第5話:学園長はいけすかないやつ
入学式の騒動からはや数日。
平穏な日々を過ごしている。
今は社会の授業中だ。
「………獣人は今も戦争して、敗北してしまったが、公爵が住むところも用意している」
本当ならすごくいいことなのだろうけど、そんなに簡単に上手く行くことなのか
相手は自分の同胞を死なせた原因だぞ。
同じ国の人でもうまくいっていないのに、本当にそんなことが起きているのだろうか。
もしかしたら搾取しているかもしれない。
ブラックベル公爵家を一応警戒しているが、警戒を緩めないようにしよう。
「はぁー」
「少しお疲れになさっていますね。ハーブティーはいかがでしょう?ロズヒップなどがオススメですわ」
エリヌス様が声をかけているコイツは入学式で寝坊、理科室で爆発など、起こした問題は数知れず、ついた異名は「ズラだけいい阿呆野郎」。
「ズラ」はどこから来たのかというと、外面はよく、自分がいないといけない男子というのは一定数の女子にはモテるそうで、周りにはいつも女子がいる。
そこから来たらしい。
「うーん、俺、ローズヒップ苦手なんだよなー」
しかも、礼儀もなっていない。公爵令嬢にタメ口なんて、礼儀の講師がいたらぶっ倒れることだろう。
「こら、公爵令嬢にそんな口の言い方しちゃダメじゃない。アスター」
「だってー」
コイツの隣にいるのが、コイツの幼馴染だ。
「だってもない」
みんなには隠しているつもりなのだろうが、アスターにある恋心を知っている人は多いのだろう。
「ふふふ、そんなに気にしなくてもいいのに」
その中でエリヌス嬢が優雅に佇む姿はとても綺麗に見えてくる。
「いやこっちが気にするというかなんというか」
貧乏男爵令嬢が、公爵令嬢と話しているだけで夢物語なのに、そこに気を使わないなんて無理のある話だ。
「俺は気にしないがな」
「アスターの方が希少だからな。自覚した方がいいぞ」
王太子殿下がアスターに注意をする。
「もっと褒めてもいいぞ」
手を顔に当てながら、ぶりっこのポーズをする。
こういうところも人気が高いらしい。
よくわからないし、わかりたくもないが。
「いやこれ絶対褒めてないから」
リズムよくツッコむアイビー。
こんな会話にクスッとしてしまう私がいる。
馬鹿馬鹿しい話だが、こういうのは多少大事にしても良いのだろうか。
自問自答しながら、馬鹿馬鹿しい話に聞きいる。
ガラガラガラ、ドアが開き、担任がクラスに入る。
机の上に紙を置き、名前を呼ぶ。
「今から、校長室に行ってもらいたい人がいる。シャムス、エリヌス嬢、王太子殿下……そしてラミウム嬢」
「どうゆうことですか?」
シャムスが手を挙げ、担任に聞く。
「詳しくは校長に聞け。俺も知らん」
どうやら本当に知らないらしい。
不思議に思いつつ、校長室に向かうのであった。
コンコンコントノックし扉を開ける。
「失礼します」
私が最後だったのか、みんなが席に座りながら、紅茶を啜っている。
ティーカップには宝石があしらわれていて、さすが貴族だというところだ。
「みんなそろったようだね。話を始めよう」
優しく、穏やかな笑みには私とはまた違う、異質な仮面が見える。
怖く不気味な…異質な感じだ。
「君たちには生徒会に入ってもらいたい。だが、生徒の中にはまだ選ばれた人たちに不安がある子もいるだろう。そこで君たちには功績を作ってもらいたいんだ」
ニヤリと笑いながらいう。
重苦しい空気が私の方に乗る、喉にっつっかかってくる。
要するに、お前らを確かめたいからなんかしろということなのか?
すると、エリヌス様が手を挙げ、申す。
「功績とは大雑把すぎます。具体性を出してくださりませんとこちらもうつ手がございませんの」
そこを聞かれるのを待っていましたかというように即座に話す。
「確かに。エリヌス嬢の言う通りだね。じゃあこうしよう」
にこやかに笑うと、右手ポケットにある、紙を取り出す。
「王太子以外の君たちにリカンスロープ村に視察に行ってもらいたい」
“王子”以外…。
「なんで僕以外なんですか。お答えできますよね。校長先生」
王太子殿下が即座に反応し、反論をしようとする。
「少々興奮気味なようだね。少し落ち着こうか」
その興奮というか油に点火したのは貴方じゃないの?
