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異世界右手お祈りゲーミング  作者: ペリ一


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14/19

第14話:いつもの銭湯

 休み明け。いつものように機会兵の出現情報をチェックしてから都市部を出る。

 

 普段と違う点はローリスがいること、そして。


「題して連鎖ペンダント。戦いは数だぜ」


 デッキの内容。

 昨日までとは軸からして違うデッキを握っている。

 と言いつつ軸にしてるペンダントはピン刺しだけどな。


 今日も今日とて各所に点在する処理場の近辺にて機械兵が発生しているらしい。

 予算が少ない区画は大変だな。


「お、いたいた。そら始めるぞ」


「了解ー」


 機械兵が5体。

 普段ならスルーを検討するが今ならむしろ幸運だ。


『システム起動。初期コストは4です』


 カードが3枚排出。

 一瞬遅れて1枚のカード、“自由自在”ローリスが加わる。


 さてハンドは?


コスト2:魔物:凡庸な小鬼

 小柄で力の弱い緑色の小鬼。

 所持する棍棒で敵を殴打する。


コスト1:呪文:群呼びの唄

手札にある魔物カード1枚を選択する。

それと同名のカードを1枚山札から選び、相手に見せてから手札に加える。


コスト2:魔物:レッサーゾンビ

 特に状態の悪い死体がアンデッドになった姿。


「凡庸な小鬼、群呼びの唄、レッサーゾンビか」


 2コストの魔物が2枚。

 あまりにフレーバーが弱そうなんであまり採用してこなかった2種だな。


「群呼びの唄、対象は凡庸な小鬼」


 機械兵に手札の凡庸な小鬼を見せつけた後、山札から取ってきた方の凡庸な小鬼を見せる。


「右手くんなんでいちいち見せるの?」


「マナーだ。凡庸な小鬼を召喚」


「へー」


 ローリスがどうでも良さそうに1番手前の機械兵を叩き殺す。

 それに続くようにして凡庸な小鬼がのそのそと機械兵に棍棒で殴りかかる。


 さてドローは……荒くれ土人形か。

 連鎖召喚理論が欲しかったんだがなぁ。


「なんかパッとしねぇな」


 普段使ってるファイアストライクとか詰めたデッキの方が強い気がする。

 ペンダント活かすために呪文は入れてないんだよな。

 ピン刺しのくせにアホすぎるぜ。

 やめときゃよかった。


 俺がうだうだと10秒待っている間にローリスが2匹目を撃破。

 凡庸な小鬼が手こずっているところに助太刀に入る。

 残り3匹だが、その攻撃の矛先はほとんどローリスに向いている。


「低コストの魔物がマジで弱すぎる」


 さらに10秒経過。

 機械兵は3体ともかなり損傷を負っており、時間の問題に見える。


「召喚、凡庸な小鬼。連携して機械兵を倒せ!」


 2匹目を投下。それなりに統制が取れた動きで機械兵に襲いかかり、ローリスの援護もあってかあっという間に残りの3体を撃破した。


「……対あり」


 召喚された魔物が消え、カードがデッキホルダーに戻っていく。

 なんかいまいちやね。


 その後二箇所ほど情報があった場所へ向かったが、同業に先を越されたらしく討伐数を伸ばす事は出来なかった。




「駆除依頼、ご苦労様です。こちら報酬です」


 機械音声が流れ、取り出し口から硬貨がじゃらじゃらと排出される。

 それをローリスと等分した。


「あー……まぁいつも通りの額だな」


「俺は普段より少ないかも」


 こりゃあ問題だな。

 日銭分くらいは稼げたが……ローリス的には報酬が下がっている。

 わざわざ組んでもらってこれはなぁ。

 明日からはそれぞれで仕事をやるべきかもしれん。


「まぁ目つけてたテーマが実際回すと弱いなんてよくあることか」


 ローリスと組む上で最適な構築を探らないとな。

 とはいえ今日のところは——。



「はぁー……沁みるぜ」


 風呂だな。

 紙しばいた後はこれだよこれ。

 いやぁこの街が日本びいきの文化で良かった。


 だらだらと湯に浸かっていると馴染みの顔がやってくるのが見えた。

 ヤクマだ。


「よ、ライト。昨日ぶり」


「おーうヤクマ」


「復帰一発目の仕事はどうだった?」


 どうってなぁ。微妙なとこだな。

 今日は機械兵が多めのとこを見つけたがこれが3とか2匹程度しか狩れなかった時が悲惨だ。

 大型が出るような情報がありゃいいが……そういう時以外は一人でやんのが良いか。


