでる機械兵ぐらいの強さはあるけどな。

 

「この区画って他の魔物も出るんじゃなかったっけ」


 ローリスの言葉に頷く。

 勉強したことを覚えてて偉いぞ。


「ちなみに何が出るか覚えてるか?」


「区画Fの背広鬼がこっちにも出るだろ、そんでぇ、えーと……」


 そうそう、あの異形スーツな。

 あと2匹いるぞ。


廊哭ろうこくとホテルマン、な」


 どちらも音で接近が分かる。

 廊下ですすり泣く声がするなら廊哭がいるし、ホテルマンはこちらを認識した際にベルを鳴らすそうだ。


「廊哭の声は聞きすぎるとまずいから2回遭遇したら帰る支度を始めた方が良い……だったっけか?」


 5回接敵が危険域って話だが、聞きすぎるとどうなるかは未記載だった。

 何回廊哭と遭遇したかの上限値が7回で、それ以上はおそらく帰ってこれずデータに現れない。

 ギルドのデータベースによる情報はそんなところだ。


 廊下を進む最中、不意にチリーンと音が鳴る。

 受付で係員を呼ぶ時の音。ベルが鳴る音。

 あまりにも自然に鳴るものだから、一瞬理解が遅れた。


『システム起動。初期コストは6です』


「マジかよ結構強いぞッ! 構えろ!」


 ローリスに向け、コンシェルジュのような装いをした青い炎が迫った。

 ホテルマンだ。

 

「おわ!」


 反射で振るった斧がホテルマンを裂く。

 炎の身体は一瞬2つに分かれた後に、即座に再構築された。


「アクアウィップをプレイ!」


 再構築の隙を突くように水の鞭がうなる。

 ホテルマンに直撃したが、これでくたばるとは思えない。

 残りコストは4。


「下がれ下がれ!」


 案の定、斧の時よりは鈍いものの身体を再構築したホテルマンが扉に触れた。

 扉が邪悪な気配を纏い、動き始める。


 おい、お前それ……客骸にしたってことか?

 初期コストの計算を終えた後に敵を追加したって意味か? てめぇオイ。

 ずるじゃねぇか。


 ハンドを再確認する。


“自由自在”ローリス。


コスト8:魔王:闇の母蜘蛛

《子喰らい》このカードの召喚コストをX支払う代わりに場に召喚されている闇の子蜘蛛X体を破壊しても良い。(Xは8以下の任意の数値)

《無尽の卵嚢》貴方がコストを1得る時、コストを得る代わりに闇の子蜘蛛を1体召喚する事を選んでも良い。

《闇の軍勢》貴方の手札にある、闇の子蜘蛛を召喚する効果、または闇の子蜘蛛の数を参照する効果を含んだカード全てのコストはその時召喚されている闇の子蜘蛛の数と同値分低下する。ただしその際、コストは0以下にならない。


コスト5:呪文:盾の召喚

任意の目標を対象として発動する。

その正面に盾を設置する。


 そしてアクアウィップを使用してから引いたサモンファング。


コスト1:呪文:サモンファング

目の前に魔力による牙を発生させ噛み付かせる。



 あのねぇ。君ねぇ、ピン差しのカードばっかりをねぇ……まぁいいですけども。


 さて、考慮すべき問題は手札だけではない。

 このホテルマンの異常さだ。

 扉の客骸化もそうだが、見た目もおかしい。炎が赤でなく青になっている。

 

「報告に無い個体だ、警戒しろローリス」


「あ、やっぱそうだよな? 了解」


 ホテルマンが懐からベルを取り出す。

 流石に反応できない。

 データ通りならアレを壊せば終わるはず——。


 チリリン。


 ベルが鳴る。景色が流転し、周囲が廊下から、ホテルのエントランスのような場所へと変化した。

 ホテルマンはカウンターに腰掛けており、周囲に客骸が5体浮いている。

 どこからともなく、すすり泣く声が聞こえてきた。


「いらっしゃいませ。幸運な転移者様。ウェルカムドリンクをどうぞ」


 なんだ、誰が喋った!?

