第13話:新カード
「普通にローリス待たずに開けちゃお」
後でカード見せればいいだろ。
俺は安宿に着いた途端に心変わりし、パックを開けることにした。
『100ポイントを消費して、パックを1枚開封します。よろしいですか?』
「よし」
『樹界通信中——パック開封——カード排出を開始』
この樹界ってのがアオバのいるところなのか?
よく分からねぇな。
「おぉー新カードまみれ……んん?」
盾の召喚が混ざってんな。
おいおい。新カードの排出確率が高めなだけか? ひょっとして。
そういうのを書けって言ってんだけど分からないもんなのかなぁ!?
アオバくんさぁ!!! いちいち具体的に言わないとダメかなぁ!!?
「ふー……落ち着こう」
出た新規のカードは4枚。
「まずはこいつ」
『魔界の運び屋』
『コスト3:魔物』
『小柄だがかなりの馬力を持つ魔獣。
召喚時:カードを1枚引く』
フレーバーと効果の区切りが分かりやすくなってるな。
イラストはねじれた角を持った紫色の牛。
普通に取り回しが良いカードだな。
コスト3かつドロー効果。
「そんで問題はこっからだな」
『盗人の仕事靴』
『コスト3:付与』
『付与中:体重を軽くする』
ほーん。
付与か。対象は俺以外も選べるのか?
「付与についての詳細!」
システムは沈黙している。
いい加減にしなさいよほんとに。
まぁいいや次いこ次。
『召喚士のローブ』
『コスト4:付与』
『付与中 《プレイヤー》:コストが6以上ある場合でも、10秒ごとに1コスト生成される』
付与中、プレイヤー……おお。
これがあるだけで付与の対象が他も選べることが確定した。
やるじゃねぇかアオバ。
それはそれとしてこのカードは雑魚やね。
俺は6コスト以上抱えていると1コストを生み出すまでの時間が10秒から15秒になる。
このカードは4コストを支払い、かつコストを6以上溜めて10秒待つ事でようやく効果を発揮するわけだ。
では4コストを40秒の損失と考えよう。
この損失を埋めるには、8コストを得るまで所持コストを6以上の状態を維持しなければならない。
「気の長ぇ話だな」
これを付与した上でそんだけコストを余らせてられる状況ならそのコストで魔物を召喚するか呪文を唱えまくった方が勝てる。
というか8コスト時点で闇の母蜘蛛召喚できるからな。
というかあの人本当に強い。出せたら勝ちレベル。
正直ローリスを見捨てていれば、あの魔法陣絡みのギミックが無くても勝てただろう。
それだけのパワーがある。
「そんで次は?」
『再臨の契約書』
『コスト3:呪文』
『この戦闘中に自分が召喚し、破壊された魔物を1種類選ぶ。
それを再召喚する。
10秒後、再召喚した魔物は自壊する』
おほほほほーーーッ!
来た来たぁ! 蘇生系のやつ!
悪いことするぞぉ〜!
「今の手持ちだと竜頭蛇尾だな」
コスト6で召喚時にコスト3を得られる魔物だ。
つまりは実質0コスト! 踏み倒し大好き!
待て、流石に召喚時効果は発動するよな?
召喚と再召喚は別とか言い出したら流石に許さんからな? 聞いてるかい、アオバくん。
「やっぱ新弾は心が躍るな」
残りは15パック分。
はたして全部剥いてしまって良いものか?
「新弾用に5パック分くらい取っとくか?」
ざっと見た感じ意外と新カードは出てくれる。
そう慌てて全ツッパしなくても良いはず。
「よし、ここは我慢だな」
そうして俺はあっという間に16パックを開け終えた。
自制とか無理やね。
「さて……」
結果としては竜頭蛇尾の2枚目が手に入ったり、なんか盾の召喚が3枚入ってるゴミパックがあったり等色々とあったが……新カードも追加で6種出た。
コスト2:付与:魔力貯蔵のペンダント
付与中 :魔物カードをプレイした時:このペンダントの魔力スタックを+1する。
付与中:付与対象者の被弾時:このペンダントの魔力スタックを-1する。
魔力スタックは、各数値の初回到達時に効果を発動させる。
魔力スタック1:盾を得る
魔力スタック3:カードを2枚引く
魔力スタック5:貴方のハンド上限は5枚になる
コスト2:付与:イカサマ師の手袋
付与中 《プレイヤー》:カードを引く効果を発動する際、山札の上を1枚確認する。その後、山札の上のカード1枚を山札の1番下に送ってもよい。
コスト2:付与:召喚連鎖理論
付与中:この戦闘中、既に召喚した魔物カードのコストが1下がる(コストは0以下にならない)。
コスト1:呪文:群呼びの唄
手札にある魔物カード1枚を選択する。
それと同名のカードを1枚山札から選び、相手に見せてから手札に加える。
コスト8:付与:生贄の剣
付与時:付与された対象を除く全ての支配権がこちらにある魔物を破壊し、破壊した分生贄の剣の攻撃力を上げる。
コスト6:付与:山賊の胸当て
付与中:受けるダメージが軽減される。
「俺さ、具体的に書けって言ったよね?」
なぁ、山賊の胸当てくん。
軽減って具体的にどのぐらいなの?