「ぼちぼちってとこだな。明日以降はお互い一人で仕事する感じになりそうだ」


「そうなの? 二人でやった方が安全なんじゃ」


「安全策取ってると食ってけねぇんだわ。俺らの仕事は早期駆除……本格的に増えたやつは国が対処するからな。不要っちゃ不要なんだよ、俺ら掃除屋はな」


 益はある。早期駆除は国の予算的にもありがたいだろうしな。

 負傷者が出る可能性も低くなってるだろう。

 だがそんだけだ。

 別にいなくてもいい。


「その、ライトはさ」


 ヤクマが躊躇いがちに口を開く。


「この都市から出た方が良いのかも」


「はあ?」


「繁殖機能を持った大型の機械兵を狩れるだけの力があるなら。掃除屋やってる場合じゃないよ」

 

 そうか?

 そりゃ初期コストの調整機能で勝てるが……それでも出力の上限がある。

 具体的に言えば、闇の母蜘蛛で倒せないやつが出てきたら俺はどんだけコストを渡されても多分死ぬ。

 いや、厳密には生贄の剣絡みで勝てるかもしれないか。

 それでもそうとうシビアな引きを要求される勝負になる。


「店長にこの世界のことを色々聞いたんだ。あの人は外からやってきた人だからさ。この都市が異常なんだって。技術も、目立った脅威が機械兵くらいなのも。それに、固有の能力を持った奴がわんさかいるのも」


「そのぐらいは一応知ってるよ」


 ヤクマが首を横に振る。


「わかってないよ。農業はもっと魔物や害獣との戦いだし、ダンジョンを抱えてる都市もある。ここじゃあんまり見ないけど、魔術を基幹にした技術発展をしているところもある。ヤクマはそういうところに行った方がもっと金が稼げる……どころか、英雄になれるかもしれない」


 真剣な表情だった。

 確かにここで雑魚機械兵を延々と狩ってたって大した金にはならないことは、俺だって分かってる。

 

「勘弁してくれよ。ちょっと腕が立つ程度で英雄とか、そんな甘い世界じゃないだろ。それに関所に払う分の金がねぇ」


「俺が出すよ。少ないけど……貯金はできてるから。もう一ヶ月くらい待って欲しい」


 ヤクマの眼を見る。

 あまりに真っすぐ見据えてくるものだから、俺は思わず顔を逸らしてしまった。


「そこまでしてもらう義理はねぇだろ」


「あるよ。ライトはわけのわからないこの世界に放り出されて、宿を取るよりも前に、物乞いをやってる俺に金を渡した。なかなかできることじゃない」


「それは、なんつーか打算もあったし」


 ヤクマが笑う。


「俺は急にこの世界に転移して、わけがわからないまま最初に渡された金もスられて、毎日死にたいと思いながら物乞いをやってたよ。ライトに声をかけられるまで、何か変えようと頑張るなんて思いもしなかった」


「切羽詰まってる時の視野はとんでもなく狭くなる。そういうもんだ」


「ライトは違っただろ? 俺に気を配った上で自力で生きてく手段を見つけた」


 別に。楽観的なだけだ。

 

「ライトはすごいやつなんだよ。俺は、そんなやつには報われて欲しい」


 すごいやつ、ね。

 どうだかな。誰かを助けるときは、たいてい俺のためにやってる。

 俺と同じ境遇のやつが辛気臭そうな、生きてて何の意味もないみたいな面を見てたら俺まで貶められるようで腹が立つ。

 くだらない死に方をしそうな時も、俺も同じように死ぬと突きつけられてるようで、価値がないと言われてるようで気に食わなかった。


「俺はどこまでいっても俺中心だ。英雄って柄じゃない」


「そう思ってるのはライトだけだよ」


 英雄だって思ってるのもヤクマだけだろ?

 あーいや、ローリス……は思ってないな。面白召喚士とかそんな風に思ってそうだ。


「仮にそうするとして、俺は能力の一部をローリスに依存する形になった。アイツの同意も要るぞ」


「……説得は俺も手伝うよ」


 説得ね。無理だな。

 湯から上がる。


「のぼせそうだ。先に出るぜ」


「ライト!」


 ヤクマに呼び止められ、俺はため息をつく。


「ローリスの同意が取れたらな」


「……!」


 旅行はそれなりに好きだった。

 同意が取れたらちょっと外に出てきてやってもいい。

 まぁ厳しいと思うけどな。




「え、マジ? 面白そうじゃん! 行こうぜ!」


 飯を食いながらローリスに相談したらそう即答された。

 クソ、マジかこいつ。

 今日不甲斐ないところ見せたばっかだろうが。

 

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