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第4話:欠月の中の毒花

 ここが私の部屋か。


 基本1人部屋で貴族と平民は寮を分けられている。


 もちろん貴族の寮と比べると、オンボロな気もしてこないが、部屋は1人一部屋でお風呂やトイレも完備してある。


 煌びやかな必要性も薄いから、困るところは何一つない。


 ゆっくり、ゆっくり、階段を歩く。


 学園が見え、スタンドグラスが太陽の光を浴び、自分から光っているように見える。


 ここかな303号室。


 鍵をバックから取り出し、ドアノブに手を出す。


 「カチャ」ドアを開けるとそこにいたのは1人の女子だった。


 うん?

 

 人がいる?


 おかしくね?


 1人部屋のはずなのに、人がいるなんて。


 もしかして、あの担任もどきが言っていた「カラー」という人なのか?


 むしろそれ以外の人だったら怖過ぎる。


 いや、ノックもせず勝手に入っている今の状態でも十分怖いんだがな?


 もしかしたら、幽霊とか幻とかかも知れないし?


 プチパニックになっている状況に不審者(?)が私に声をかける。


「どもども!ルナちゃん!」


 人だったかー。


 こんな依頼を受けている時点で普通もクソもないと思うが、最低限の礼儀は流石にあるだろうと一絞りの希望を願い、もう一回閉めてから、開ける。


 だが、虚しくも変わらない風景。


 「はい、はーい!よっろしくー!というかさっきのドアをまた閉めて開けるなんて酷くなーい?」


 私にとってはこの状況が酷くないか?と聞きたい状態だ。


 緑目に三つ編みをしている甘栗色の髪の毛。


 とてもじゃないが動きづらそうだ。


 動きづらいという点では私と同じか。


 でも、いきなり部屋にいるやつだぞ。


 まともなわけない。


 人の話が通じないやつだと思い、先生と話ができる固定電話に手が思わず伸びる。


 「先生。不法侵入者がここにいま…」


 「ちょっとー!告げ口なんて酷いジャマイカ」

 

 自分が悪いという非すらも湧かないなんて。


 話が通じない、モラルがない、20代みたいなのに親父ギャグを言う。


 トリプルコンボでアウトじゃないか。


 親父ギャグで脳がやられたのだろうか。


 正常な判断が出来なさそうだ。


 テンションも明らかに高くて、私と性格が合わないが、仕事のため、ひいてはルアのために無下にすることが出来ず、無視しながら歩いていると声をずっとかけられる。


 「塩対応ー。しんらーつー。ねー、ねー、私ー、悲しいってばー」


 私の跡をつきまわっている。


 まるでストーカーみたいに、音すら出さず、延々と歩いている。


 騒ぎ立てられるとこちらが叱られる。


 一言言わなくては、


 「うるさいです」


 「でもいいじゃーん!あと、ルナちゃんて起こり慣れてないよね。とっても可愛いよ♡」


 本当にどこがいいのかが全くわからない。


 これが俗にいう同性愛者か。


 私自身差別するつもりは全くないがここまでウザすぎるのは気に入らない。


 冷たい目でカラーを見つめる。


 「私のこと好きになっちゃったでしょ」


 なぜか自信満々にいうカラー。


 それに呆れる私。


 その構図が変わらず、数分が経つ。


 「あっそうだ!聞きたかったことがあるんだ!」


 「ピコンっ」と顔を明るくする。


 一刻も早くこの部屋から出ていってほしいため、質問を受けた後素早く追い出そうと考えている。


 「ルナちゃんって双子のルアちゃんと離れてちょー寂しくないの?」


 「理由は?」


 「僕だったら寂しくて耐えられないからちょっと気になって」

 

 耳たぶを触っている。


 これは嘘だ。


 人間は嘘をつくとき、ある程度同じ行動をする。


 この行動はそれと全く同じだ。


 聞いたところで決して答えてはくれないのだろうがな。


 せっかく聞かれたのだ。


 一応答えよう。


 答えなければ黙って帰って行くはずがない。


 このままぐだぐだしてても無駄だ。


 こいつに割く時間が惜しい。


 さっきの質問だが、まず、前提がおかしい。


 “私とルアは離れてる?”