 周囲を詳しく確認する暇もなく、客骸が一斉に襲いかかってきた。


「サモンファング」


 残りコスト3。

 運良く2体にまとめてヒットし、両者が半壊。

 勢いが削がれる。

 ローリスの方は早々に1体を斧で両断し、もう1体を蹴り飛ばしているところだった。

 次のドローは焦げた召喚鈴。


コスト2:付与:焦げた召喚鈴

焼け焦げた臭いがする黒い鈴。

付与中:対象を30秒間狂乱させる。


「焦げた召喚鈴。対象は——」


 客骸? いや、ローリスが殲滅する方がはやい。

 ホテルマン? あいつは奥のカウンターに腰掛けたままだ。意図は不明だが、戦いに関与してこないなら一旦刺激したくない。


 ならば。

 声を頼りに見つけて殺すしかない、不可視の魔物である廊哭だろう。

 居場所もついでに炙り出す。


「廊哭」


 残りコスト1。


「ギィイイイイアアアア!!!!」


 すすり泣きが悲鳴へ変わる。

 ホテルマンすらもびくりと身を震わせた。


 次のドローはアクアウィップ。


コスト2:呪文:アクア・ウィップ

水を束ねて、敵を打ち据える。


 所持コストは今増加し、2になった。

 使用は可能だが……クソ、バーンデッキなのが最悪だな。

 お守りで入れている闇の母蜘蛛を出したいところだが……70秒待つ? 正気じゃないね。


「キィィィイイイイイ」


 客骸が1体ひとりでに潰れた。

 廊哭が暴れているようだな。


 続いて客骸の最後の1体を仕留めたローリスに声をかける。


「一旦退くぞ! コストを溜めたい!」


「了解!」


「ギィイイイイアアアア!!!」


 ホテルマンが動く。

 懐からベルを取り出し、再び鳴らした。


 チリリン。


 景色が廊下に戻る。

 俺は即座に意図を理解した。


 こいつは補充・・しに来たんだ。


「そいつを扉に触れさせるなぁああああッ!」


「わかった!」


 ローリスが斧と刀の両方を構えて飛び出す。


「アクアウィップをプレイ!」


 扉に手を伸ばしたホテルマンの身体が半壊する。

 ベルが一瞬露出した。


 ローリスの刀が差し込まれる。


 ギャリギャリと耳障りな金属の衝突音が響く。


「——」


 半端に再構築された手が、扉の前の空を切り。

 ボロボロと崩れるようにして消失した。


『戦闘終了』


「ハァッ、ハァッ」


 ベルの破壊で死ぬのは同じか。

 クソ、結果論だが引いた呪文全部即叩きつけしたら勝ててそうだったな。


「ローリス、無事か?」


「ん? おう」


 よし。狂乱した廊哭があの謎空間に放置されているのが少し気になるが……あんな空間って地図に無かったよな。

 まぁ30秒もあれば解除されるし、大丈夫だろう。


 それにしても今のは何だったんだ。

 ここのダンジョンマスターが仕込んだ転移者用のステージってとこか?


「正規クリアじゃない気がすんな」


 客骸を避けてホテルマンに攻撃しなきゃいけない感じなのかもな。

 雑に客骸全部殺してからホテルマン殴ろうとすると咎められる、みたいな?

 廊哭は実質的な制限時間か。


「さて……」


 青く燃えるような模様の魔石を拾い上げる。

 ホテルマンのドロップ品だ。

 こいつは……一儲けできたんじゃなかろうか。

 今日はもう撤退しても良いかもな。


「どうするよ、ローリス」


「うーん。てかさ、さっきのって無限に客骸狩れたんじゃね?」


 うーわ、マジじゃん。お前天才かよ。

 クソ、無限湧きの客骸か……もう一周分くらい狩るべきだったか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
稼ぎに余念がなくて偉い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。