数値で表さなくてもいいよ。だってこの世界HPの概念無いし。
骨折がねんざで済むくらい、みたいなさ。
もうちょっと具体性を上げて欲しいかな。
「生贄の剣は結構惜しいカードだな……」
再臨の契約書の自壊効果を実質的に踏み倒すとしたら?
そう考えた時、カードゲーマーなら皆思い浮かべるであろう「破壊をコストとするカードのコストに使う」という手法。
だがあまりにコストが重い。
格上戦で初期コストが多い際に再臨→生贄の剣はやるかもしれないが……普段使いは厳しそうだな。
「多分連鎖召喚理論と群呼びの唄はデザイナーズコンボっぽいよな」
コンボっつーかシナジーがあるだけだけど。
そんでイカサマ師。悪くないように見えて意外と発動機会に乏しい。
俺の能力ってドローにコスト使うのそんなに強くないんだよな。
つまりは、こいつを活かすためにドローカードを色々と積む行為が弱い。
そんでやれる事はドローの質の向上。
うーんって感じだ。
いつかコンボパーツに使えそうな気配はするけどな。
「そんでペンダントだな」
こいつと生贄の剣だけ1枚しか出なかった。
多分レアなんだろう。
「スタック1の盾を得るが偉いよなぁ……」
これって流石に盾の召喚の盾のことだよな?
もっとデッキを低コストで固めて雑魚狩り特化のデッキを作っても良いな。
「さてさて、じゃあ次は……」
寝そべりながらデッキ構築だな!
そうしてうだうだとカードをいじっていると、ドタドタと足音が聞こえてきた。
「右手くーん、ただいま! パック開封見せろよ!」
「もう全部開けた」
「は? てか何その紙の束。部屋散らかすなよ」
一時的に具現化してる俺のカードだっての。
ステータスウィンドウ的なやつからでも弄れるが、俺はこっちのが落ち着くし思考もまとまりやすい。
てかお前今紙束つったか?
そのワードがデッキへの侮辱と知っての発言か?
「お、このキモい魔物見たなー。あのでっけぇ蜘蛛の人は?」
「触んな!」
「えー。だって狭いし仕方なくねー?」
ローリスがうだうだ言いながらこちらにもたれかかってくる。
今真剣に悩んでんだ、邪魔しねぇでもらえますかい。
「あ」
てか今思い出した。
空白のカードだ。
「おいローリス。お前、俺のカードになる気はあるか?」
「え? どういうこと?」
俺はリストの中から空白のカードを選び、具現化する。
「俺は俺が有利であればあるほど弱体化する。お前みたいな強い奴が味方にいるとなおさらな。だけどお前をこのカードに登録して完全に味方と認定できれば……お前はその有利不利の勘定から外れる」
「よく分かんねぇけど登録し得じゃね? それ」
よく分かってんじゃねぇか。そうだよ。
「ただカードに登録ってのが俺にもよく分からない。何が起こるのか、登録された側への影響やそのカードの」
「別にいいよ」
カードが輝きを放ち始める。
部屋中が白で塗り潰され、俺は思わず目を瞑り——。
目を開けると、先ほどと全く同じ景色が飛び込んできた。
「……マジで登録されるだけ、か」
「だな。お、こいつ何?」
即決すぎるしカード勝手に触るし無茶苦茶だ。
俺はため息をつきつつ、手元のカードを見る。
“自由自在”ローリス
なんか勝手に二つ名ついてるし。
自由自在っつーか傍若無人だろこいつは。




