第23話 腹が減った
――夜が明ける。
「………」
速い、速い、速い。
速すぎる。
何なんだこの馬。
何時間も走り続けているのに。
スピードも落ちないし。
休みもしない。
バケモノだろ!
僕は、最初の頃に叫びすぎて声も出ない。
腕も、もうパンパンだ。
「……あっ!」
大きな外壁が見える。
王都の西門だ。
門の前へ着いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、ちょっと、ちょっと休憩……」
足と腕が……。
門の近くの平原に大の字になって寝そべる。
「はぁ、はぁ、ふぅ……。朝日がきれいだなぁ」
丁度、日が登るときだった。
……光がきれいだ。
光が僕のジャケットの血に吸われる。
……きったねぇ。
「さて、こうしている場合じゃないな」
重い身を起こし、馬を連れ門へと向かう。
「あれ、騎士の人がいない」
普通なら、最低でも一人ぐらいいるはずだ。
……異常だ。
やっぱり何かあったんだな。
確かお父さんは、ノーレストに行ったって書いてあったよな。
獣が発生した。
そしてノーレスト。
禁忌の森で何かあったのか?
それも含めて、聞いてみよう。
王城へ向かえばいいよな。
ソルトがいればいいけど。
僕は、無人の門を通り抜けた。
まだ、朝方ということもあり人が少ない。
……それでも、視線が痛い。
着替えてくればよかったな。
あと、ご飯が食べたい。
お腹がずっとなっている。
本当に、ずっと食べてないんだよなぁ。
今まで食欲がなかったのもある。
なぜ、今になって食欲が出てきたかというと。
「あぁ、いい匂いがする」
涎が垂れる。
あぁ、あぁ、あぁ。
精神がおかしくなりそうだ。
ソルトにあったら、ご飯でも奢ってもらいながら話をしよう。
僕は、今所持金がゼロ円だ。
いい匂いに釣られながら、道を走り抜ける。
「本当に、異常だ……」
騎士団が一人も見つからない。
なにかがあったのは確定したな。
でも、王都民は普通に生活していた。
急いで王城へと入る。
不法侵入になるか?
「あっ、そこのメイドの人!」
往生の玄関にいたメイドに声を掛ける。
「はい、って、きゃぁぁぁぁ!!!」
メイドの悲鳴が響く。
「ち、違います。決して怪しいものじゃ……」
……血まみれだったな。
「あ、あの。僕は、ソフリーン公爵家のオース・ソフリーンです!」
「あぁ、あ、あ!」
だめだ、怯えて聞いてもらえない。
直後、扉が開かれる。
「だれだっ!!……って、オース?」
「ソルトぉ!」
扉から出てきたのは、ソルトだった。
「とりあえず中にはいれ、少し、いやすごく忙しくてな」
「そうなのか。僕、一つも状況を理解してないんだよね」
「それでか?」
ソルトが僕の血に染まったジャケットを見ていった。
「やっぱり獣が関係んあるんだな」
「そうだ。こっちだ」
ソルトに連れられ、応接室?みたいなところに来た。
「そこに座れ」
僕は、ソルトの言うとうり、椅子に座った。
「ありがとう。というかソルト、顔がやつれているぞ、大丈夫か?」
よく見ると、ソルトの目の下にクマができていた。
「あぁ、まぁ、昨日寝てから寝ていないんだよな」
「そうなのか。でさっそく話してくれないか?」
「あぁ、簡潔に言うなら、禁忌の森の獣が大量発生した」
「そうか。なんとなく分かってたけど」
「オースは、流石に、禁忌の森で前から獣の発生が増えてるのは知っているよな」
「流石に知ってるよ、よく耳にした」
「そして今回、今ままでとは比にないぐらいの数の獣が発生した。そしてその獣が、ノーレストへ入り進行していった。そしてシルスやルールドまで進行していく獣もいた。というわけだ」
「なるほどな。だから、騎士がいないわけだ。……そういえば、王都に住んでいる人は普通に暮らしてたぞ?」
「混乱を避けるためにそうしている。本当は、少しぐらい騎士を残してもいいと思ったのだがそれどころじゃなかったからな」
「さて、事情は分かったな。でだ、オースは事務的なものとか出来るか?」
「えっ?いや、やったことないから」
「オースなら、できるって」
「いや、え?というより、僕なんかより他に人に」
「残念ながら、この王城には使用人しかいないんだ。全員、獣対処の指揮に向かったよ」
「てことは、ソルトが一人で、この王都を回しているのか?」
「まぁ、そういうことかな」
「て、ことでだオース。拒否権はないぞ」
ソルトの目がクマができているのも相まっていつもより怖い。
「ははっ」
お腹へったな。