そう聞きたくなる。
「理由を話そう。王太子の君は様々な問題を解決し、業務を行っていた。君を生徒委員にさせないのは我が校に落ち度があると思われる」
「ですが、僕がいた方が有事の際に…」
「君は王太子だ。不用意に動いて困るのは周りの人じゃないのかい?」
「…………。」
はぁー。
確かに正論も大事だが、ここまで王子の反対を押し切るほど大切なことなのだろうか。
このままじゃ確実にわだかまりが残るのだというのに。
「納得したようで何よりだ」
そして何よりムカつく。
「内容の説明をしよう。今、リカンスロープ村では食料が何者かによって食い荒らされている」
「そこで解決してもらいたいという事ですか」
シャムスが相槌を打ちながら言う。
紅茶を一口啜ったあと、ティーカップを持ちながら言う。
「その要望、引き受けますわ」
「解決できる自信があるようだね」
「自信、とまでは行きませんが、これでも家の長女として様々なことをしたつもりですの」
嘘だ。
ティーカップを持ちながら言うのは相手に対して自分の方が上だと伝えるための技。
自身がなかったらそんなことはしないだろう。
学園長もなかなかに食えない人だが、エリヌス嬢がここまでするとは意外だった。
そしてそのせいで、面倒なことになりそうだ。
だが、ため息を漏らしたところで変わることのない現状。
こういう時はソルにぃが合掌した方がいいって言ってたっけ。
心の中で手と手を合わせ、祈るばかりであった。
「では良い報告を待っているよ」
「ラミウム嬢。少し残ってくれるかい?」
はぁーーい!今、たった今っ!フラグ回収したぁーーーー………。
「わかりました」
「鏡影の君と話せるなんて光栄だよ」
だよね。
平民の私が生徒会に選ばれて、校長に呼び止められるなんて何らかの力が働いていないとおかしいよね。
「お褒めの言葉に預かり光栄です」
嘘の内容をつらつらと並べる。
こういう小競り合いはいつも、商人の狐火、パキラとしているもんだから、手慣れたものだ。
「ちなみにギルドマスターとは学友で旧知の中だ」
「そうなんですね」
感情も込めず淡々と言う。
「こういえばナイフを当ててくると聞いたが、ただの噂だったようだね」
嫌味かぁ?
というか、貴方の旧友のギルマスが送ってきたカラーはものすごく面倒なやつだったぞ???
「そうですね。最近意味もなく噂をつく人も多い世の中になりましたからね」
訳)貴方もどうせ嘘ついているでしょう?
「物騒になった物だね。だが、嘘をついたところでのちに利益になるわけではない」
訳)君なんかに嘘をつくだけ無駄
「ふぅ」
「こんなとこで小競り合いをするために君を引き留めたんじゃないよ」
まぁ、こんなことで動かしてくるなんて並大抵なことではないだろうし、並大抵なことだった場合はギルマスで自己談判するけど。
「君にはリカンスロープ村で起こっている真相を探ってもらいたいんだ」
真相か。
さっきこの校長は『何者かが』と言った。
普通は動物だと思うだろう。
それなら何者ではなく、動物がというだろう。
そこをあえて何者かがというそこには校長の意図が隠されているのか?
私には知らされていない情報があるのかも。
「真相とは一体どういうことですか」
「一部のものしか知らないが、リカンスロープ村で起きている事件は人為的に起きていることではないかと推測されているんだ」
「理由は?」
「村人が夜間にも見回っているのに獣1匹も報告がない点だ。こんなの、内部の人が関わっているとしか思えないだろう」
「ひとまずは理解しましたですが、私がやる利点がありません」
こんなの手伝うことで金も得られないのならやり損だ。
「君も生徒会に入るために試練という名目で護衛をする口実ができる。あと、公爵令嬢が怪我なんてすれば全て君のせいとなるだろう」
結局、脅しか。
ギルマスめ。
何でコイツに機密情報を渡したんだか理解できない。
でも、了承するしかない。
「わかりました」
あぁ、本当にわかった。
ギルドマスターの知り合いには碌な奴がいないということがな。