 いいえ違う。


 「だって私達は2人で1人、1人で2人決して離れられないんですから」


 当然で当たり前でしょう?そう問いかけるように言う。


 だってルナにとっては当たり前の事実を言っているだけなのだ。

 

 部屋が一瞬にして黒く染まる。


 今日は三日月………、いや、この国の呼び方では欠月のはずなのにその闇の中に一筋の満月を見上げているルナがいるように見えた。

 

 その光は触れてはいけないと思ってしまうほどに恐ろしく見えた。


 まるで、儚く、一瞬で散る花に毒を持たせたみたいに。


 ルナの容姿はそれほど端麗というわけではないがそのときのルナは、


 それは、


 それは、


 “とても美しかった”


 人外かと思うってしまうほどに。


 その幻影から離れた一瞬に惚けていた心が恐怖として襲ってきた。


 「ふーんっ、あーし、もう帰るね」


 ???


 何故そんなに畏怖をしてしまったような顔をしているのだろう。


 この言葉がそんなに心に響くような物だったっけ。


 まだまだ話し足りないのだが、これは好都合。


 さっさと帰ってもらって、荷物を置こう。


 ギルマスが送ってきたやつらやかましいし、うるさい。


 あいつと関わっている人の中にまともな人はいないのか。


 「はぁーー」と深くため息をついた後、荷物を置くのであった。



 

 そのときギルマス室ではカラーとギルマスが喋っていた。


 カラーがギルマスを「キっ」と怨念のこもった目で睨みつける。


 「てめーのせいであーし、怖い目にあった。給料増やせ、このクソギルマスが」


「お前がそこまでいうのか」


 カラーは齢16で暗殺の道に入り、たったの7年で暗殺会のトップとも言われるエリート中のエリートだ。


 そんな子がたったの12歳の少女に怯えているんだ。


 普通なら笑い物にされるだろうが、ギルマスはそれを見越していたかのような目で見つめる。


 「あぁ、そうだ。質問していた結果はどうだった」


 「2人で1人。1人で2人だってよ」


 やはり、お互いがお互いを依存しあっているのか。


 依存というのはいわば麻薬。


 お互いが相手の薬であり、毒でもある。


 あの2人はまだ子供だ。


 ああなった原因は大人にある。


 それならば、それを改善するのも大人の役目だろう。


 ルナとルアは周りが全員敵だと思っている。


 俺含め全員だ。


 だから、同じくらいの歳の子供が集まっている学園に行かせたかった。


 だが、並大抵なことなら2人は動かないだろう。


 そう悶々と考えていたときに、一通の手紙が来た。


 国王陛下から女子でいい護衛がいないかとそういう手紙だった。


 危険な事にも耐えられる人間で、女子で頭も良く………。


 と考えて出てきたのがあの2人だった。


 だが、ルアは排他的すぎることや、リーダーが3年間もほぼ不在なんて許されない事。という事を考えると必然的にルナとなっていった。


 こんな事を考えていたなんて気づいたないだろうがな。


 研究所から逃げ、俺らを見たとき、恐怖で震えていたお前らを見て、何にも思わないわけではない。


 こんなことが罷り通っている事自体がおかしい。


 俺だって一応。


 お前らのことは心配しているつもりだ。


 直接助けれない立場なのがネックだがな。


 「どんぐらい給料が欲しい」


 「いつもの給料の2倍」


 っっっ、いつもの給料って平民の1ヶ月の給料の5倍だぞ!?


 5倍!?


 さらに2倍アップとは


 「現金の欲が強いやつめ」


 「だってお金は正義なのだから」


 自信満々で当然かのように答える。


 「わかった手を打とう」


 ホクホクとした顔で窓から飛び降りて帰るカラーであった。


 カラーにとって金=正義なのである。


 人によって正義は変わる。


 法律とか様々な考えがある。


 正義と正義がぶつかり合うことで生まれる戦いもある。


 たまたまカラーはたまたま金だっただけだ。


 「俺の正義って何なんだろうな……」


 天に正解を仰ぐが答えてくれることはない。


 正義はときにぶつかり合い、騒動となるもの。


 そこに善悪はない。


 模範的な行動はときとして悪となるものだ。


 過去の俺はしてしまったが、今の子供にはそんな事をさせたくない。

 もう一度考えに浸るのであった。

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